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見つけた

ここはリヴィドール王国、リーフィア城の一室。

「殿下、そろそろ行きますよ。」

殿下と呼ばれた男の名は、アルフレッド。この国の王太子だ。

「ああ、行こう。」

今日は東の森で大型の魔物が出たということで、討伐に行くことになっていた。でも、なんだろう。胸がザワザワする。朝から何かに駆られたようにソワソワする。不思議に思いながらもアルフレッドは森に足を運んだ。


無事に魔物を倒し、城へ帰る準備をしていた時、すぐ間近で呼ばれたように自分の名前が頭の中いっぱいに響きわたった。心臓がドクドクと早鐘をうち、胸を締め付ける。

「どうしましたか?」

近くにいた側近のフレイルが突然立ち上がったアルフレッドに驚いた様子で声をかける。

「何かおかしい様子はないか?」

「ここから見たところ、特におかしい様子は見受けられませんが……」

フレイルはキョロキョロと周囲を窺うと不思議そうに言う。

『アルフレッド様』

今度ははっきり聞こえた。アルフレッドは馬に素早く乗ると、声が聞こえた方向に馬を走らせる。後ろからフレイルの慌てた声が聞こえたがおかまいなしだ。耳に全神経を集中させ、ひたすら馬で駆ける。

どれくらいたっただろうか。100メートルくらい先に何かが見える。

「止まれ」

「殿下、どうしましたか?」

「あれは人か?」

人が横たわっているように見える。アルフレッドは吸い寄せられるように目が離せなかった。

「人みたいですね。どうしてこんなところに……って、殿下危ないですよ!」

フレイルの制止する声を無視して、導かれるように近づく。近づいていくと、その姿が明らかになってきた。横たわっていたのは、少女だった。艶やかな黒髪に真っ白い雪のような肌。体や手足は細く、頬には痛々しい青黒い痣が見える。それを見た途端、激しい怒りが体の中から溢れ出る。

─誰だ、私の番を傷つけたのは!

そう思った時、心の中でストンと落ち、満たされていくのを感じた。

ああ、この子は

「……私の番」

「え?」

何十年も探していた私の愛しい愛しい番。

「見つけたよ、やっと」

マントに少女をくるみ、抱き上げる。少女は小さくうめき声を上げたが、目は固く閉じられていた。馬にひらりと乗ると、城に帰るべく馬を動かす。

「その少女が……?」

並走するフレイルが驚きを隠せない様子で聞いてくる。

「ああ、私の番だ。」

─早く目を開けてほしい。瞳は何色なのだろう。髪と同じ黒だろうか。初めて黒髪を見たけれど、すごくきれいだ。白い肌によく合っている。私の番……あなたはどんな風に笑うのだろう。どんな声なのだろう。ああ、とにかく見つけ出せてよかった。

「おめでとうございます。」

そんなことを考えているのが伝わったのだろうか、フレイルは少し苦笑しながら頭を下げた。



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