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part.20-2 そのパンジャンは誰が為に……

 それから翌日、現実世界で目を覚ました僕は早々に朝食を済ませる。その数分後、茜が遅れてやって来た。やはり朝は弱いのかいつも通り気だるそうだ。

「おはよう、茜」

 僕の挨拶にも茜は「んー……」と呻き声を上げるだけだ。もう少しからかってみたい気持ちもあるが、後で何を言われるか分かったもんじゃない。大人しく自室に戻り、制服に着替える。

「茜ー、早くしないと先行くぞー?」

 僕の言葉に茜は「待って~」と、間延びした声を返す。本当に置いて行っても良いのだが茜の言葉に従い、暫く待っていると、制服に着替えた茜が玄関前にやって来た。

「お待たせ、さあ行こう!」

 完全に普段の調子を取り戻した茜がそう言った。

「本当に待たせやがって……まあいいや」

 悪態をつきながらも茜と並んで通学路を歩く。異世界では大きな進展があったものの現実世界ではいつも通り……そのギャップに付いて行くことが出来ず、目が回って思わず倒れてしまいそうになる。

「……なあ茜」

「んー?」

 いつの間にか僕の前を先導していた茜が振り返った。

「ふと思ったんだ。もしも異世界に行ったのが僕じゃなくて茜だったら……どうなってたんだろうなって」

 僕がそう言うと、茜はしばし黙考した後、口を開く。

「……私は嫌かな、だってモンスターと戦って大怪我を負って、そうかと思えば国に捕らえられて監禁されるんでしょ?」

「いやまぁそうだけどそうじゃなくて……」

 応答に迷いながら僕は茜にそう答えた。

「そうじゃなくてもしょーたが異世界に行くべきだよ。だってしょーたはしおりちゃんのお兄ちゃんなんだから」

 と、茜は答えた。

「……それ、質問の答えになってないじゃんか……」

 あきれ顔で答えたがそれ以上追及はしなかった。


◉ ◉ ◉


 学校に着いてからは化学室へ向かう。受験勉強という名目で化学室へ来ている都合上、一応は勉強し、飽きたら茜と適当に談笑する。今日の議題も異世界の話だ。まあ、談笑と言っても笑える話は無いのだが……。

「そっか、でも良かった。しょーたが無事で……」

「全くだ。本当に死ぬかと思ったよ……。でももう大丈夫だろう。ルーディさんの方で僕が無実である事を証明してくれたみたいだし、後は例のパンジャンドラムをどうするか……」

「ヘルベチカの事か……」

「ああ。エルヴィン伯爵は完全に本国から寝返るつもりらしい。僕の事も『必ず殺す』と言っていた」

「もう、戦うしか道は残されていないみたいだね」

「ああ、ヘルメピア本国の意向次第だが恐らく戦う事になるだろう」

 と、僕は答えた。

「じゃあ、次が最終決戦になるって事か……」

 そう言いながら茜は思案顔になる。しばし沈黙が訪れたが、それはある男の入室によって遮られた。

「待たせたな!!」

「……岡田先生」

 そう呟く暇も無く、岡田先生は教卓に着いた。

「さて、ひとまずこれまでの顛末を教えて欲しい。あれからどうなった?」

 そう言われて僕はこれまでの出来事を岡田先生に話した。

「そうか、遂にヘルベチカを脱出したか……!」

「ええ、ですがまだ終わっていません。パンジャンドラム・ヘルベチカは今も動き続けている」

「そのようだな。聞いた限りだと、エルヴィンという男は確実に君を殺す気でいるらしい。君は戦うつもりでいるのか?」

「……そのつもりです」

「そうか、だがパンジャンドラムは手ごわい。油断するなよ?」

「……はい」

 と、僕は答えた。


◉ ◉ ◉


 その後、一通り会議を終えて僕らは下校する。パンジャンドラム・ヘルベチカの対抗手段は未だ乏しい状態だが、このまま逃げるつもりはない。

『貴様らは必ずこのパンジャンドラム・ヘルベチカが葬って見せる!貴様らはヘルベチカへの生贄だ!』

 エルヴィン伯爵は自らの野望の為だけにヘルベチカを本国から盗み、操っている。このまま奴の好きにさせれば僕は勿論ヘルメピア……いや、異世界に住む全ての人々にとって大きな脅威となるだろう。僅かとはいえパンジャンドラムの開発に携わった人間として……そして、身内の人間を殺された身として許す訳にはいかない。


 ——ヘルベチカを倒し、カローラさんの無念を晴らす。

 雲一つない快晴の空に僕はそう誓った。


続く……


<今日のパンジャン!!>

俺は絶対にブレない男だ。

何故なら、俺の代わりにパンジャンドラムがブレてくれるから、な?

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