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part.12-6 憧れは昇華して……

 その翌日、前日の不眠もあってか寝付きは良かった気がする。

「……」

 お陰で今日はすっきりとした目覚めだ。仰向けの状態から状態を起こし、時計を見ると……、

「は、8時!?」

 寝坊した。どうやら目覚ましの設定をし忘れていたらしい。大慌てで着替えて支度をする。最早朝食を取る時間なんて無い。家を飛び出していつもの公園を抜ける。

「茜……は、流石に居ないか」

 先日、茜から逃げた手前待っているとも考えにくい。そのまま息を切らしながら学校へ向かった。


◉ ◉ ◉


 結局僕は茜の事が好きだったんだ。恋をしていた。いつからなのかは分からない。というのも、気付いたのは昨日なのだ。茜とは近所繋がりで元々栞とよく遊んでいた。それで知らない内に僕もその中に入る様になっていたんだ。ある意味では栞と仲良く出来たのも茜のお陰なのかもしれない。普通の兄妹ならとっくにお互いそっぽ向いてるはずだ。あくまで一般論だけど……。


 学校に到着した僕は担任に怒られながらも何とかクラスの空気を演じきって1日を過ごした。今は放課後部活の時間だ。といっても今日の科学部も仕事が無いので、グラス(ビーカー)にお茶を注いで一人黙々と勉強をしていた。

「……うーん」

 どうも身が入らない。なんか最近集中出来ていないな。とはいえここで部活(部活とは言っていない)を行っているのには訳がある。

「どうせ来るだろうな。武田のやつ」

 そう呟きながらもう一つのビーカーを用意する。そう、僕は今、武田を待っているのだ。あの後、ルーディさんに催促されてではあるものの戦う事を決めた僕だ。彼に一言言ってやらなければならない。宣戦布告というやつだ。

「よぉ佐伯!おっ勤勉だな?」

「武田か、待っていたよ」

「ん?どういうことだ?」

 困惑する武田を無視して席へ催促する。言われるがままに武田は席に着いた。

「さあ、どうぞ?」

 そう言って僕はお茶を注いだビーカーを手渡す。

「なあ佐伯、なんだこれ?」

「何ってお茶だが?」

「いや容器のことを聞いてるんだよ。なんでビーカー……」

「?……コニカルビーカーの方が良かったか?」

 戸惑う武田に僕はわざとらしく首をかしげた。

「なんでビーカー限定なんだ。……これ本当に飲んでも大丈夫なのか?」

「はあ……これだから文系は……」

「いや俺理系だよ……」

 文句を垂れる武田に対し、先行する様に僕はビーカーのお茶を仰ぐ。『じゃあ……』といった様子で武田も続いた。何やら複雑な表情をしている。

「さて、本題に入ろうか?」

 ビーカーを空にした後、僕は咳払いを一つしてそう言った。

「そんなに改まって……一体どうしたって言うんだ?」

 同じくビーカーを空にした武田が怪訝そうにそう聞いてきた。

「武田、お前は今日も茜の事で相談に来たということで合ってるか?」

 と、僕は武田に聞く。

「ああ、そのつもりだが……」

「悪いがそれはもうやめだ。もうお前に協力する事は出来ない」

「……どういうことだ?」

 ここまで聞いてきた武田の表情が変わる。

「気付いたんだ。その……僕は茜が好きだって事を、だから……」

 そう答えながら、僕は僅かに顔を逸らした。

「……だから、茜が誰かと付き合うなんて考えられない。手伝いなんて出来ないさ……!」

 そう言いながら僕は再び武田の方を向く。

「……そうか。ならしょうがないな……」

 暫く無言が続いた後、武田はそう呟いた。

「それならもうここには来ねえよ。随分と世話掛けたな」

 そう言って武田は席を立った。

「言っとくが、だからといって俺は住屋を諦めた訳じゃねぇ。高総体の日、俺は告白する。お前もそうしろ、ここからは勝負だ」

 と、武田は言い捨てる。

「どうして僕がお前に従わなければいけないんだ。……まあ良いだろう。後悔するなよ?」

「こっちの台詞だ。じゃあ、これで失礼するよ。お茶、ありがとな?」

 そう言って武田は化学室を去って行った。


続く……


TIPS!

アルミラージ①:肉食のウサギ、獰猛な性格で突進攻撃を主としている。

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