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part.12-3 憧れは昇華して……

 翌日、異世界『カドゥ村』にて、

「よぉし、無事に報酬金も手に入った事だし、俺はカドゥ村を離れる予定だが、お前達も付いてくるという認識で良いか?」

 ルーディさんは上機嫌でそう言った。

「ええ、そのつもりです。栞も同行します。……ところで、イヴァンカから何か話は伺っていませんか?」

 僕はそう言ってルーディさんを見る。チェルニー山脈に向かう前、イヴァンカは僕達のパーティとして戦いたいと言っていたのだ。

「イヴァンカ?いや、特には……」

 怪訝そうにルーディさんは答える。

「?そうですか。何かおかしいな……ちょっと彼女の元へ行ってきます」

「そうか、気を付けて……」

 首をかしげるルーディさんを余所目に僕はイヴァンカの元へ向かった。


◉ ◉ ◉


 イヴァンカの家に到着し、ノックをするも中から反応が無い。

「……外出中か、どうしたものかな?」

 暫く立ち往生した後、近くの村人が僕に声を掛けてきた。

「おや、ショータ君かい?イヴァンカに何か用事?」

「ええ、彼女の居場所をご存じで?」

「ああ、彼女なら今村長のところに居るよ。なんでも何か揉め事があるとか……」

「揉め事?……そうですか、ありがとうございます」

「あいよ!」

 村人に挨拶を交わした後、僕は村長の家に向かった。

「揉め事ってなんだ?」


◉ ◉ ◉


 浮かび上がる疑問を置いて目的地へたどり着くと、中から村長の奥さんが現れた。

「あら、どうしたんだい?」

「ご無沙汰しています。イヴァンカは今中に?」

「イヴァンカに用事?彼女なら中に居るよ。今主人と話してるから時間は掛かるだろうけど……ああ、でも丁度良かった。中に入ると良い」

「?……では、お言葉に甘えて」

 奥さんの言葉に疑問を持ちながらも僕は村長の家に入っていった。

「イヴァンカなんだけど、ルーディ商人と共に旅に出たいと言い出していてね、それを主人が猛反発しているのさ?」

 家の廊下を歩く途中、村長の奥さんはそう言った。

「村長が?一体何故……」

「当たり前さ、今この村にはイヴァンカ以外に戦力は無い。イヴァンカが居なくなってしまえばこの村を守る者が居ないんだよ」

 と、奥さんは言った。

「そう言えばそうでしたか……」

 と、僕は答えた。イヴァンカが僕らのパーティに入りたいと言った時、軽く答えてしまったが、カドゥ村としてはどうしても彼女を放せない理由がある。

「あんたはどう思っているんだい?」

 と、奥さんは尋ねる。

「……そうですね、仲間が増える事は歓迎です。それは僕もルーディさんも同じはずです」

「そうかい。まあ、そうだろうね」

 と、村長の奥さんは答えた。そしてとある扉の前で奥さんは立ち止まる。

「ここだよ」

 と、奥さんは言ってドアをノックした。中からは何やら揉め事の様な声が聞こえてくる。男性の声を合図に村長の奥さんはドアを開けた。

「おや、君は……」

 中から村長が現れ、怪訝そうな表情を取る。

「ご無沙汰しています。佐伯です」

「おいお前、何故ショータを……」

 僕の挨拶をよそに村長は自分の奥さんに耳打ちする。

「全然話が終わらないんだもの、良いじゃ無いですか」

「全く……まあ、入ってくれ」

「ありがとうございます」

 村長に促され、中に入った。

「おや?翔太じゃないか!」

「ああ、パーティに関しての話をしに来たんだが、まさかその事で揉めていたなんてね?」

 イヴァンカと合流し、僕は苦笑を浮かべる。

「まあ、ある程度予想はしていたことだ。勿論君は私に加勢しに来てくれたんだよな?」

「そのつもりだが、多分何も出来ないぞ?」

「十分だ。話に参加して欲しい」

 苦笑しながらもイヴァンカはそう答えた。


◉ ◉ ◉


 その後、僕を交えたイヴァンカと村長の話し合いは長い時間続いたが、結果は平行線で終わってしまった。世界中を舞台に旅をしたいと話すイヴァンカ、それを必死に止める村長。僕は勿論イヴァンカの話に賛成する側だが、村長の言う事は正しい。

「やはり、旅に出るのは難しいのだろうか」

 帰り際、イヴァンカは僕にそう尋ねた。

「状況が状況だからな……仕方無いのかもしれない。でも……」

 と、僕は答え、一拍置いた。

「ルーディさんなら何とかしてくれるかもしれない!彼は交渉のプロだ!」

「翔太……!」

 と、イヴァンカは僕の方を見る。そしてこう続けた。

「それ、他力本願じゃないか」

「……まあ、そうなんだけどね」

 と、僕は答える。

「とはいえ、そうだな……君の方からルーディ商人に伝えておいてくれないか?」

「ああ、分かったよ」

 と、僕は答え、解散となった。一人になった僕はいつもの宿屋を目指す。


◉ ◉ ◉


「とまあ、こんな経緯がありまして……」

 夜、宿屋に戻った僕はルーディさんと話をしていた。

「ふむ、そんなことが……」

 ルーディさんは言って暫くの間思案顔になる。

「イヴァンカが仲間入りしてくれる事は歓迎だな。よし、ここは俺が村長と話をしてくるか」

「そうですね、ありがとうございます」

「お前が言うことじゃねえだろうが。まあ、取り敢えず話をしてから今後の作戦を練るとしよう。やれやれ、またカドゥ村に留まる理由が出来ちまったな!」

 ルーディさんは嬉しそうにそう言った。


続く……


TIPS!

ルーディ・イェーガー③:元々は普通の商人だったが、「世界の景色を見たい」との思いで旅を始めた。

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