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裏魔法学園の支配者  作者: 立花海加世
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魔法学園への勧誘

初めて学園ものを書いてみました。

よかったら感想、レビューを下さい。

 西暦三千四百年、ディアベルダ城で人類最強の少年と人類を滅亡させかねない魔獣との激戦が繰り広げられいた。

 身体を斜めにして、魔獣の背中から放たれる太刀を交わす。

 その突刺によって発生した衝撃に少年の身体が後ろへ飛ばされる。

 浮いた体を空中で回転させ着地しようとするが、少年が着地するはずだった場所に魔獣が先回りして、下から少年の体を蹴り上げる、──刹那、

 魔獣の足が少年に触れる直前のところで防御魔法を発動させ、(しの)いでみせた、が予想外の展開に一瞬目を丸くする。

 少年の眼に映る一体の魔獣が二体に分裂したのだ。

 「まさかッ! 分裂魔ほッッ がァァァ!!」

 魔法で分裂した魔獣が少年を挟みうちにして、腹と背中を同時に蹴りとばす。

 二方向からの蹴りで発生した衝撃は少年の体中で爆発する。 

 腹へと撃ち込まれた蹴りで臓腑が破れ、胃が体内で散る。

 背中へと撃ち込まれた蹴りで背骨が砕け、腹から入った足とぶつかる。

 「ぎゃァァァァァァ!!」

 殆ど瀕死状態の少年の腹に魔獣が鉄拳をぶち込む。 

それを二体の魔獣で交互に行い、百を超える程殴った。

 そして、殴ること百三十回目、ついに少年がピクリとも動かなくなった。途中まではその声がどこからでてくるのかというくらいの絶叫を上げていたが、今ではもう白目を剥いて硬直している。

 魔獣は意識のない少年の体を少しの逡巡もなく地面に叩きつけると、片足で頭を踏みつける。

 その頭に魔獣が容赦なく足に力を()めてると徐々に原形を失っていき、終いには西瓜(すいか)のように砕け散った。

 魔獣は頭部を失った亡骸を掴み上げ、一度は防がれた蹴りをもう一度放つ。かつては少年のものだった肉体は魔獣の思うがままに吹き飛ばされ、そのまま勢いよく天井にぶち当たり、減速することなく天井を貫通し、城から虚空へと投げ出される。そして城に残ったのは潰えた頭と鮮血、魔獣。

 頭部を除く肉体は魔獣の蹴り一撃で空の彼方へと飛ばされ、宙に舞う塵となり消えていった。



 三百年後。

 魔獣が死んだ。死因は少年の遺族と思われる少女の振るった短剣の斬撃によるものだ。

 忽ちその少女は魔獣を倒したことで有名になり、今まで貧しい生活を送っていたのが馬鹿らしくなるほどまでの裕福な生活を家族と共に謳歌していた。そしてその生活が続くのも束の間。ある日少女の家族が何者かによって暗殺された。その時少女はとある用事で不在だった。

 それを事が済んだ後に知らされた少女は一瞬の沈黙の後、口の端を吊り上げて言った。

 「そうであろうな。何故なら殺したのは紛れもない妾なのだから。」

 起きた事を知らせる為に少女を尋ねた若僧は驚愕に目を見開き、聞き間違いではないかと首をかしげる。

 「腑に落ちんようだな。ならば説明しようあのクソ両親どもは妾の意思意見を関与ぜずに魔法学校などというくだらない場からの勧誘を受け、勝手に入学手続きを済ませたのだ。」

 チッ、と舌を鳴らして、まだ状況が理解しきれてない若僧に向けて告げる。

 「おい、貴様、魔法学園とやらの入学を取り消しておくように。」

 「──ぁ──」

 相手の返答を聞かずして部屋を去っていった。

 バン、と扉を勢いよく叩き閉めてから足早に廊下を歩き、やがて巨大扉の前で足を止めた。 扉の前に佇む少女の反対側、扉の向こう側に複数の人影が立っていた。少女は人の気配を察知(いのうじゅつ)で感じ取り、出迎えるようにして扉を開け──刹那、鈍い音と共に扉が砕け散った。

 一瞬前まで扉があるはずだった場所に、太刀を片手に、身にはローブを纏った背丈2m程の黒い男が立っていた。

 「誰かと思えば、やはりお前たちか、入学などしないと何度も言ってるだろう。」

 「おやぁ、ミシル様自身がお出迎えとは光栄ですねぇ。」

 黒い男の背後から白髪の老爺が高らかな声と共に姿を表す。そしてその傍らに立つ。やはりその片手には刃を忍ばせていている。

 老爺は口を吊り上げて笑い──

 ──ザン、とミシルと呼ばれた少女めがけて刃を振るった。

 老爺は円を書くようにして刃を振り、その刃先から光が放たれる。

 その光を少女は表情一つ変えることなく片手で払いのけた。

 老爺と黒い男には、まるで宙を舞うハエを払う仕草のように映った。

 「実に貧弱な魔法剣なことよ、この程度の威力しか出せない低知能の学園に誰が入学するというのだ。」

 「……貴サマ、今何ヲシた……」

 とそこに今まで一言も発さなかった黒い男が目の前の光景に痺れをきらしてカタコトな語調で少女に問いかける。

 「何をしたも何も、あまりにも魔力の弱い魔法剣だったから、手で払っただけだ。

 流石の貴様らでも分かっただろ、妾が入学を拒む理由が。」

 「「ナッ!」」

 老爺が手にしているのは、この世界の頂点と言われている魔法剣の一片だ。

 手にできる者は僅か一握りで、雑魚が闇雲に触ろうとすると魔法剣が自分の意思で触られる前に切り伏せてしまう。

 魔法剣を使うにはそれ相応の魔力の持ち主でなくてはいけない。この老爺もその一人だ。

 そして魔法剣による斬撃、魔法は絶対に躱すこと、受け流すことができないとされている。

 少女はそれを片手で払ってのけたのだ。

 「「……は⁉」」

 「貴様らは今、魔法剣の絶対的(ことわり)『魔法剣にのる斬撃、魔法は絶対に躱すこと、受け流すことはできない』を頭に浮かべているのだろう? あぁ確かにそうだ。妾はただ常時纏っている《防御魔法(まほう)》で魔法剣の魔法を掻き消しただけだ。流石の貴様らでも分かっただろう?妾との実力派が、要件がすんだならとっとと帰れ!雑魚共がッ!」

「……それ、はぁ、できま、せんねぇ、」

 長年愛用してきた自分のたった一つの魔法剣を自分より遥か年下の少女に払われた驚きと屈辱に上手く言葉が喋れなくなる。

 そんな老爺に少女が追い打ちをかけるようにして続く言葉を発する。

 「妾のクソ親どもは信じてたようだが、魔法学校入学などという偽りの話を妾は最初から信じていなかったぞ? 」 

 「それは……まさか……」

 「ふふっ このように妾は強い、貴様らは妾の将来を恐れているのだろう? それで貴様らは学園入学などとという捏造で妾を誘導し、始末しようとしているのだろう?」

 「そ、そこまで気づいていたのですかぁ……流石ミシル様ですねぇ、」

そこで一旦言葉を区切り、愛用の魔法剣を眼の前の少女に向けてこう言い放った。

 「お前は私が始末するッ!」

 その言葉を合図に黒い男が地面を蹴り、少女を切り刻まんと、突っ込んでいく。

 黒い男の突進を前にしても、少女は身を翻すこともなく怠そうに欠伸(あくび)をしてから、一つ(まばた)きをした。

 すると、少女に刃先が届く寸前のところで黒い男の動きがピタリと止まった。

 「な、ナンダ、コレ……」

 「ふははははははははッ 驚いたか!貴様は今、妾の瞬きに動きを封じられているのだ! クックック つまりお前は瞬き以下の存在と言うことだ!」

 少女は今、高難易度魔法の一つ、《身柄拘束(いのうじゅつ)》を瞬き一つで発動させたのだ。どんなに優秀な魔法つかいでも、魔法剣つかいでも、《身柄拘束(いのうじゅつ)》を発動させるにはかなりの時間がいるのだ。この異能術を一騎打ちなどで使うと、発動させる前に斬り伏せられてしまう。

 高コストだが《身柄拘束(いのうじゅつ)》を発動させることができれば相手は指の関節一つすら動かすことはできない。

 高難易度な異能術、魔術は少女のように絶大な力の持ち主しか使いこなすことができないのだ。

 少女が罵り終えると同時に、ピクリとも動かなかった黒い男の身体が、少女に吸い寄せられるように突然動き出した。

 少女が《身柄拘束》を解除したと同時に《念動力》を発動させたのだ。

 少女は《念動力》で黒い男の身体を自由に操り、宙に放り投げると、少女は腰から短剣を抜きその黒い男を追うようにして跳躍する。空中で少女は黒い男にすぐに追いつき、宙で短剣を振り降ろす。

 すると、黒い男の銅が二つになって地に落ちた。

 「なッッ!」

 一瞬の出来事に何が起きたのか理解ができない老爺は、地に手をつき涙を流すことで精一杯だった。

 老爺の心情は畏怖や死への恐怖などではなく、ただ眼の前で死にゆく同僚を助けることが出来なかった己を心から憎んでいるのだ。

 その頃、少女は地に蹲って涙を流す老爺に、コツコツとわざと足音を立てて歩み寄ると、一切の逡巡なく短剣を振るった。

 その時、──カチン、と音がなって少女の短剣が遮られた。

 それにはさすがの少女も驚愕に目を見開いて、思わず関心の声を上げる。

 「おぉ!なんということだ!魔法剣が自らの意思で主人を助けるなんて初めて見たぞ!」

 短剣と老爺の間には、一つの魔法剣が(あるじ)を守ろうとしているのだ。

 魔法剣は普通人に懐くことなどありえないし、手にしようと欲を張った人間の九割以上が魔法剣に斬り殺されている。

 そして魔法剣使いの人間の死因の大半が魔法剣の機嫌を損ねて斬り殺されていることだ。

 そんな魔法剣が自らの意思で主を守ろうと立ちはだかったのだ。

 

最後まで読んで頂き感謝します。


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