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85.アーネの家

 しばらく経ったある日、朝の練習が終わって、いつもの外出。

 市場に並ぶ物を見ていると、スッとアーネが近寄り、腕を組んできた。

「一応声をかけような」

 苦笑いでアーネを見ると、

「良いじゃないですか。

 ケイン様が腕を組むのは私かメルカド伯爵のほうがよろしいですか?」

 アーネが俺を見た。

「見てたのか?」

「見てました」

「さて、完全な敵であるあのお嬢さんを旦那様はどうするのでしょうか?」

 ニッと笑うアーネ。

「そりゃなぁ……、何とかしたいとは思うが……」

「それで、どうするのですか?」

「さあね、考えてみるよ。

 で、それだけのために近寄って来たとは思えないんだが?」

 アーネをチラリと見ると、

「はい、家を借りたので呼びに来ました」

 頷くアーネ。

「ヨシ、それならいろいろとやりたい事もあるから、その家に行こうか!」

「えっ、やりたい事って。

 はい、やりましょう」

 意味不明にモジモジを始めるアーネだった。


 なぜに?


 街の中をいそいそとアーネが手を引く。

 そして、そのまま手を引かれ家に入る。

 ありゃ? 食器や調理用具が全然ない。

 ベッドだけが豪華って何なんだ?

「これって……」

 振り返ると、アーネがカチャリと扉を閉めた。

「カミラ様に許可は貰っています。

 いつも屋根裏から覗くだけでは寂しかったのです」

 ローブのような服は消え、元の姿のクモの下半身と美女の上半身。

「嫌ですか?」

「嫌も何も、今更だろうに」

 アーネが上からのしかかる。


 俺はマグロかな?


 結局人化したり元に戻ったり……。

 事がおわると、アラクネの姿で俺にのしかかり、首筋をハムハムと甘噛みしているアーネの頭を俺は撫でていた。


 おっと、昼過ぎぐらい?


「さてと……」

「帰るのですか?」

「ん? この家に住めるようにしないとな」

 ラブホ代わりって言う訳にもいくまい。

 俺は収納魔法を使い、別次元から鍋やフライパンなどの調理道具を出した。

 更には机や椅子のような家具、コップや皿、椀などの食器を出す。

「うし、出来上がり。

 これで、料理ができる。

 あと、これ、紅茶セット。

 アーネが淹れた紅茶を飲みたいかな」

「はい!」

 アーネの姿がアラクネから姿を戻し、メイド服を着る。

「んー、美味いね。

 アーネのこれを飲むと落ち着く」

「はい、私は旦那様のメイドで、旦那様をお慕いしております。

 ですから、こちらでは可愛がってくださいね」

 アーネが顏を赤く染めながら言った。


「あっ、屋敷でもたまには……。

 カミラ様の許可が出れば……」

 追加もあった。



 こうして俺は、朝練が終わると朝食から夕食までの間、アーネが借りた家に入り浸った。

 まあ、大人の時間だけでなく、コーヒーを飲んだり、カレーやチョコレートを作ったり。

 アーネも俺の横に立ち、調理を手伝う。

 

 なんだか新婚さん?

 アーネもなんだか楽しんでいるようだ。


 しかし、アーネがコーヒーとチョコレートで酔っ払ってぶっ倒れたのには驚いた。

 そう言えば、クモはカフェインで酔っ払うらしい。

 そのまま姿を変えて甘えるアーネ。

 まあ、それもまたいいんだが、気をつけないといけないね。


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