永遠
私たちは出発までの一週間で、国王陛下とコージット女公爵であるお母様に挨拶をして隣国へと出発した。
移動中は国王陛下の命令を受けた近衛騎士の一部隊が護衛として同行した。
私は先日の話にあった”こちらの事情”とやらにやっと気がつく。
おそらく暗殺の対象として貴族たちから狙われているのだろう。
国外であればその危険性はかなり低下する。
国王陛下はそれらに関することも手紙に書いてくれたのだろう。
あのぼんくら第四王子せいで良い印象が無かったけど、意外といい人かもしれない。
ところで、どこまで付いてくるのかな近衛騎士の部隊長さんよ。
国境はとっくの昔に通過してもう隣国の王都は目の前だよ。
クリストバル様の護衛のための騎士も国境で合流したし、もう帰っても良いんじゃ無いかな。
それからしばらく進み、王都の城門の少し手前で馬車は止まった。
「ユリア嬢、お手を」
私はクリストバル様にエスコートされて馬車を降りる。
あの、やたらと装飾華美な騎士の一団と飾りの付いた屋根の無い馬車はなにかな?
もしかしてこれに乗るの・・・
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あれから色々なことがあった。
まるで国賓のような待遇で王都に着いた私は隣国の国王陛下から熱烈な歓迎を受けた。
その後色々な場面で助言を求められたので前回この国で過ごした五十年の間に起こった自然災害や国の施策についての知識を動員してそれに応えた。
”神秘の才女殿はどこまでご存じなのか”と国王陛下や宰相に青い顔で聞かれたので、私は曖昧に”知っていることだけ”と答えておいた。
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私に二人目の子供が生まれた。
今回の人生では一人目でも私にとっては二人目であることは譲れない。
しかし、そこで問題になったのが名前である。
旦那様は”ユリア”と”クリストバル”をつなげてユリバルにしようと言い出したのだ。
だが私は断固として反対した。
ユリバルは世界に一人だけだ。
この子をユリバルと呼ぶのには抵抗がある。
「ユリア、ユリバルという名前のなにがいけないのかな?」
「・・・」
旦那様はなにを思ったのか、明確に答えない私の手を引いて寝室に連れ込んだ。
抵抗は無意味だった。
ベッドの上で散々虐められた私は何度も同じ時を繰り返していたこととユリバルのことを話してしまっていた。
旦那様はその荒唐無稽な話をあっさりと信じた。
「ユリアのその膨大な情報の出所が納得出来ました」
そんな簡単に信じて良いのかな?
でも、信じてくれたことは嬉しいし、こっそり作ったユリバルのお墓も対外的には遠縁の子のお墓としてだが墓所に作ってくれるそうだ。
口に出して言うのは恥ずかしいので言いませんがやっぱり旦那様は素敵である。
私が笑顔で旦那様を見つめていると、急に真剣なお顔をして見つめ返された。
「そういえば一つ大きな問題がありました」
旦那様は意地の悪い笑顔を浮かべる。
「私は百歳を超えたおばあちゃんと結婚したことになるのでしょうか?」
んっ!
「覚えていないだけで旦那様も立派なおじいちゃんです!」たぶん・・・
その後の協議により、二人目の子供の名前ははユリクに決まりました。
旦那様のおばあちゃん発言については現在も継続協議中である。
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去年の冬に旦那様は七十三歳でこの世を去った。
寂しくは無いと言ったら嘘になるけど、ユリクや孫たちが居てくれるのでそれほどさみしくは無い。
今日も孫の一人が会いに来てくれた。
「御婆様、ちゃんと聞いてくださってます?」
「はい、聞いていますよ」
せっかく来てくれたのに最近では話をするだけでも疲れてしまうのでもっぱら話を聞くだけだ。
どうやら近いうちに旦那様に会えそうだ。
神殿の祈りの言葉は一般庶民にまで浸透しているので、私がこの世を去った後も世界の誰かはこの世界の存続を祈ってくれるだろう。
「御婆様?」
「あまねく世界に時の女神のご加護がありますように」そしてこのまま永遠に眠っていられますように・・・
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--????--
「ねえ、なんでそんな昔作ったゲームの同人誌なんて書いたの。しかも最後に”終わり”じゃなくて”続く”って、この話し次の即売会でも書くの?」
「いいや、書かないよ」
「じゃあ何で、そもそもなぜこの話を書いた?」
「なんとなく・・・なんとなく書いてってお願いされたような気がするのよ」