城にて
城に着くと、彼女をあまり人に見せたくなかったから、人目につかないように裏からアルフレッドの住む宮へと急ぐ。私室を通り、寝室に入ると大きなベッドに少女を横たえた。
「フレイル」
「ちゃんと呼んでおきましたよ」
扉の外にいるフレイルに呼びかけるとしっかりとした答えが返ってくる。
「助かる」
アルフレッドはベッドの近くに座るとすやすやと眠っている彼女を見つめる。
なぜ、あそこにいたのだろうか。ふと不思議に思った。東の森は危険な魔物がたくさんいる。女の子一人で入るのには腕に自信がないとあまりにも危険な森だ。
思考をめぐらせていると、ノックの音とともに「殿下、ダリアでございます」という声が聞こえる。
「入れ」
扉に向かって声をかけると侍女服を着た女性がしずしずと入ってくる。
「お呼びでしょうか、殿下」
「ああ、彼女の世話を頼みたい」
「!…かしこまりました。このダリアにお任せください」
ダリアは一瞬驚いた顔をしてみせたが、すぐに平然な顔をして頭を下げる。一見平静としているが、頭の上にある猫耳はピコピコと忙しなく動いている。少女のことが気になって聞きたくてしょうがないのだろう。アルフレッドは苦笑すると口を開く。
「私の番だ。丁重に扱ってくれ」
「私としたことが…。おめでとうございます」
ダリアは少し赤くなりながら微笑む。
「今マリーに着替えを持ってこさせていますので、殿下は一度ご退出願います」
「わかったよ」
名残惜しそうにアルフレッドは少女のそばを離れる。
「なぜあそこに倒れていたと思う?」
部屋の外で待ちながらフレイルに問う。
「そう…ですね。どこからか逃げ出してきたのではないでしょうか。頬の傷は魔物によるものでは無いですし、なんといっても、珍しい黒髪ですから」
「なるほど。奴隷商人の所からか? いや、それだと手枷や足枷もその痕もないのはおかしい…。一応調べておいてくれ」
「御意」
話が一段落したその時、中から押し殺したような悲鳴が聞こえた。アルフレッドが急いで部屋に入るとそこに見えたのは服を脱がされ下着姿になっている少女の姿。しかし、身体には無数のあざがあった。痛々しい様子に怒りが込み上げ、顔が歪む。
着替え終えてベッドに横たえられている彼女の手を握り、体の魔力を練り少しずつ傷を治していく。これから何があっても私が守ると誓いながら…。
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