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part.11-15 チェルニーの激闘

 村へ帰ってきた僕達は宿屋のロビーへ集まった。既に栞が到着しており、一人待ちぼうけしていたらしい。

「栞、お待たせ」

 僕がそう言うと、栞はこちらを振り向いた。

「兄さん、お疲れさま!」

「ああ、魔法の練習は終わったのか?」

「まだ、今日は座学で魔法の概要を聞いただけ」

 栞がそう言った所でルーディさんがわざとらしく咳払いをする。

「では始めよう、まずは……」

 ルーディさんはクイーンフォックス討伐の為の説明を始めた。


◉ ◉ ◉


 知っての通り、クイーンフォックスの巣はチェルニー山脈にある洞窟の中だ。これはイヴァンカとルーディさんが見つけてくれた。クイーンフォックスは間違いなくその最深部に居ることだろう。巣の内部の構造は不明だが、多くのレイジフォックスを産み出していることもあり、収容数の関係上、洞窟は深く、複雑に入り組んでいる事が予想される。

「ここまでが巣に関する情報だ。何か質問は?」

 ルーディさんがそう聞くと、一同は首を横に振った。

「よろしい、次に作戦だが、クイーンフォックスの討伐は俺一人で行う」

 と、ルーディさんは言った。

「え、一人で行うのですか!?」

 それを聞いた僕はそう言った。

「そうだ、作戦開始時、クイーンフォックスは動けない状態であると予想される。だから討伐に関しては俺一人で十分であると考えたのだ」

 ルーディさんは淡々とそう言った。

「では、僕達は何を……?」

 僕がそう尋ねると、ルーディさんは「フッ」と、笑みを浮かべる。

「お前達はクイーンフォックスを護衛しているワーカーの攪乱と各個撃破だ。クイーンフォックスが繁殖期である以上、巣を守るレイジフォックスの数も多く、警戒も強い」

 と、ルーディさんは言った。『ワーカー』と言うのはレイジフォックスの別称のことだ。

「つまり、お前達は俺がクイーンフォックスを討伐するまでの間、囮役を引き受けて欲しいということだ」

 ルーディさんの言葉に僕は「なるほど」と、小さく呟いた。

「ここまでで質問は?」

 ルーディさんの言葉に僕達は首を横に振る。

「よし、今日これで解散だ。あとは各々自由時間としよう。明日は実際にチェルニー山脈に向かう予定だ。準備を忘れないでくれ」

 ルーディさんの言葉を聞いて、それぞれ席を立っていった。僕も部屋に戻ろうとしたところ、ルーディさんに制止された。

「お前は今から追加で訓練だ。俺が相手になってやる」

 自 由 時 間 じゃ な か っ た の か よ!


◉ ◉ ◉


 その後、平原に出た僕はルーディさんとの一騎打ちとなる。相変わらずルーディさんには勝てないどころか、攻撃を当てる事すら出来ない。僕はいつの間にか遠慮する事も忘れ、

「うおおおおおおおお!!」

 がむしゃらに木刀を振りかざしていた。ルーディさんはそれを受ける事すらせず、巧みに躱す。

「──」

 ルーディさんが何か言っている様な気がするが、僕の耳には届かない。ただルーディさんの動きに目を向け、木刀を振りかざすだけの存在になっていた。

「……ふむ」

 不意にルーディさんがこちらに突撃する。すんでのところで僕は攻撃を受け、ギリギリのところで体勢を保った。

「ほう、やるじゃないか」

 それでもなお冷静なルーディさんは僕の足下を掬う。

「うわあ!!」

 そのまま僕は地面に倒れてしまった。ついでに持っていた木刀も吹き飛ばされる。

「少しは成長したらしい。明日の件もある事だ。今日はこの位にしておこう」

 なんとか自分で起き上がり、体勢を立て直した。長い戦いに息が追いついていない。

「さあ、帰るぞ?」

 その言葉に従い、僕らはカドゥ村へ向かった。


続く……


TOPIC!!

アイスニードル


大気中や地表の水分を凝縮し、針状の氷を形成して前方へ飛ばす魔法。


形成された氷は脆く、相手によっては針を貫通させられずにダメージを出せない場合もあるが、

素早く氷を形成することで弾幕を形成する事も出来る。

外皮の硬いモンスターや、大型モンスターなど、針を貫通できないモンスターに関しては

目等の弱点を狙う必要があり、使い勝手はあまり良くない。


しかし、使用する魔力も非常に低く、弾幕の形成がしやすい為、

掃射を行うことによって下級魔法の中でも随一の面制圧能力を発揮する事が出来る。


アイスニードルは単体でモンスターを撃破する事は難しい為、

直進で向かうモンスターの足止めを行い、

味方や他の魔法と連携して撃破を行うことが望ましい。

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