part.13-2 The Great Panjan Fes
翌日、
「ん……」
目を覚ました僕はひとまず洗面所まで向かう。顔を洗って目を覚まし、リビングに向かった。
「今日は土曜日か……」
そう呟きながらパンを焼く。休みではあるが受験勉強が忙しくなるだろう。そんな事をぼんやりと思いながら熱いココアを注いでいると、
「んんんんん……」
誰かが呻きながらリビングに入ってきた。
「茜?」
「しょーたおはよー……」
そう言えば夕べ茜が急に泊まりたいと言っていたことを忘れていた。茜の分のココアも注ぎ、コップを渡す。茜は放心状態でそれを受け取ると、力無く椅子に座った。
「んん……」
コップを両手で持ってココアを啜る茜。心なしか少し顔色が良くなった気がする。そうこうしている内にパンが焼けた。
「しょーたっていつも朝食こんな感じなの?」
ココアの糖分が頭に回ったのかここに来て初めて茜が挨拶と呻き以外の言葉を喋った。パンをテーブルに並べ、二人でかじり始める。
「……まあ、朝は割とこんな感じ」
「ふーん……」
興味なさそうに茜は生返事を返した。パンを食べ終えると皿を台所に置いて個人の部屋がある二階へ上がる。そんな中、
「私顔洗ってくる」
そう言って茜は怠そうに洗面所に向かっていった。
「……行ってらっしゃい」
ここまで終えると多分いつもの茜がやって来るのだろう。そう思いながら僕は答えた。
◉ ◉ ◉
その後は受験勉強……と言いたい所だが、僕は携帯を開いてネットサーフィンをしていた。異世界で見た『パンジャンドラム』——その正体を掴むべく検索を掛けていた。
「……あった!」
直ぐに結果が出て来た。やはりネットは便利なものだ。
「……第二次世界大戦中にイギリスが開発した『陸上機雷』?」
異世界の話と全く関係の無い文章に困惑する。何かの間違いではないかと何度も調べ直してみたが、結果はどれも同じような内容だった。
「……何故こんなものが異世界で……?」
色々考えてみたものの結局結論は出なかった。諦めてベッドに寝転がる瞬間、急に僕の部屋が開かれた。
「しょーた、数学!」
「頼むからノックしてくれ!」
いつもの元気な茜がやって来た。手には数学の教科書とノート、筆記用具一式を持っている。
「……しょーた、もしかして今日勉強する感じじゃない?」
僕の携帯を見て茜はそう尋ねた。
「いや、ちょっと調べ物だ。この後勉強しようと思ってた所だよ」
「……じゃあ、それまで待つよ。もう少し自分で考えてみる」
「そうか、悪いな」
◉ ◉ ◉
茜と付き合ってからは特に何も無い。何も無いというかいつも通りの関係でいた。というのも付き合ってから暫くはお互い目も合わせられない様な関係が続いていたが、茜の方が「もどかしい!」と言って今の関係に落ち着いたのだ。茜らしいとも言えるし、たった一言で関係を戻せるのも正直凄いと思う。まあ、今はこれで良い。これからは茜と一緒に過ごす事が出来るのだから……。
「さてと、パンジャンドラムについて調べなければ……」
そう言って再び僕は携帯を開いた。
続く……
<今日のパンジャン!!>
あまりこんな事を言いたくはないのだが、
君がパンジャンドラムを愛さない限り、パンジャンドラムも君を愛してはくれないのだ。