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part.11-14 チェルニーの激闘

 その後、ある程度化学室で勉強を終えた僕は、一人で家に帰る。茜とも合流しなかったし、多分部活なのだろう。流石に連日サボったりはしないな……。いやサボるなよ、僕は嬉しいけd(ry


 家に帰ってからはひたすら今日学んだ所の復習をしていた。正直な話をすると異世界での戦いで身体は疲弊しきっている。でも、どれだけ身体が疲れていても頭は案外回るものだ。こうしてみると、疲労は言い訳に出来ないものだな……。

「はぁ……」

 溜息交じりに時計を見ると、既に11時を回っていた。もう少し勉強を続けても良いのだが、流石に限界だ。

「寝よ……」

 そう呟きながら、僕は部屋の明かりを消した。


◉ ◉ ◉


 翌日、異世界にて僕は目を覚ます。頬には何やらひんやりとした感覚があった。

「……ん?」

 怪訝に思った僕は横を向くと、柔らかいゼリー状のものがぷるぷると震えていた。これは……、

「シェリー!?」

 なんと、僕の頬にはルーディさんのペットであるサージスライム、シェリーがくっついていた。僕が横を向いてしまった為、僕の頭でシェリーを潰してしまっている。

「ああ、悪い……!」

 慌てて僕が顔を上げると、シェリーは潰れた状態から元の姿に戻った。どうやら命に別状は無いらしい。元の姿に戻ったシェリーは、そのままベッドから降りて、部屋を去って行った。

「起こしに、来てくれたのか……?」

 一人置いて行かれた僕はそう呟いた。


◉ ◉ ◉


 部屋を出て宿屋のロビーへ着くと、ルーディさんが一人僕を待っていた。

「おはよう」

「おはようございます」

 取り敢えず挨拶を交わした後、ルーディさんは組んでいた腕を解いて僕に向き直る。

「ショータ、クイーンフォックスが繁殖期に入ったらしい」

「え……!」

 ルーディさんの言葉に僕は押し黙る。どうやら遂にクイーンフォックスとの戦いが始まるらしい。クイーンフォックスは繁殖期に入ると、自分の子供を産み出す為に自身の栄養を消費する。つまり、繁殖期のクイーンフォックスはかなり弱っている状態となるのだ。

「じゃあ、今からクイーンフォックスの巣に……?」

「いや、まだだ。クイーンフォックスが繁殖期になって少し時間を置いた時が奴にとって最も弱っている時期になる。大体1週間くらいだな」

 僕の質問にルーディさんはそう答えた。つまり、決戦は1週間後となるわけだ。

「1週間、か……」

 偶然にも現実世界の模擬試験と時期が被る。まあ、本当に偶然なのだろうが、何か運命のようなものさえ感じられた。

「分かりました、それまでに僕も戦える水準にならなければ、ですね?」

 僕はそう答える。

「分かってるじゃないか、今日はアモールの森に向かおうと思うんだ、どうだ?」

 ルーディさんはそう言った。僕は昨日、アモールの森に助けられたのだが、それを知ってか知らずか、ルーディさんからこのような提案が来た。まあ、恐らく前者だろう。

「そうですね、栞の新しい妖精『ソフィー』も同意するでしょう」

 僕はそう言って同意した。

「なら行こう、既にイヴァンカ達も待っているはずだ」

 そう言って僕らは歩き出した。


◉ ◉ ◉


 その後、僕達は予定通りアモールの森に向かう。道中、接敵はしたが特にトラブルも無くたどり着く事が出来た。森の中は緑に覆われており、以前訪れた時のような不気味な枯れ木は存在しない。

「ここに来るのも久しぶりだ、随分雰囲気が変わってしまったね」

 森にたどり着くやソフィーがそう言った。

「そうなの?」

 栞が尋ねる。

「前の森は生命で溢れていたよ。でも、今は静けさと微かな血の臭いが漂うだけだ」

 と、ソフィーが答えた。僕達では捉えきれない僅かな臭いを感じているらしい。

「それでも、元凶であるアルミラージは僕達で殲滅した。いつかは元に戻るんじゃ無いか?」

 僕はソフィーにそう答えた。

「そうだね、そうなることを期待しているよ」

 ソフィーはそう答えた。


◉ ◉ ◉


 森の最深部、アモールの泉へとたどり着く。僕は地面に膝を着いて泉の水を掬い取った。大自然の工程で澄まされた水からは塩素の臭いなんて微塵も感じない。静にその水を飲むと、冷たくも柔らかな感覚が全身に染み渡った。

「昨日は助かったよ、どうもありがとう」

 僕はそれだけ残してルーディさん達の方を向いた。

「……もう良いのか?」

 ルーディさんがそう尋ねる。

「ええ、大丈夫です。ソフィーは?」

 言って今度はソフィーへ尋ねる。

「ボクも大丈夫だよ。アモール様に怒られてしまった……」

 どうやらいつの間にかソフィーも主との話を終えていたらしい。しかし言葉の割に悪びれた様子は無い。

「フッ、では平原に戻ろう。レイジフォックスを相手に訓練だ」

 ルーディさんはそう言った。


◉ ◉ ◉


 その後、栞は1人、新しい魔法である『アイスニードル』を取得するため、魔術師であるヘンシェルさんの元へと向かい、それを見届けた僕らはひたすらモンスターを相手に戦闘訓練だ。

「今日はこの位にしておこう」

 ルーディさんはそう言った。いつもより早い時間帯だ。

「……随分早いですね」

 怪訝に思ったイヴァンカがそう尋ねる。

「ああ、クイーンフォックス討伐の為の作戦会議や前準備を少しずつ行っていきたい。二人共付き合って欲しいんだ」

 ルーディさんはそう言った。

「なるほど、そう言うことなら……」

 と、イヴァンカは答えた。僕も特に否定する理由は無い。

「じゃあ帰ろう!」

 ルーディさんの言葉を皮切りに、僕らは村への方角へ歩き出した。


続く……


TOPIC!!

クエスト:クイーンフォックス討伐


クエスト形式:討伐クエスト

依頼者:カドゥ村村長

受注者:ルーディ・イェーガー他


<内容>

クイーンフォックスが繁殖期に入り、

巣穴から出てこなくなった事がガレルヤ王国所属の冒険者の働きで確認された。

クイーンフォックスは繁殖期に入ると、子供を大量に産み出すため、自身は疲弊し、

討伐には絶好の機会となる。

この期を逃さずクイーンフォックス及び、新女王となりうる幼体の討伐を依頼したい。


なお、護衛のワーカーは本クエストの討伐対象外であるが、

ワーカーの討伐数に応じて追加報酬も検討する。

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