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part.14-2 パンジャンの残光を求めて

 翌日、ロード・トゥ・ブリティッシュ平原内にて、

「んん……」

 平原内に設置されたテントの中で僕は目を覚ました。

「いい加減テント生活も終わりにしたいな……」

 そう言いながらテントの外に出る。グレートパンジャンシティ越しの日光を浴びながら大きく背伸びを一つ。そして僕はもう一つのテントを開けた。

「おはよう、栞。朝だぞー?」

「ん……?」

 僕が優しく声を掛けると、栞は半目を開けてこちらを向いた。

「兄さん……おはよう……」

「おはよう、二人が起きる前に朝の支度をしよう」

 栞は大きなあくびをしながら寝癖の付いた髪を撫でる。そのままテントから身体を這いずってゆっくりと出てきた。基本的に最年少の僕達が雑用の仕事を行っている。まずは朝食の支度だ。

「栞―、スープ出来たぞ」

「兄さん、こっちも出来たよ」

 適当に朝食を並べてルーディさんとイヴァンカを起こしに行く。

「ルーディさん、朝食の準備が出来ました」

「姉さん、朝だよ?」

「「ああ、ありがとう」」

 そう言って二人はテントを出てきた。ルーディさんもイヴァンカも朝は強い方だ。……というか、そうなるように訓練していたらしい。

「しかし、街中探しましたが、どうにもパンが売ってなかったんですよ」

「どうやらザ・グレートパンジャン・フェスの最中は小麦を食べちゃいけないという慣習があるみたいです」

 僕がそう言うと、栞が補足した。栞が言う通りフェスの最中は小麦では無くじゃがいもを食べる慣習がある。だから屋台ではガレットやポトフ等のじゃがいも料理が多く並んでいたのだ。

「へぇ、暫くパンは食べられないな?」

「……いや、ザ・グレートパンジャン・フェスは今日で最終日らしい。明日になればパンも並んでいるだろうさ?……ということだよな、ショータ?」

 消沈気味のイヴァンカにルーディさんが言った。

「え?まあ、多分そうだと思いますよ」

「多分、か……まあいいや」

 そう言いながらイヴァンカはゆでたじゃがいもを囓った。

「食べ終わったら直ぐに支度だ。今日はミルド跡地に向かう。前情報だと既に無人の廃村になっているらしい。モンスターとの接敵を想定して各々武装してくれ」

「「はい」」

 そう言って食べ終わった食器を片付けた。


◉ ◉ ◉


 本日のロード・トゥ・ブリティッシュは快晴、日の光を浴びる平原内は良い眺めだ。とはいえ気温は高く、武装している僕達の体力を奪っている。

「どうやらここがミルド跡地らしい」

「ここが……」

 前情報通りの廃村だ。人が作った木組みの建造物らしきものはあれど、そのどれもが破壊されている。人の気配は微塵もしなかった。

「ここにヘルベチカ計画の手掛かりが……?」

 外から見る限りそれらしきものは無さそうだ。

「とにかく手分けしよう。俺とイヴァンカで東側、ショータとシオリで西側を探してくれ」

「了解です」

「分かりました」

 ルーディさんの指示に僕と栞が返事をする。

「モンスターを見つけたら戦わず俺達に合流してくれ。相手に見つかったら大声を上げて助けを求めろ」

「「はい」」

 そう言って僕達は別れた。


◉ ◉ ◉


 ルーディさん達と別れた後、僕達は暫く廃村を徘徊する。民家らしき跡を見つけては邪魔な木材をどかして中を探るが、やはり何も無い。

「ダメだ、何も無いぞ」

「一通り回ったみたいだね、ルーディさんに合流する?」

「いや、もう少し探してみよう。あっちはどうだろうか?」

 そう言って先へ進んでいくと、壁の様に腐った木材が並べられていた。

「村の壁だな。モンスターが侵入出来ないようにしていたらしい」

「そうみたい……ん?」

「……栞?」

 栞が何かを見付けたらしく一人で壁の向こうに行ってしまった。すかさず僕も栞の後を追う。

「一体どうしたんだ?」

「匂いがしたの」

「……匂い?」

「花の匂い。ほら、そこ」

 見るとそこには花が植えられていた。整備された花畑で、とても自然物とは思えない。

「植えられているのはユリと……それからカーネーションか?」

 どちらも葬儀で使われる花だ。何故それを知っているのかは敢えて言わないが……。

「誰かが村の為に植えたんだ」

「となると、村の住人か、はたまた可能性は低いがヘルベチカ計画の関係者か……情報量の期待値は違うがどちらを引いても何か知っていそうだな」

「ルーディさんの所に戻ろう!」

「お、おいちょっと待ってくれよ!」

 言って、栞が僕の手を引いた。少し急ぎ足な栞に引っ張られながら僕も走りだした。……その時だった。

「ピギャアアアアアアアア!!!」

「な、何だ!?」

 前方から大型の鳥類の姿をしたモンスターがこちらに突進してきた。遠目でも分かる程に荒ぶっているらしく、どうやら僕達はテリトリーに入ってしまったらしい。

「あれが噂のフーガか……!」

「兄さん、逃げよう!」

「ああ!」

 フーガに背を向けて逃げようとした、その時……!

「……!」

 何者かが声を発する。上手く聞き取れなかったが、その瞬間、突進してきたフーガの動きが止まった。

「一体何が起きたんだ?」

「無事かい?坊や」

 フーガがいた場所の抜こうから一人の老婆がやって来た。


続く……


<今日のパンジャン!!>

「どうしてパンジャンドラムを愛しているのか」だって?

質問を質問で返して申し訳ないが、君は理由が無ければ誰かを愛せないのかい?

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