(心霊スポット番組)
御仏のふとよぎる思い
あの夜、この世の果てにつづく道。
「ねぇ 見てみて、あそこに女の人がいる。」
「えっ!? どこどこ、」
(あぁ、そう そうなのね…)
(でもね、もうあなたは死んでいるのよ、)
(なっ、何ですか!? )
(何か見えてるんですか!?)
(先生、僕………さっきから背中が、)
霊媒師がテレビ局のスタッフの背中を擦りながら読経を始める。
しばらく蹲るスタッフ。
構わず、霊視を続ける霊媒師が言葉を発す。
(あそこに女の人が こちらを覗いてるでしょう?)
(あの方は、ご自身が亡くなってることに気がついていないの)
「子ども、子どもを探してるんだわ。」
「はぐれた、子どもを探してる。」
「あっ、あそこにも、ほら、ここにもいる。」
読経を弟子が続ける
なにかを探しているような仕草をする霊媒師………
(お子さんね、)(お子さんはもう成仏なさって、あなたをあちらでお待ちだから安心して、)(さぁ、あなたも私が送って差し上げるからね。)
(もう大丈夫です。)よろよろと立ちあがるスタッフ。
(あの方は、お子さんと戦争時代、ここではぐれてしまって探してるうちに亡くなられて地縛霊になられたの)(あなたが、やさしそうに見えて憑依したのよ。)(こういうところは危険だからもう、行きましょう)(いくつもの霊が、来てるわ。)
「スゲー、お前…テレビの霊媒師と同じこと言ってる、しかも お前の方が早ぇ~って、マジかよ!?」
「ん、なんだかね、感じるんだ…。」
「子どもの頃はさ、あの人たちも生きている人だと思ってたの。」
「だけど 感じるのが普通じゃないんだって分かったときには ちょっと怖かったかな…」
「だよな、俺ならびびって ションベンちびるぜ(笑)」
「ん、こういうTV観ちゃうとトイレ怖いよね。」
「イヤ、マジ、スゲェーよ!」
「(笑)そっかなあ(笑)」
「ははは♪(笑)」
恐いのを騙す。笑うことで振り切る。
夢に見たくないから、暗示をかける。
こういう、TVを観た夜は夢を見ないと。
強く、強く暗示をかける。
背中から誰か見ている気がするから
首まで、すっぽり布団をかける。
汗だくで眠るひとりの夜。
「もお、いいじゃん。」
「テレビ終わり、」
「ねぇ~、しよ?」
「ん~、マジ、、、怖ぇ~」
「もお!アタシ先、寝ちゃうかんね!」
「オイ、待てよ、待てよ、」
「知らない!」
「くすぐっちゃうぞ、」
「ぁ~ん、バカ、ははは♪ははは♪やめてよ~」
「んあっ!」
お互いの荒い呼吸が………
「もう やぁ 」
「まだダメだよ」
「俺で感じて、」
「感じて、」
「ああ…っ」
いつも以上に
欲情をかりたてる
汗だくで眠るふたりの夜。