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学問を究めた霊獣  作者: ラフィオル
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第三話 スライム討伐

「明日は山越えになるから、ゆっくり寝とけよ」

「はーい!」


 王国を出てからもう3日、森林地帯を抜けてからはこの広い草原を歩き続けている。だが、やっと大きな山が見えてきた。山越えは戦争の際に他国へ攻め入る時に何度かしたことがある、スクは初めてであろう。


 今日の晩飯は生物の丸焼き肉と果実の盛り合わせ、険しい道のりになるので栄養はしっかりと取っておかなければ。手元の食料もなくなりそうだし、山で大量に果実でも採取しておこう。


『──カルバ、あの山は大丈夫だろうか、強いモンスターなどがいたら俺っちたちは何もできなくなるぞ』


 人が寄りかからない分、山という場所には手ごわいモンスターが生息していることが多い。


「例えどんなに強いモンスターだろうと霊獣使いに太刀打ちできる奴はいないさ」


 リフフィリア王国の霊獣使いとして多くの戦争で場数を踏んでいる。山ごときのモンスターに手こずるような私ではない。しかしルーペはまだ不安そうな顔をして口を開かせる。


『──もし俺っちたちが危なくなったら助けてくれるのか』


 その言葉に私は迷った。いざという時には自分で身を守らなくてはいけない。他者に縋りっぱなしでは成長できないのもある。私は考えたがルーペにある言葉を放つことにした。


「時と場合による。私が厄介な敵と対峙しているときは助けられないだろう」

『なんだよそれ! 勝手すぎないか』

「勝手ではないだろ、これは山越えの時のことを言ってない。いつかあるかもしれない出来事を想定して言っているだけだ」

『大体、俺っちたちを兵士にすると言ったりしたら、今度は旅に出るとか、お前のことは信用できない!』


 言い終えたルーペは木の中に入っていった。



 翌日、朝食を取り終えて2人は山へとやってきた。私はスクの隣にいるルーペを見てみると苛立っているのがとてもよく分かった。しばらくは口を聞いてもらえないかもしれないな、これは。


「──これはマホルンタの果実か、とりあえず取っておこう」

『食料集め? それなら手伝うよ』


 今日は珍しく起きていたのか、カバンからミャウが現れた。私とミャウで周辺の果実を取っているとスクが近づいてくるのが見えていた。


「なんかね、ルーペが言うにはここから2時の方角に村があるらしいんだって」

『なにそれ、自分で言いにくればいいのに』

「どうしてか分からないけど、カルバと話したくないとか……」

「まあ、村があるのなら、行ってみようか」


 ルーペの言われたとおりに2時の方角へ進んでいくと、小さな建物がいくつか立ち並んだ村を見つけていた。


「──旅人さんか、いらっしゃい!」


 村へ入ると、初老の男性が私たちに気付いて声をかけてきていた。私はふと村のあちこちを見てみると柵が倒れていたり、建物の壁に穴が開いていたりと、この村でつい最近にモンスターに襲われたような形跡があった。跡からしてそこまで強いモンスターではなさそうだ。これはもしかしてと思いながら、私たちは男性に連れられて、酒場へと入っていった。


「──スライム退治ですか」


 どうやら近頃、夜になるとこの村に大量のスライムが湧いて出てくるらしく、それを倒してほしいという依頼を頼まれる。スライムといえば最も弱いモンスターで有名だ。スクの実力も把握しておきたいし、報酬ももらえるわけで、この依頼は受けるとするか。


「旅人さん、飲み物はいかがですか?」


 飲み物を勧めてきた少女の名はセリウ、村一番の美少女でありこの初老の男性の娘だという。この酒場で働いていて、とても少女とは見えなほど、お淑やかな性格である。


「もうすぐ夜になるし、遠慮しておくよ」



 初老の男性の話では村の南側から大量のスライムが現れるらしい。私とミャウ、スクとルーペはスライムを待ち構えた。すると、どこから現れたのか1匹2匹と大量のスライムが村へと近づいてきた。


「ミャウ、本に入れ、戦闘だ」

『任せなさい』


 私はミャウを魔導書(グリモワール)の中へと入れさせる、戦闘時はいつもこうだ。これを使って、ミャウの魔法を放つ。


海龍の咆哮(レントローア)!」


 この技は前方に広範囲に及ぶ水流を出し、敵を流しきる技。スライムたちは攻撃を受けて怯んでいる。さて、止めだ。


海龍の牙(レントタスク)!」


 ブレードのような水魔法が怯んでいたスライムに襲い掛かり、1匹残らず真っ二つに切り裂いた。──真っ二つに切り裂かれたくらいでは死なないスライムもいるが、この程度の強さならばそれはないだろう。スクの方へ行くか。


 スクの方へ見に行った私は、ある光景を目にする。


『スク! スライムと遊んでないでお願いだから倒してくれ』

「──こんなに可愛いのに」


 魔物であるスライムたちと和気藹々とするスクに私はその時にどう言葉をかけていいか分からなかった。まあ、上手く説得して残りのスライムは倒せたが、先が思いやられるな。


 朝まで待ってはみたが、これ以上スライムが現れることはなかった。


「スライムを討伐ご苦労様な、これが報酬だ」


 男性から金銭を受け取り、私たちは酒場を出た。


「少し買い物をしていく」

『分かった、じゃあスクと近くで待っているよ』


 村の広場に行くと手製の武器に作られた野菜や採取した薬草など様々なものが売られていた。私は薬草や野菜などを買うことにした。──元々少量の通貨を持ってきていたが、いつかなくなりそうだ。スライム退治のように、行く先々の場所で依頼をこなしながら金銭を調達しなくてはいけないかもしれん。


「──スライムが出たぞー!!」


 どこから現れたのか、昨夜と同じ南側からは多くのスライムたちが村へ入ってくるのが見えた。──討伐してから新たに現れたスライムだったが、それを言うとしても、村中が慌てふためくこの状況では、村人たちの怒りを買いかねない。仕方ない金銭を貰えなくてもやるしかないか。


 村にやってくるスライムはとりあえず真っ二つに切った。3匹くらい逃げていくスライムを見ていたが、見逃した。


 魔物とは割と賢い種族であり、帰ってこない仲間を確かめようと村に着たりはしない。人間にやられたと判断できるはずだ。つまりこの村には何らかの理由で頻繁に来ているのだ。少し気になってきたな、調べてみるとするか。


「──もしかして、このスライムって倒せば倒すほど増えていくんじゃないですか?」


 酒場から外を見ていたセリウが大きめの声で言い放っていた。


「どうなんだ、旅人さん!?」

「より上位の魔物にはそのようなの特徴があるかもしれないですが、あれはどう見ても下位の魔物です。それはないかと」

「でも、実際に増えているじゃないか!」


 不味いな、余計なことを言ってしまったか。


「この大量に湧くスライムの原因を突き止めるまで、私はこの村にいますので、ご安心を」


 こうなったら意地でも原因を突き止めてやるか。そしたら沢山の報酬をもらえるかもしれないしな。


 その日の夜、私は酒場でこのあたりの地形を調べることにした。


『スライムが湧きそうな場所、近くにないね』


 正直、これが一番の不可思議な要素だとも言ってもいい。この辺りには下位のスライムが生き抜くために必要な水辺がない。あの大量のスライムたちは一体どこからやってきたというのだ。それか、あの弱さで本当に上位のスライムなのか。


「ルーペ、お前の頭脳を持ってしても、何か心当たりとか見つからないのか?」

『1つあるけど、言いたくないね!』

「そうか」

『聞き出そうとしないのかよ』

「信用できないってお前に言われたからな、信用してくれるまで待つだけさ」


 深夜になり、スライムも現れそうになかったため、私は寝ることにした。



『──みんな寝たな、俺っちの魔法は1人でも解決できる力を持っているんだ』


 ルーペはひっそりと酒場を出て暗い村へと消えていった。


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