祈り
「あまねく世界に時の女神のご加護がありますように、そしてこの世界が永遠につづきますように」
シスター・シアと子供たちの祈りが礼拝堂に響きわたる。
あれから私は毎日朝の礼拝に参加している。
世界がつづくのは卒業パーティーの日から最長でも一週間のはずだった。
しかし、一ヶ月が過ぎた今も私はあの日には戻ってはいない。
なぜ戻らない、それとももう戻らないのか?
混乱はしたが少しだけ嬉しかった。
やっと死ねるかもしれない。
おそらくだが神に祈ることによってこの世界は存続するのだろう。
こんな簡単なことでこの異常な状態から抜け出せるなんて今でも信じがたいが、実際に起こっていることを否定は出来ない。
このまま世界が続くならクリストバル様の元へ行きたかったが、平民になった私には近づくどころか遠くから見ることすら叶わない。
王宮勤めの侍女になれれば可能性はあるが、それには最低でも貴族の縁者でなければならない。
私は他国の者であり、噂によると祖国では何の罪かは知らないが私の手配書が回っているらしい。
実現できない夢など描いても意味が無い。
だがせめあの人の国で死のうと思う。
私は見習いだがシスターの地位を手に入れた。
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「シスター・ユリア・・・」
私を呼ぶ声が聞こえる。
周囲の子供たちは皆が目に涙をたたえている。
「そんな情けない声を出すものではありませんよ。リルは一番上のお兄ちゃんでしょ」
あれから五十年、私は孤児院の子供たちと共に祈り続けた。
先月、シスター・シアは眠りについた。
そして、私も・・・
目を閉じればもうここには戻ってこないだろう。
孤児院の子供たちに看取られながら私は寿命で死ぬ。
この子たちのことが少し心配ではあるが数日後には中央神殿から新しいシスターが来るし、近所の方々には一時的に面倒を見てくれるようお願いもしておいたから大丈夫だろう。
私はゆっくりと目を閉じる。
「あまねく世界に時の女神のご加護がありますように、そしてこの世界が永遠につづきますように」




