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part.10-5 狐の寝床

「……コイツは不味い、追うぞイヴァンカ!」

「はい!」

 言って二人は武器を抜いた。

「イヴァンカ、シオリを頼む」

「分かりました!」

 言ってイヴァンカは栞の元へと向かう。その間にもレイジフォックスは「ウォォォォォォォォ!!」と雄叫びを上げ、仲間を呼んでしまった。

「栞、大丈夫か!?」

「はぁ……はぁ……ファイア・シェル!」

「うわあ!!」

 イヴァンカが声を掛ける瞬間、栞は魔法を乱射する。幸い、イヴァンカに当たることは無かったが、栞は気が動転していた。

「栞、落ち着いてくれ!私だ、イヴァンカだ!」

 イヴァンカは栞を押さえつけて必死に声を掛けるが、残念ながら栞の耳には届かない。

「イヴァンカ、大丈夫か!?」

 ここで、レイジフォックスを仕留めたルーディが声を掛けてきた。

「シオリ、ゆっくり深呼吸をしろ?」

 ルーディが栞に声を掛ける。栞は過呼吸気味になっており、完全に目を回していた。

「はぁ、はぁ……」

 やがて栞の過呼吸は止まるが、気を失って倒れてしまう。

「不味いな、レイジフォックスは仲間を呼んでしまった。急いで場所を変えよう!悪いがシオリを背負ってくれ!」

「はい!」

 イヴァンカは栞を背負い、その場を走り出す。しかし、既に二匹のレイジフォックスが駆けつけていた。

「たった二匹か……舐めやがってぇぇぇぇぇぇ!!」

 叫びと共にルーディは戦斧を振りかざす。そのまま二匹のレイジフォックスは一瞬にして真っ二つになった。

「す、凄い……」

「もたもたするな!急ぐぞ!!」

「はい!!」

 イヴァンカは栞を背負ったまま先を急ぐ。しかし、既にもう一匹のレイジフォックスが追いついてきた。

「しつこい!!」

 イヴァンカは栞を背負いながらレイジフォックスの前脚を踏みつける。「ギャウン!!」と鳴き声を上げて後ずさりした瞬間にルーディが斧を振るった。

「行こう!」

 イヴァンカ達は走り出した。


◉ ◉ ◉


 その後、何とかレイジフォックスを撒いてイヴァンカ達は適当な木陰に腰を下ろした。

「しかしこれは予想外だった。シオリはレイジフォックスに怯えると思っていた。まさか気を狂わせて突進するなんて、これじゃあまるでバーサーカーだな?」

 ルーディは腰を下ろしながらそう言った。

「ええ、このままじゃ栞は早死にです」

 イヴァンカは栞を降ろし、頭を撫でながらそう答えた。

「ああ、何とかしてこれを止めないといけないな……」

 と、ルーディは呟く。そんな中、気を失っていた栞がゆっくりをその目を開いた。

「栞?大丈夫か!?」

「……ここは?」

 栞は辺りを見渡してそう呟いた。

「まだカドゥ平原の中だ。何が起きたか覚えているか?」

「……よく分からないです」

 栞は首を横に振りながらそう答える。イヴァンカはそんな栞にこれまで起きた事を話した。


◉ ◉ ◉


 話していく内に栞もレイジフォックスと対面した時の事を思い出していた。

「……そうだった、ごめんなさい!迷惑を掛けてしまって……」

「いや、構わないさ。だが、今日の所は引き上げるとしよう」

 栞の言葉にルーディがそう答える。空を見上げるといつの間にか日は沈みかけていた。

「……分かりました」

 栞はそう答え、その場から立ち上がった。


◉ ◉ ◉


 その後、カドゥ村に到着する頃には日も沈み、平原は真っ暗だった。

「今日はありがとうございました」

 栞はルーディとイヴァンカに向かって話しかける。

「ふふ、どういたしまして」

 イヴァンカは笑みを浮かべてそう答えた。

「しゃあ私はヘンシェルさんにチャイを返してきますので!」

 言って栞は別れていった。

「……俺達も解散しよう」

「そうですね、明日はどうするんですか?」

 ルーディの言葉にイヴァンカはそう問う。

「……シオリがあの状態なら危険だろう。正直まだ迷っているが、一応明日の訓練は無しで頼む」

 ルーディはそう答えた。

「……分かりました」

 言って、ルーディとイヴァンカはそれぞれの帰路に着く。


◉ ◉ ◉


 その後、ルーディは栞の兄、翔太の元へ訪れていた。

「……とまぁ、こんなことがあったんだ」

 簡単な挨拶を手短に終え、ルーディは本題となる栞の訓練について話していた。

「なるほど、そんなことが……取り敢えず、全員無事で何よりです」

 翔太はそう答える。

「ああ、それで明日も同じような訓練を行う予定だったんだ」

 ルーディは更に続ける。

「だが、シオリがあんな状況だからどうしたものか悩んでいるよ。お前はどうだ?」

「どう、とは?」

「明日も訓練に連れて行っても良いだろうか?お前はシオリの兄だ。俺なんかよりもシオリの事を分かっているだろう。だからこの件でお前の意見を聞きたかった」

「……なるほど」

 言って翔太は少しの間、考え込む。

「少し、栞と話がしたいです。回答はその後で良いですか?」

 翔太はそう答えた。

「分かった。後ほどシオリに伝えよう。だが、彼女も疲弊している。明日にしようか」

「ええ、お願いします」

「じゃあ、俺はこれで失礼するよ。怪我、早く治ると良いな」

「ありがとうございます」

 翔太の言葉と共にルーディは部屋を後にした。


続く……


TIPS!

レイジフォックス①:単独で攻撃を行わない理由は臆病な性格だからである。

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