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part.13-1 The Great Panjan Fes

 あれから約2週間が経過した。ルーディさんを主催とする僕達パーティはカドゥ村を出てから北上を続ける。目的地は『ヘルメピア連合王国』領内にある『グレートパンジャンシティ』だ。

「随分と長い道のりでしたね」

「こんなものさ。何事もなければ本日中に到着できるはず、ほら、見てみろ?」

 ルーディさんに促され、目の前にある道標を見る。

「ロード・トゥ・ブリティッシュ……?」

「そうだ、このロード・トゥ・ブリティッシュ平原がヘルメピアの領内になっている。目的地は近いぞ?」

「ようやくか……」

「だが気を抜くな、ロード・トゥ・ブリティッシュでは『フーガ』が存在しているらしい。草食だが気性の荒い中型モンスターだ。基本的にテリトリーに入らなければ襲われる心配は無いはずだが、警戒心を絶やすなよ?」

 と、ルーディさんは言った。

「……分かりました」

 と、気分転換に背伸びをしながら僕は言った。

「ルーディ商人、向こう側がグレートパンジャンシティへの道になっているようです」

 同じく道標を見て居たイヴァンカがそう言った。

「ああ、そのようだな。行こうか」

「はい」

 そう言って僕達はまた歩き出す。


◉ ◉ ◉


「そう言えば、随分と整備されていますね、この歩道と言い……」

 ふと、足下を見て僕は言った。カドゥ平原よりも道が平らでしっかりとしている。

「ああ、ヘルメピアは高い技術力を持った強国だからな。こう言った所もしっかりとしているのだろう」

 ルーディさんは道ばたに落ちていた石ころを蹴飛ばしながらそう言った。

「兄さん!街が見えたよ!」

「……本当だ!」

 栞に言われて前を見上げると、巨大な街がその姿を現した。

「間違いない、グレートパンジャンシティだ。行くぞ!」

「はい!……はぁ、長かった……!」

 そう言いながら、僕達は走り出した。


◉ ◉ ◉


 既に日が落ちかけている中、街の詮索はひとまず置いておこうと判断した僕達は、宿を取る事にした。初めて来た印象としてはとても活気のある町並みといった所だ。何処に行くにも人混みだらけ、移動するだけでも疲れてしまう。

「……何でしょう、あれ?」

 イヴァンカが指を差した先には、巨大な円柱状の胴体とその両端に車輪のようなものが付いたボビン状のものがあった。よく見ると胴体には「Panjandrum」と書かれてある。

「パン……ジャン?」

「おや、旅のものかい?」

 その巨大な物体を見上げていると、街の人間が僕らに声を掛けた。

「ええ、あれは何でしょう?」

「あれはパンジャンドラムさ!丁度明日から行われる年に一度のお祭り『ザ・グレートパンジャン・フェス』の主役にもなる存在だ」

「ザ・グレートパンジャン・フェス……」

 僕は街の人が言った言葉を復唱する。どうやらこのお祭りのせいで人混みが出来ているらしい。

「なるほど、粗方分かりました。どうもありがとう」

 僕はお礼をすると、街の人は軽く会釈して去って行った。

「取り敢えず宿を探そう。……と言っても、この状況で宿は取れるのか?」

「お祭り行事と被っていたようですからね。難しいかもしれません」

「まあ、最悪近場で野営か……ようやくテント生活から抜け出せると思っていたのにな……」

 吐き捨てる様にルーディさんは言った。


◉ ◉ ◉


 その後、大分割高になってしまったが、何とか宿を取る事が出来た。とはいえ明日以降の滞在は出来ないらしい。部屋に戻った僕はグレートパンジャンシティの夜景を眺めながら一人紅茶を飲んでいた。本当はコーヒーが良かったのだが、この国にコーヒーは無いらしい。

「……星が綺麗だ……」

 そう呟いていると、部屋のドアがノックされる。入室を促すと、栞が入ってきた。

「兄さん!」

「おお、栞か」

 部屋に入ると、栞はベッドの上に腰掛ける。

「随分と大きな街に来たものだ……」

「そうだね、カドゥ村とは雰囲気が違うしそれに……」

 栞は続ける。

「それに、見た?あの……何だったっけ?」

「……パンジャンドラムの事か?」

「それ!パンジャンドラムの胴体に文字が書かれてあった」

「ああ、僕も少し気になった」

 何が気になったかと言えば胴体の文字がアルファベットで書かれていた事だ。異世界の文字は見たことのない文字が使われており、僕も栞も今覚えるのに苦労している。だけど、街で見たパンジャンドラムと呼ばれる物の胴体には「Panjandrum」とアルファベットで書かれていた。

「果たしてあれは異世界の文字なのか……?」

「今は分からないけど、調べられる?」

 栞はそう尋ねた。

「そうだな、明日までに調べてみるよ」

「ありがとう、それじゃあ!」

「ああ、おやすみ」

 そう告げると、栞は僕の部屋を去って行った。


◉ ◉ ◉


 ヘルメピア連合王国——リアラ大陸の中でも屈指の強国だ。そんな国が密かに行っていた軍事計画『ヘルベチカ計画』、僕達はこの足取りを掴む為、ヘルメピア連合王国にやって来たのだ。詳細は不明だが、噂では世界全土を滅ぼせる程の計画だったとも言われている。……まあ、噂には尾ひれが付きものだが、我々の想像を絶するものに違いないとルーディさんは言っていた。

「取り敢えず寝るか……明日現実世界で学校は休み、調べてみよう」

 言って僕は消灯した。


続く……


<今日のパンジャン!!>

『パンジャンドラム』——それは、偶像崇拝が許された唯一の絶対神……

この世界に平和をもたらす偽りなき真剣……!

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