空虚
ああ、面倒くさい。
「ユリア、きさまとの婚約は破棄する。~~~~~~・・・・・・・」
何でお前達のために私が行動しなければならない。
「きさまが行った~~~~~~・・・・・・・」
勝手にすれば良いだろう。
「更に取り巻きたちに命令~~~~~~・・・・・・・」
私を巻き込むな。
「心優しいサミラに対して~~~~~~・・・・・・・」
こいつら五月蠅いな。
「証拠もそろっている。もはや言い逃れ~~~~~~・・・・・・・」
ところで、なんでこいつらの言うことを真面目に聞かなければならないのかしら?
そうね、そうしよう。
「よって、きさまは公開処刑とす、ギャー!!!」
私は髪を束ねていた髪飾りを外して殿下に突き刺した。
殿下は床に這いつくばってわめいている。
「どちらにしても五月蠅いわね」
まあ良い、チョットだけスッキリした。
周囲には私を断罪していた者たちが呆然と立ち尽くしている。
騎士団長の息子と弟は剣を持っているから無理かな。
私は目標を総大司教の息子と男爵令嬢に定めて拳を振り上げた。
髪飾りは殿下に刺したままだし、別に殺したいわけでは無い。
人を叩いたことすら無い私の攻撃で総大司教の息子は無様に地面に転がり這いつくばって逃げていく。
次の目標である男爵令嬢に目を向けると、なにもしていないのに尻餅をついて床を濡らしていた。
なぜこんな奴らを怖がって私は脅えていたのだろう。
「ふっふ、そうよね、別に大人しく殺されてあげる必要なんて無いのよね」
そう思った瞬間、背中に衝撃を受けお腹から槍が生えてきた。
騎士団長の息子と弟は未だ立ち尽くしている。
ならこれは警備の衛士のものだろう。
ああ、本当にこいつらに脅えていたのが馬鹿馬鹿しい。
そうしてまたあの日に戻った
「あらアーノルド様、武術大会での優勝おめでとうございます。ですが、せっかく対戦相手に賄賂や脅しをかけたのに、サミラ様には振り向いて貰えず残念でしたわね」
「きさま、俺を侮辱するのか!」
あらやだ、本当のことを言っただけなのに騎士団長の息子はずいぶんと短気なようだ。
「別にそのようなつもりはございませんわ。わたくしのような強者と違い、あなたのような弱者が優勝なさるためにはいかなる手段も選んではいられませんものね。親の権力や殿下との繋がりを躊躇なくおつかいになるあなたをとても尊敬いたしますわ。本当に戦いとは無情なものですわね」
この後、令嬢相手に決闘を挑んできた馬鹿を観衆の前で地面に転がして踏みつけてあげたわ。
こいつが子供の頃から修行したとしてもその期間は十年程度、こいつらの悪事を調べるために私はすでに十回以上死んでいる。
その間に色々な修行をして、更に実戦経験もある私に勝てるはずが無いだろう。
相手の技量が分からんとは馬鹿な奴だ。
この後こいつがどうなったのかは知らないし興味も無い。
取り敢えず学園で姿を見ることは無くなった。
「あらテリス様、ご実家が大変でいらっしゃるのにのんきに花などお持ちになって、ずいぶんと余裕がおありですのね」
きっとあの男爵令嬢のところに行こうとしているのだろうがそれは無理だよ。
「はっ?訳が分からんな・・・・」
あら、お迎えがいらっしゃったようね。
「元総大司教の息子のテリスだな。我々と同行願おう」
彼は何かわめいていたが屈強な神殿騎士たちに連行されていった。
総大司教の別荘の地下には幼いウサギさんがたくさんいて、高位の司教たちがよく遊びに行っていると国王陛下と王都の神殿を担当する大司教に教えて差し上げたわ。
この情報は貴族側からは調べることがなかなか出来ずに市井に降りていろいろ調べ、最終的にはわざと誘拐されてやっとその場所や手口を特定した。
あ、彼も何回か遊びに行っていたので同罪だよね。
「きさまは親を売るのか!」
まあ、人聞きの悪い。
「わたくしはあくまで国王陛下の忠実な臣、不正をなさったお父様たちが悪いのではありませんか?」
それに、トロイアス殿下との婚約が決まらなかったら、金持ち貴族の後妻として私を売り飛ばすつもりだったことは知っているわよ。
引きずられるように連れて行かれた家族とは違い私は騎士にエスコートされ王宮の一室に向かう。
私はいくつかの不正を暴いた功績が認められ貴賓室で幽閉となった。
まあ父と弟は公開処刑らしいから、これでも好待遇である。
長い戦いだった。
ああ、殿下と男爵令嬢は悪事には荷担していなかった。
いや、あの二人はただの馬鹿で、悪事を巡らせるような上等な頭は着いていなかっただけ。
冤罪をふっかけるのは嫌だったし、直接私自身が人を殺すのはもっと嫌だったので彼らには大した事はしていない。
私は幽閉とは名ばかりであり王宮の夜会には参加することが出来たので、お勉強やマナーがお粗末な二人をからかって気晴らしをしたくらいだ。
彼らは周囲から蔑んだ目で見られていることに気づかず、私に対して明後日な反論をしてくるのが少しだけ笑えた。
あれから月日が流れてもうすぐ時が巻き戻る。
私を殺した者や冤罪をかけた者への報復は終えていた。
「虚しい・・・」
彼らをどうこうしたところで私の望みが叶うわけでは無い。
「クリストバル様、ユリバル・・・」
私はぼんやりと月を眺めた。