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part.10-9 狐の寝床

「……どういう事ですか!?」

 予想外の発言にイヴァンカはそう尋ねる。

「俺は何度かチェルニー山脈を訪れたことがある。だが、ここでレイジフォックスと遭遇したことが無かったんだ」

 と、ルーディは言った。

「それってつまり……」

「ああ、本当にあるかも知れないな?奴らの巣が」

 ルーディは続ける。

「だから敢えてレイジフォックスを待ちたい。奴らは俺達を追って巣穴からやって来る。つまり……」

「レイジフォックスがやって来た方角に巣穴がある……?」

 ルーディの言葉を読んでイヴァンカは言った。

「察しが良いな。ここに居るレイジフォックスは恐らく全て巣穴防衛用のワーカーだろう。これだけ数も多いし間違いは無い、この辺りはレイジフォックスの縄張りだな?」

 と、ルーディは言った。

「……分かりました。それなら手伝います!」

 言ってイヴァンカは鞘に収められたレイピアの柄を握る。

「助かる。正念場になるだろうが、耐えてくれ!」

 と、ルーディは言った。


◉ ◉ ◉


 岩陰に身を潜めるルーディとイヴァンカ。そんな中、こちらへ近づく足音が少しずつ近くなっていく。音源の数も多く、最早足音の主がいくつあるのか分からない。足音に釣られて自身の鼓動も早まっている。そんな中、ただじっと息を潜めてその時を待った。

「来た……!」

 一匹のレイジフォックスがこちらに向かってきた。その後ろからぞろぞろとレイジフォックスがこちらへ向かってくる。

「今だ!」

 言ってルーディは戦斧を握り、レイジフォックスの群れへ突っ込んでいった。イヴァンカもそれに続く。

「やあああああああああああ!!」

 イヴァンカはレイジフォックスの側面へと回り込み、斬りかかる。一振り、もう一振りとレイピアを振りかざす度に一匹のレイジフォックスが絶命していた。それでもなお、レイジフォックスの数が減ることは無い。

「うおおおおおおおおおおおおお!!」

 ルーディもその手に握る戦斧を振りかざし、レイジフォックスの群れをなぎ倒していく。リーチの長い戦斧は面制圧に優れており、一対多の戦闘を有利に進めていた。その合間を縫ってイヴァンカが裏を取り、ルーディが取り逃がしたレイジフォックスを斬りつける。その戦いぶりに臆したレイジフォックス達は次第に進撃の足が緩まってきた。

「今だイヴァンカ!畳み掛けるぞ!」

「はい!!」

 ルーディに合わせてイヴァンカもレイジフォックスの群れに突進する。既に体勢が崩れかけていたレイジフォックスの群れは案外簡単に突破できた。

「群れの方向へ進みながらレイジフォックスを撒く。付いてきてくれ!」

「分かりました!」

 ルーディを先頭に、一行は山道の奥へと進んでいく。


◉ ◉ ◉


「何とか……なりましたね」

 イヴァンカが息を切らしながらそう言った。あれからレイジフォックスを撒く為に走り続け、結果的に下山する形となった。イヴァンカ達は山脈付近の木陰にテントを張った。逃げ回る内に日も暮れており、体力的にもこれ以上探索は出来ない。

「ああ、良く耐えてくれた!」

 ルーディはそう言った。

「ええ、これで明日には巣が見つかりそうです」

「だと良いな?」

 イヴァンカの言葉にルーディはそう答えた。


◉ ◉ ◉


 翌日、

「今日は先日レイジフォックスと遭遇した場所を中心に探索を行う。手掛かりはある程度掴んでいる為、今日はなるべく接敵を避けよう」

「分かりました」

 ルーディの言葉にイヴァンカはそう答えた。

「忘れ物は無いな?じゃあ行くぞ!」

 テントを片したルーディはそう言った。


◉ ◉ ◉


 その後、特に何事も無く二人は先日レイジフォックスと遭遇した場所へとたどり着いた。先日に戦った際のレイジフォックスの死骸は完全に腐敗しており、汚い色の骨が見えている。

「たった1日でこんな……」

「恐らくスライムファージだろう。奴の体液で死肉を溶かしているんだ」

 と、ルーディは答えた。つまりこの腐敗した死肉は全てスライムファージが捕食した跡ということになる。

「う……凄い匂いだ」

「まあ、そんなことより巣穴だ。確かレイジフォックスは向こうの方角からやって来た、そっちへ行ってみよう」

 言ってルーディは歩き出した。イヴァンカもそれに続く。

「待ってくれイヴァンカ、足音がする」

 道中、不意にルーディがそう言ってイヴァンカを制止する。ルーディが耳にした足音は恐らくレイジフォックスのものだろう。正確な数は特定出来ないが、少なくとも一つでは無い。

「……やはり、簡単には通らせてくれないか」

「どうします?迂回出来るなら……」

「いや、どうせ巣に近づく程ワーカーの数も増えるだろう。昨日の尋常じゃないワーカーの数を考えても巣穴は近いはずだ」

 言ってルーディは戦斧を構えた。

「合図で突破しよう!準備は良いか?」

 ルーディの言葉に合わせてイヴァンカもレイピアを抜いた。

「……いつでも行けます!」

「よし、行くぞ!!」

 言ってルーディは飛び出した。


続く……


TOPIC!!

チェルニー山脈


カドゥ平原から南東に位置する山脈。


低木や草原が多いカドゥ平原と打って変わって山脈内に緑がほとんど無く、土の色が多い。

原因は『スライムファージ』で、周囲の植物を食い荒らしている為とされている。


また、スライムファージの体液と混ざった土は酸性を示す為、

カドゥ平原の地質と大きく異なり、平原内にある植物が自生できない。


しかし、スライムファージの捕食から逃れ、酸性土壌でも育ちやすい『ブルーベリー』等の植物もちらほらと見えており、カドゥ村の特産物の一つになっている。


また、チェルニー山脈の土壌はスライムファージが食べこぼした死肉や植物を堆積させている為、

窒素等の栄養分の高い土であることが知られており、

チェルニー山脈の土自体が酸性肥料としてカドゥ村でもしばしば用いられている。

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