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選ばれし勇者(バカ)と巻き込まれた勇者(バカ)1

 男は獣のように駆けていた。


 目を赤く血走り、白い鋭い犬歯はハッキリと光らせて、己の分身ともいえる得物の槍を力強く握りしめ、大地を蹴り飛ばす。その姿は獲物を狩る獣のように猛々しいものだった。


 何キロとも続く、道とはいえぬ森の中を駆ける。


 街からここまで数十分ものの間走り続けているというのに対し。男は疲労を感じてはいなかった。


 ただ、ひたすらに、速く、速く、急がなければならない! でなければ奴が逃げられてしまう! その強い気持ちが彼に疲れを感じさせず、つき動かせていた。


 街で聞き入れた情報。男が探し求めていた人間の一人を見かけ、この先の向かった、という。それを耳にした途端、男は血相を変えて飛び出した。


 猟奇的な歓喜が男の心を支配していた。


 これでようやく、顔に付けられた傷の痛みと戦友(とも)を、家族を失った心の痛みが少しばかりは晴れる。


 一人殺せば、疼きが和らぎ。また一人殺せば、また疼き和らぐ。……それを続けていき、そして最後に自分と同じ絶望を浴びた、あの男を殺せば完全に傷の痛みは消え、男の目的は達成となる。


 ……男はそう信じていた。


 勿論、復讐を成し遂げたところで何かが返ってくる訳もない。友も、妻も、娘も、男が失った大切なものは消失したままだ。時間は戻ってはくれない。


 だからこそ、男は復讐を胸に誓い、今この時大地を蹴り出して進む。


 この復讐を成さなければならない。これは自身のけじめだ。亡くした者たちへと贈る花であり、何一つとして守ることのできなかった弱き自分を殺すための戦い。


 男は獣のように駆けていく。男を止めるものはいない。


 風も、木々も、大地も、花も、水も、太陽も、空も、神ですら男を止めることはせず、むしろ男が成そうとしていることに力を貸すように、男は加速していく。


 進め、貴様が成すべきことはもう既にすぐ、そこだぞ。そう、告げるように、森の出口に暖かい光が差し込み、男はそこへ飛び込んだ。


 ―――あの日、全てを奪った男をこの手で殺す。


 飛び出てきた男が視界に移ったのは、自分の憎しみと怒りで這い出る黒い感情とは全く異なる異界の地のようだ。


 喉かなで暖かな太陽の光を差し、風を運んでゆらゆらと揺れる綺麗な花畑の丘。休日の妻と娘と三人でピクニックに出掛けた日の事を頭の片隅に思い出したが、それもすぐに忘却の彼方へと飛んでしまう。


(見つけた!)


 視界に入ったのは花園の丘に一人佇む者。


 その存在は綺麗で喉かな花園には似つかわしかない、酷く汚い恰好をしていた。


 背丈はまだ低く、子供だということが一目で分かる。薄汚れた所々破れたぶかぶかのローブを身につけて、深くフードを被って顔を隠している。腰には魔法使いが駆使する杖のようにも見える細剣(レイピア)存在し、それで相手が魔法剣士であるということが分かる。


 それだけ見れば男はすぐさま、槍を握り締めてその者へと襲い掛かる。


 遅まきにローブは男の奇襲に気づいて、咄嗟に杖状の細剣を抜いて応戦しようとする。金属の音が花園の丘に響き渡り、二人の足元に咲いた花の花びらが飛ぶ。


「くぅ……!!」


 重い一撃を受けたローブはフードの下から顔を歪ませる。男はフン、と槍を回転させて剣を滑り込ませて弾き出す。


 呆気なく剣は彼方に飛んでいき、ローブの手元は空いてしまう動揺が奔るローブに、容赦ない薙ぎ払いの一撃を男が放つ。


 もろ腹にその一撃が入り、その衝撃のまま飛んでいき、地面に四、五転する。


 四つん這いの態勢になると、身が飛びでてくるような苦しみがローブに襲い、地面に嗚咽を吐き出す。ここ数日、ろくに食べていなかったおかげというべきか、ローブが出るのは唾と涎だけで食道からは何一つ出ては来ない。


 ローブが苦しそうにしている姿は男の目に当然の報いだと言わんばかりに雹のように冷たいものだった。


 ローブに近づき、蹴り飛ばして四つん這いから仰向けの態勢に変えさせて、踏みつける。


 ケホッ、とさらに吐き出して咽るローブ。苦しむ姿など対して興味ない調子で槍を首元に置いて、おい、と男は言う。


「一つだけ貴様に訊ねる。奴は……お前たちのボスは今、どこにいる」


「………知り、ません」


 嗚咽混じりの返答で返すと、男はもう一度強くローブを踏みつけた。


「もう一度だけ聞く。何処にいる」


「………しり、ませ、ん。……私はあの人の下を去ったから。……本当に知りません」


「…………」


 ローブがもう一度同じ回答を返す。ローブの様子から見て、言っていることは嘘ではないということ分かった。これ以上コイツには用はない。―――殺してしまおう。


 そう、即決して槍をローブの喉仏へと近づけて、あと薄皮一枚というところでローブが口にする。


「あなたも、……あの人の事を恨んでいるんですね」


「……お前には関係ない」


 悲しげな声色で問いかけてくるローブに対し、男は吐き捨てる。


 恨んでいるだと? そんな生易しい感情などとっくの昔に過ぎさってしまっている。男にあるのは見つけ次第ただ容赦なく殺すという殺戮意欲のみ。残酷な感情のみが彼を突き動かす。しかし、頭の中はクリアだ。怒りのままでは獣じみた反射でしか行動できないが、怒りの沸点を通り越すことで逆にクールさが目覚めていた。


 このローブを虐げたことで、高ぶった感情に落ち着きが訪れる。何も復讐心は消えたわけではない。むしろ逆だ。さらに復讐心は高ぶったのだ。まずは一人を達成し、次の標的への意欲を燃やすからだ。


 が、それでもまず一人目を追い詰めたことはやはり大きく、今まであったわだかまりが薄れて気が晴れるもの。ズキズキとしていた顔の傷もほんの少しだけ治まりを覚えるかのように和らいだ気がした。


 怒りだけではいけない。如何なる時ですら冷静かつ冷徹な判断を下せる、理性も必要だ。この復讐ではよかったが、これから先にそれも必要となるだろう。


 そんな事を思いながら、とどめの一撃としてローブの首を撥ねようとした時、槍に土で汚れた手が触れていた。ローブの手だった。


「………これを、どけてください。……私は、ここで、こんなところで、死ぬわけにいかないんです。……あの人を止めるために」


 ローブは槍の刃に手を食い込ませる。当然、肌は斬れて血が出てくるが、槍自体はピタリとして動かない。当然だ。こんな小柄で弱って倒れている者が、いく度の修羅場を潜り抜けた戦士にして復讐に身を焦がして通常以上に力を発揮しているものに叶うはずもない。


 それにローブは。


「無駄だ、お前みたいな小娘が力で俺に敵うわけがないだろう」


 全身を覆うぶかぶかのローブで姿はまだはっきりとしたものではないが、声と殴った感触からして少女だということが分かるし、そもそも男は相手が少女だということは最初から知っていた。復讐の相手なのだからそれくらいは知っていて当然だ。


 ハッキリと、お前には無理だ、と告げるが、少女はその言葉には従わず、むしろ更に力を込めては槍に抵抗してみせようとする。槍がさらに手に食い込んで血が出てこようと関係なく、抗う。


「……私が、あの人を止めないと! あの人を殺さないと! やっと! ……ようやく、その手掛かりを掴んだんです!」


 涙を零しながらもそう必死な抵抗をする少女。


「今この瞬間あなたに私は殺されるわけにはいかない。あなたにあの人を殺させない!」


 ―――それをやるべきなのは私の役割なんです。


 そこまでの話を聞き、男は少女の事情におおよその検討が付いた。少女が言う『あの人』こと、男が最も復讐するべき憎き相手。少女は奴との間で何かしらの理由があって仲たがいし、今現在敵対関係にあるようだった。


 だからどうした、と男は思った。


 どんな理由があれ、こいつらは俺にとっては仇でしかない。この少女がどんな願いを持ち、どんな想いでいるのか、奴に対してどうしたいかなんて男には関係ない。


 自身の目的こそが優先だ。


 一時の感傷を終えて槍を掴んでいた手を振り払う。血が飛び散り、少女の小さな悲鳴を上げる。男は槍を下ろして少女の体を貫こうとする。


「…………」


 しかし、男の動きは止まった。少女が深々と被っていたフードの隙間から、涙目の少女の表情が覗き見えてしまい、思わず止まってしまった。


 涙を零しながらも、訴えかけてくる幼いながらも強い瞳。


(マイ……!)


 その顔は男が亡くした娘の姿と被ってしまったのだ。


 少女の顔が娘の顔と瓜二つという訳でもない。年齢も身長もまだ自分の娘の方が幼い。十にも満たない、……満ちるための月日の時間を奪われ、永遠に失ってしまった最愛の我が子、と。


(そんなはずはない!)


 ギィッ、と強く歯を噛みしめて、自身が生み出した幻想を振り払う。消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ、消えろ!


 コイツらが、マイの、アイツらの、未来を奪ったんだぞ! そんな奴が似ているわけがない!


 そう自分に言い聞かせて、男は必死に愛娘と被ってしまう像を消そうとするも、それは消えてはくれない。振り払おうとしても、その影は強く似せていってしまう。


 違うこれはマイじゃない殺してしまえ簡単だこのまま槍を突き刺してしまえばすぐに終わるんだ難しいことではないさっさと殺れこのあとも控えているんだこれはマイではない全く似ても似つかない別人だ迷う必要もない躊躇うなおいどうしたこいつらを皆殺しにするって復讐するって決めたんだろ殺せよ敵はこいつだけじゃないんだ本命は先にいるこいつが始まりの合図なんだ戦場でも何人ものの人間殺してきたんじゃないか今更少女一人殺すことくらいわけないだろ握っている槍を真っ直ぐ突き刺すなり振り下ろすなりすればいいだけのことじゃないかこれはマイではない殺せ俺の可愛い愛するマイじゃないんだ殺せもう二度抱きしめてあげることも頭を撫でてあげることもできないマイじゃない殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ、殺せ!!


 ―――お父さん


「……ッ! クソがあぁ!!」


 激怒して男は槍を投げ捨てた。そのまま崩れ落ちて、大人気もなく泣きじゃくりながら何度も、何度も地面を殴り続ける。


 殺せない。あれほど憎かった相手が目の前にいて、すぐ殺せる状態だったのに、その一歩の躊躇いがある。


 非情に徹することにできないわけじゃない。……できないわけではないんだ!


 しかし、しかし! どうしても我が子と重ねてしまうのだ、もう二度と触れ合うことができない我が愛し子と。


 それがなぜなのか男には分からなかった。


 憎い、自分の感傷(弱さ)が憎くって仕方がない。


「う、うううううううぅうぅぅぅぅーーーーーー!!!」


 獣の呻き声のような唸りを上げ、自身を呪う男。その時、ポン、と肩に触れるものを感じた。それは少女の手だった。槍を掴んで肌が切れて赤くなった手。


 そんな手でありながらも、その上自分を殺そうとした男に対してでも、男が苦しんでいる様子でいたがゆえに手を差し伸べたのだ。


 しかし、男は敵に情けをかけられたと思い、プライドが瞬時に反応して「触れるな!」と強引にその手を振り払う。


 少女は苦痛そうな顔をし、男は激怒した顔で叫ぶ。


「殺してやる、………殺してやる! 殺して……!」


 苦しそうに、そう呪念のように繰り返し叫ぶ男だったが、その身体は生まれたばかりの小鹿のように震えているだけで、少女に襲い掛かるどころか動く気配はない。


 少女のフードを完全に取れ、顔が完全に晒した状態になっていた。痩せ細った顔にあまり正気を感じさせない瞳。手入れがいき届いてない、薄寄れて色の濃さがあるぼさぼさの銀色の髪をしていた。その顔を見てさらに男は苦しむ。


 やはり似ていない。……似ていないはずなのに………何故か似ていると思えてしまうのは何故なんだ。どうして俺は、この少女をマイと重ねてしまうんだ!


 自身の心の迷いに振り切れないで、ただ、目の前の少女を強く睨みつける。その表情を見て少女は目を瞑るように視線を落とした。


「……すいません。………今、あなたに殺されるわけにはいかないんです………。でも、あの人を止めることができたなら、……私を殺しても構いません。……それであなたの気が晴れるというならば」


 そう言って、立ち去ろうとする少女。これ以上、自分がいても逆に男を苦しめるだけだと思ったのか。どういう事業なのか分からなかったが、今、彼は自分の姿を見て困惑していることだけ確かだと、少女は思った。


 足を踏み出して、男の前から立ち去ろうとする。


 男はこれまでとは違う、困惑の色が上がった。


 俺は見逃されたのか? ……違う、追い詰めていたのは俺で、あと一歩のところまであったのは俺だったはず。見逃す、見逃さない、の主導権は俺にあったはずだ。


 それに……自分を殺しても構わないだって? 奴を倒した後で。……自分の手で本命の仇を撃たずに。


 男の中で新たな疑問と葛藤が生まれ、時間が止まった。そして、すぐにその時間は動き出す。


 待て、と怒声の停止の言葉がかかり、少女は相変わらず虚空を見つめるような酷い顔をした瞳が男へと振り返る。


「………お前を殺す……、必ず、お前をこの手で殺す!」


「……………」


「でも、それは……今じゃない! ………最後だ、最後に、お前を必ず殺す! お前たち全員殺して、……あいつも殺して。……お前を殺す!!」


「……………」


「お前が『アイツ』と戦うというなら、それに勝算があるというなら、俺はそれに必要なコマに徹してやる! これはお前を縛る鎖だ、逃げ道など一切なしの強固な鎖…………どこまでもどこまでも付いていき、地の果てだろうとお前を逃がさない」


「……………」


「いいか、覚悟しろ」


 真っ赤になった瞳で少女を睨みつける男。それが今できる最大限の譲渡、自分の収納が付かない感情のための最大限の譲渡だった。


 少女は男の突然の申し出に戸惑いを覚えた表情をし、しかし、男の向けてくる真剣な眼差しに、少女も覚悟を決めたように頷いた。


「はい、……どうか私を殺してください」


 悲壮を漂わせた顔で、そう答えて首を振った。



× × ×



 何が起こったのか分からなかった。


 目を覚ますと、見知らぬ場所に倒れていて、隣では同じように倒れて意識を失っている友人の雨崎君の姿が目に入る。


「……………」


 すぐに冷たい石畳の床から体を起こし上げて、ゆっくりと両手を上げる。ピキピキと肩から背中にひび割れのような音を奏でる。石畳の床に眠っていたせいもあってか、身体にだいぶコリがあるようだった。


 起き上がって僕は、目が覚めたばかりだというのに構わず、もう一度目を瞑って、現状のことをよく思い出してみる。


 五月の連休。前々から考えていた雨崎君に野球を全くやらないゲームにして隠れた名作たる“パワプロクンポケット”こと通称“パワポケ”をプレイさせてあげようと思い、彼の家に遊びに行き、もう既に僕の話と幾つか見た攻略動画だけでお腹いっぱいの状態の彼に無理矢理3DDSを押し付けて、確率を変動させる超能力者にしてメインヒロイン、その上彼の好きな妹属性を持つ《天月さやか》ルートをプレイさせていた。


 本当は彼の同じ名字かつ下の名前も似たような名前でもあるキャラ、《雨崎千羽矢》ルートのプレイをさせてあげようかと思ったが、そちらについては前もって攻略動画で見せていたのでそれで十分に満足しているらしく、本人もやるならせめて見ていないキャラを攻略したと言われたので、それもそうかと納得してソフトを入れ変えて彼に渡した。


 ……個人的に千羽矢ルートはパワポケについて何も知らない人に紹介するときにはこの彼女一人を見れば、ひとまずパワポケの世界観や、内容の殆どの要素が詰まっていると思ってもらっていい、オススメキャラだ。


 パワポケの彼女攻略動画で二パートに分かれており、Aパートの内容を観ると、まるで一昔のケータイ小説とか少女漫画のような、病に侵された彼女との刹那の恋物語を語っては、最後に深いことが書かれたエピローグを見ては、胸に何とも言えない、胸が締め付けられるような虚無感を覚える。


 その後に、「この後の展開に一体何が残っているんだ?」と疑問を思い浮かべながらも好奇心でBパートを観ると、ヒロインを病気から助かる方法はないのか、と考えた主人公がヒロインにある手術を受けさせることで、ヒロインは覚醒し、マジもんの化物になっては、ジョジョの奇妙な冒険第七部に出てくるウェザー・リポートみたいな能力者との超能力バトルを勃発させたり、主人公はヒロインと共に命がけの逃亡劇だったりと「なんか話が変わっているぞ!! 学園都市にでも移動したのか!?」と突っ込みが入れられるほど面白い話(カオスシナリオ)になっているのだ。これは野球じゃない。


 そして、雨崎君がプレイしているさやかシナリオもパワポケシリーズの最終章として書き上げられているため、これまたぶっ壊れた(カオス)な展開になっている。


 なんだかんだ文句を言いつつもプレイを始めた彼は時折、「何故、この二等身キャラでこんな本気シナリオで書かれているんだ? 可笑しいだろ」「毎回思うけど、これは俺の知っている野球ゲームじゃない」「おい、この子ヤバイぞ! 痛可愛い!」と訝しげにかつ興奮しつつも本気の疑問口調で訊ねてくるが、それらについてはこのゲームの最大の謎であり、最大の売りであるのだからしょうがない。本当にこれは野球ゲームのジャンルではない。野球バラエティなのだから。


 と、ここまではいい、僕の記憶は正常だ。異常なのはパワポケのシナリオだけ。問題はその後だ。


 最後の選択肢をミスって「でも野球に勝てば問題ないだろ?」とパワポケ特有のトラップに見事引っ掛かって勝利してしまった雨崎君は、泣く泣く彼女がこん睡状態になり、主人公と永遠に怪物たちと戦い続ける、という夢でしか生きられない、というパワポケでは優しい方のバッドエンドを迎えてしまったことに動揺し驚愕している雨崎君に対して悟っているときだった。


 ガタガタ、ガタガタ!!


 何かが揺れるような大きな音が聴こえてきた。


 咄嗟にこれはここ数年、あちらこちらで大きな被害を起こしてきた災害たる地震だと思った、僕と雨崎君は身構える(ビビってただ突っ立ていただけ。大変危険)が、その振動は地震などでなく。どちらかというと家の中で何かが暴れているような気配だった。


 二階にいた僕たちは特に暴れるようなことは何も起こしていない。振動の発現地からして原因としては明らかに下の階の方だった。


 ガタガタ、と強い物が揺れる音。やけに不安にさせる不穏な音が家の中に反響する。


 両親は共働きであり、一緒に暮らしていた祖父母も中学時代にぽっくりと逝かれ、隠し子がいない限りは正真正銘一人っ子である彼の家には今現在、僕たち二人しかいないという事実。


 察しのいい僕らすぐにテレパシーでも通じ合ったかのように頭にあるワードが過ぎた。


 ドロボーさんか、幽霊さんかのどちらだと。


 高校二年生で田舎系オタクである僕らなので、都会っ子の引きこもりより比べると体力には自信があるし、ドロボーさんの一人くらいならば何とか取り押さえられるじゃないのかと考えて、彼は押入れから中学の頃に買ったと言うなかなか高給そうな木刀を一本僕に渡して、僕ら下の階に足を忍ばせて降りていく。


 ちなみに彼は何も持っていない。木刀は一本だけで彼の部屋に武器になりそうなものはなかったからだ。いや、流石に文房具立てを見たときに鉛筆やシャーペンといった使い方次第では尖った凶器として相応しい殺傷物はあったが、漫画やアニメではないんだし、色々な意味で一般人としてそこまで道を捨てたヤバイ奴らではない僕らとしては無いと判断。さらに殺傷力が高そうなハサミやカッター、彫刻刀などもあったがこちらも理由を説明するまでもなく却下。


 他にないのかと押し入れやタンスとかの中を捜索しようとしたが、音がドンドン! ヤバ気な感じに響いていたので、こちらもそれに比例して胸もドキドキと高鳴って興奮状態。


 普通なら隠れたり、逃げ出そうと考えて怯えそうなものを若干ハイになって恐怖を圧し殺すことでこれまでの人生を歩んできた僕は一先ず木刀だけでも構わないと考えて部屋を出る。


 客である僕が進んだ以上、この家の住人たる雨崎も恐怖心を逆に勇気に変えてついてくる。


 気分はホラーやゾンビ、パニック系のゲームキャラになりきって慎重に進んでいき、鉢合えば殺し殺される、バイオレンスかつシリアス展開! たぶん多くの人はバイオハザードをイメージするだろうが、僕の場合はプレイも映画も見たことがないチキン野郎なので同じジャンルたる僕がやり込んだパワポケ屈指のパニックホラー系RPG“怪奇ハタ人間”編。


 裏サクセスを選ぶとDSの上画面にタイトル、下画面には追い詰められた主人公が金属バッドを握られているという大変シリアス絵。だが、実際のプレイでは武器の中には金属バッドはおろか木造バッドすらないという、本当に野球はどうした!? と、他にもツッコミどころがいっぱいなRPGだ。その上でラスボスには真の意味で恐怖するのだ、このゲームは。


 そんなパワポケで鍛えられてきた僕に握られているのは木刀。ハタ人間でもなにかと縁のある武器だ。


 合成という武器作成の際に木刀を選んで作成する度になにかと付属スキルや属性がついてくるという奇妙な運を持つ僕。この握られた木刀にも何かあるのでないのか、とハイになっているせいで完全にゲーム脳として侵食された僕のメンタルときたら今思い出すだけで大変アレなのだが……まあ気にしない。


 そもそも当たり前のように僕にこれを渡してきた雨崎君だが、本来これは持ち主であり住人として客を守る責務のある、彼が持つべきものではないのか。


 まあ、それはともかく、僕と雨崎君は音の正体を突き止めるべく一番物音の響きが大きい部屋へと神妙に進んでいく。


 部屋は雨崎君の祖父母が使っていた部屋からだった。ゆっくりと隙間を開いて中の様子を窺う。だが中には誰もおらず、とっ散らかったような様子はない。だけど、押し入れがドタバタドンドンガタガタ、と音を響かせている。


 なんだ、ネズミか何かの仕業か。そう思って、僕たちは警戒心を解いて安堵する。


 ―――今更思ったけどドロボーが一人前提で考えたけど複数いたらどうしたよ―――いや待て、まだ幽霊さんの可能性が残っているぞ! ―――まさかおじいちゃんとおばあちゃんが!?


 と、若干おふざけ半分、本気半分なことを言い合って、とりあえず遺影に合掌。その後に何かが暴れている押し入れを開ける。


 上の段には当たり前に布団などのものが存在し、下の段にはダンボールや色々な道具が仕舞われていた。


 下の段の奥の方で何かが揺れているようだったので何だろうと思った僕たちは荷物を次々と出していく。すると、奥の方から雨崎君が大きめのボーリングのボールほどの赤黒い楕円形の玉を発見した。


 それはビクビクと奇妙に揺れ動いている。脈打つような強い鼓動を高鳴らせて、今この瞬間にでも産まれてきそうな―――まるで卵。


 そう、卵だ。今にも何かが誕生せんばかりの卵があった。


 テラフォーマーズかのび太の恐竜か、二つに一つ! 僕は言う。


 明らかに他にも選択肢の幅があるだろうと思えたが、瞬時に脳裏に宿ったのがその二つだったせいで、つい勢い任せで叫んでしまった。


 それを信じたのか隣では反射的に、テラフォーマーズは勘弁! テラフォーマーズは勘弁!! と両手を強く握り、全力で神へと祈りを捧げている雨崎君の姿が。そりゃ家の中にあんな化物が誕生されたら生きていけないよね。


 そして、生誕!


 卵は割れて、中から産まれてきたのは。


「……龍」


 そう、生まれてきたのは赤黒い、血の塊を連想させるような色をした龍だった。竜ではなく龍。比翼があるトカゲタイプではなく蛇タイプ。日本人が連想しそうなタイプの龍だった。


 そういえば蛇足ってあるけど、龍には手や足を連想させる爪が存在する部分持つタイプもいるな。と僕は現実逃避なのかそんなこともふと思っていた。


 生まれたばかりの龍はトロンとした朧げな瞳で僕たちの姿を捉えては、ふわぁー、と欠伸をするように口を大きく開けて―――僕たちを呑み込んできた。


 そして、目が覚めて現状に至る。


 うむ、意味がわからない。何故、雨崎君家の祖父母の部屋の押し入れの中に卵があるのか。何故、誕生したのが龍で僕たちを呑み込んだのか。何故、その上で僕らは生きているのか。何故、パワポケは十四で終わってしまったのか、コナミの意図が全く理解できない。やはり内容の濃密性が色々とヤバかったからか。ギリギリアウトのラインを突き通してしまったからな。だけど、せめて十五まで出して欲しかった! コナミの方針と人材についてチョイスが本気でよく分からない。オマケ話によると十五では褐色ジャーナリストことミーナさんがようやく彼女候補に上がる予定だったのに。ちくしょー!


 ……えーと、なんの話だっけ? あ、そうそう龍に呑み込まれた話だ。あれって結局なんだ。


 う、うぅー、隣から唸り声が聴こえる。雨崎君も目が覚めたようだ。


「……ここは?」


「高校は猫野浜高校だよ」


「……私は?」


「うんうん、私立私立」


「……ふざけんなこら」


「ごへっ!?」


 横腹を殴られた。質問に真面目に答えたのになんて友人だ。僕は地味に痛む腹を擦るようなマネはできずに、雨崎君も同じようにゆっくりと起き上がり、手で頭を抑えながらもう一度「ここは?」と僕に訊ねてくる。


 目覚めたばかりでまだ照準があってないのか、その瞳は定まっておらず、目の前の現実を捉えていないようだった。


「知らないよ。僕も今、目覚ましたし、でも胃の中ではなさそう」


 胃の中? と寝起きの良い僕とは違うのか、雨崎君はまだ意識が混濁しており、状況理解に追いついてない。頭を掻きながら疑問気に呟いて……覚醒。


「あ、そうだ。思い出した龍が……ってどういうことだ? ここどこだ!?」


「だから知らないって、でも」


 でも、と一旦区切ってから周りを見渡しながら、これだけは言える。


「絶体絶命のピンチって子供の頃以来だよ。僕は」


「はあ? というか、なんでお前手を上げて……ん?」


 ここで彼を気付く。僕が両手を上げて降参のポーズを取っていることを、ここが、僕たちがいた雨崎君の祖父母の部屋などではなくて、冷たい石畳、石壁、石屋根と石だけで精密に重ねられて作られた、まるでラピュタのムスカ大佐がシータと話しているときに、主人公パズーが入れられた牢屋のような部屋であることを。


 そして、出入り口らしき場所から面して僕たちの正面に立って経路を塞ぎ、銀色に鈍い光を輝かせる生瀬数多の戦場を乗り越えてきた年季の入った鎧を纏った屈強な兵士たちが先端に刃物をつけて槍状にされた銃を僕らに向けられている現実に。


「え、えーと ……意味が……わからない」


「同感。だけど手を上げて降伏しよう。そうすれば気休め程度には寿命は伸びると思うよ。た……ぶん」


 言われたとおりに雨崎君は両手を上げる。その際にガシャ、と兵士たちは警戒心を高めたのか雨崎君に狙いを定めてはいつでも撃ちに抜くかのような気迫を込めた血眼で睨みつけてくる。まるで家族、恋人を、友を、大切な人を失い、その敵が目の前にいては、今すぐ射殺して復讐を果たそうとせんばかりの殺意を含んだもの。


 雨崎君はビビって目が完全に泳いでいる。


 僕はいうと、冷静のように思われるかもしれないが実際にそうではない。自分ではよく分からないけど表情変化の薄いらしく、ポーカーフェイスと周りから評されている僕であるが肝の部分まで据わっている訳ではない。内心では彼と同じ心情。


 この人たちマジ怖い。銃とか撃たれたら絶対痛いから撃たないでお願いします。想像するだけで泣きそうだ。


 先ほど、絶体絶命のピンチどうこうと言ったが、実は子供の頃に僕は誘拐されたことがあり、その時は子供だったのでマジ泣きしたのだが、泣きわめく僕にキレた犯人から「黙れ」と銃口を口の中に入れられて殺されそうになった過去がある。その時の影響のせいか僕は感情を表に出すのが苦手になった。出したら殺されるような気がしてならないのだ。


 あの時の恐怖がうっすらと蘇り、背筋にいやに冷たいものが流れるのを感じる。


 しばしの膠着状態が続いたような、あるいはほんの数秒だったのかもしれない。リアルに銃を、しかも殺意まで込みで向けられた人にとっては途轍もないくらいに精神を追い詰められる。思わず、隣の友人を全部悪いことにして自分だけ助かろうかとリアルでゲスな案が頭の中で埋め尽くすほどにだ。性悪説についての信憑性をその身をもって知った瞬間だった。


 すると兵士の集団の奥から一人、茶髪の眼鏡を掛けた男性。目は温厚そうなものだが、けれど顔に二つの大きな傷。左眼から耳元近くあり、そこからさらに口を通って右眼下まで斜めに「V」というか雑な「レ」のようにも見える、斬られた傷痕がある男が前に出てくる。他の兵士とは違い鎧など重装備でなく軽装でありながら雰囲気から兵士よりも上の階級の人間と思わせる人物。眼鏡の男はゆっくりと僕らへと近づいて来ては、「名は? 」と短く訊ねてくる。


 一度、僕たちは顔を見合わせてから状況が状況だけに下手なことができないと悟り、一先ず彼の質問に答える。


「……雨崎(あめざき)千寿(ちひろ)、……です」


夜名津(よなつ)我一(がのいち)です」


 僕たちが名乗るとリーダー格の眼鏡の男は目を細めて、睨むように雨崎君の方を見つめて「アメザキ。アメザキ……チヒロ? ………ジュカイ、……アメザキジュカイ、ではないのか」と意味深に呟く。


 え、ジュカイン? それはポケモンなのでは。と愉快なボケをかますほど命知らずの僕ではない。


 ジュカイ? 雨崎樹海? 一体誰のことを言っているんだ? そんな疑問に思っていると隣の雨崎君が「え?」と何かに気付いたように大きく目を見開いている。眼鏡の男もその呟きに反応する。それに対してなのか男も続けて問い詰めてくる。


「貴様、アメザキジュカイの関係者か?」


「え……えーと、たぶん、一応俺の……おじいちゃんです。名前が一緒なんで」


「おじいちゃん? ……つまり孫か。……っは、だからか!? いや、そっちのほうが十分にありえるのか……」


 一人でブツブツと何かを独り言のように呟き考え始めた眼鏡の男。ふと僕の方にも視線が向けられる「お前は?」と聞かれてきたからこれはもう一度名乗れ、と意味なのかと考えたけど流れ的にどちらかというと名前でなく、彼との関係性みたいなものの意味だと思い「彼の友人です」と答える。


 もう一度だけ何か考えたように呟く眼鏡の男。「巻き込まれた、……いやお供か奴隷か」などと失礼なことを言われたような気がしたがそこは流石に聞き違いか何かだと思うので、聴かなかったことにした。『人は、上にも下にも隣にも人を作らず。距離を以て接しよ。そして時に愛せよ』が、僕のモットーなのでそんな暴言は許さないのだ。聴き逃したことは本当に命拾いしたね。……僕が!


 すると自分の中で結論が何かしらついたのか「貴様たちには話がある。付いてきてもらおう」と命令、脅迫、強迫、指示のどれかで、少なくとも『お願』ではなさそうな傲慢な態度と言い草で僕たちに来るように背を向け、手でチョイチョイとジェスターをする。


 逆らったらゲームオーバーな予感がしたので、両手を上げたままの僕たちは立ち上がると、コロンコロンと何かを蹴ってしまったのか、地面に転がるような軽い音が響く。


 するとその音に過敏に反応してみせた兵士たちから『動くな! お前たち一体何をした!?』とすごい剣幕で怒鳴りつけられて、銃口の先にセットしてあるナイフを僕らに刺さんばかりのギリギリの距離で突き刺してくる。


 先端恐怖症を(わずら)った人間バリに「すいませんすいませんすいません!!」と涙目で全力で謝罪を連呼をする僕ら。


「落ち着け。……おい、それはなんだ。見たところ木剣のようだが」


 眼鏡の男が冷静に兵士たちを宥めてから僕たちの足下に落ちていた品に指して問うてくる。


 僕らが視線を下げて見るとその落ちていたもの、蹴ったものの正体はドロボー迎撃のために持ち合わせていた、あの高給そうな木刀だった。……なんでこれもあるんだ? 一緒に呑まれたのか?


「はい、一応……木刀です」


「ぼくとう……まあいい。所有者はお前のか? 一応こちらで預からせてもらう」


 僕が返答したことで僕のものだと思ったのか、そう一言を断りを入れて足下にあった木刀を拾い上げ、刀身(?)を何か確かめるようにじっくりと眺めてから皮肉げに「お前たちの武器は何かと面倒なものが多いからな」と告げる。正確にはそれは雨崎君のものだが、まあそこらへんはどうでもいいだろう。


 けれど、何だろう最後の一言は。『お前たちの武器は何かと面倒なものが多いからな』って一体何を指しているんだ?


 疑問に思いながらも射殺せんばかりの兵士たちの波の間を通り、パズーの牢屋から連行されるような形で僕たちは眼鏡の男を先頭に後をついていく。牢屋から出て、廊下のすぐ先にある階段を登っていく。


 兵士たちはついて来なかった。これで何かの拍子に背中を刺される不安はない。


「なぁ、夜名津」


 前を歩く眼鏡の男には聞こえないほどの小声で隣の雨崎君が相談してくる。


「俺たちどこに連れて行かれると思う?」


「処刑台」


「……うん、夢も希望もない現実をありがとう。なら罪状はなんだと思う?」


「君は幼女誘拐の罪、僕は殺人の罪で両方予備軍として牢屋にぶち込まれたけど、もう手っ取り早く犯罪を犯す前に今のうちに処刑しておこう、ってところかな?」


「すらすらと恐ろしいことを平気で口に出すな、俺は犯す気ねーよ! そしてお前は一体どんな闇を抱えているんだ!?」


「こう、人間関係とかが上手くいかないことから最初のうちは大丈夫大丈夫と気にしなかったんだけど、日々を過ごしていくうちに周囲との日常における微かなズレ、失敗や間違いなどの劣等感に苛まれていき、最初は小さかった心の傷が徐々に大きくなっていった結果。自分がどうしようもないやつだと思うようになって、けれど必死で前を向こうとしてもがくんだけど、上手くいかないで『結局逃げるんだ』『駄目なやつ』『本当に使えない』と自分なのか誰なのか判らない幻聴すら聴こえ始めて、毎日死にたい死にたい、と泣いて枕を濡らす毎日。けれど死ぬ勇気が持ってないからどうしていいのか分からずになんともいえない恐怖心に震えて、眠るたびにもう二度と目を覚ましませんように! と心の底から願いつつも、目が覚めたら生きているというたったそれだけ。たったそれだけで、絶望する朝。最終的な決断として皆を殺してしまえばいいと、最初は自傷用に買ったはずのカッターで」


「やめろやめろやめろ、やめろ!!リアルな闇だこれ。お前、今すぐ精神内科にいけよ! 完全に鬱じゃん!! 手遅れになる一歩手前じゃん。というか、手遅れだ!」


 全力で突っ込んでくる彼に対して冷めた目で僕は告げる。


「そうやって、突っ込むことで何かしらの笑いを取ろうとして周囲の空気を変えようとするのは、周りのため。結局のところ君は僕の傷を癒やしてくれないんだね」


「……ッ……あ、……クゥ!」


 雨崎君は「面倒くせえー」かつ「突っ込みづれー」と、他にもたぶん色々と言いたいことがあるのかもしれないが、なにから言っていいのか分からず、言葉を失って、歯切れの悪いなんともいえない微妙な表情を取る。


 すると、僕たちの話を聞こえていたのか前を歩く眼鏡の男が「おい」とこちらを振り返っていた。


 二人で喋っていたことで変に刺激を与えてしまったのか、処刑台なしで、ここで殺されるのではないかと僕らの中に委縮してしまう恐怖が襲う。


「お前、病院ならあとで連れて行ってやる。今は、その、なんだ……大人しく付いてきてくれるか? 処刑台でないことを一応断っておくぞ」


「……あ、どうも」


 ……こちらからもリアルに心配された。やだな、ただの仲の良い者同士で起こるブラックジョークなのに。


 全然問題ありませんよ。大丈夫、周囲の空気が悪くなっても僕のメンタルは比べれば良いものだから。僕のメンタルはもっと酷いから。と、笑顔で伝えることができれば空気が回復するというのに。やれやれ、無表情とは辛いものだ。


 しばしの間、重い沈黙のまま階段を上がり続ける。階段から上がり終えると広い廊下に出てそこを進んでいく。


 牢屋の冷たく狭い質素な感じに比べてこちらはどちらかと華やか雰囲気で、明るく光を反射してくれるような真っ白い壁に高い天井、赤をメインにデザインされたカーペット、青白い柱。廊下であるはずなのに、その広さは例えるなら学校の教室の壁を全部ぶち抜いて廊下と足し合わしたような、とても広い空間。


 まるで城の中にいるようだった。……『まるで』とか『ようだ』はいらないのかもしれない。たぶん完全に城の中だぞ、ここ。


 周囲を眺めていて同じことを考えたのか、黙っていた雨崎君もまた僕に話しかけてくる。


「なぁ夜名津、思ったんだけどこれってさ。信じられないんだけど、もしかして―――異世界転生じゃね?」


「…………僕も思った。この場合は異世界転移じゃないかな?」


 やっぱりか、と訝しげな、だけどどこか期待するような目になり、もじもじと興奮した感じになっている雨崎君。彼の様子を見てつい僕も同じであり、けれど少しだけ心配なことがあった。


「でも、実際はドッキリだったりして」


「なら手が込んでいるよな」


 ニヤニヤとして答える彼に僕もそれに釣られる。自分じゃあ鏡を見ない限り分からないけれど、表情変化の少ない僕でも頬が少しだけ釣り上がるような感じはする。


「俺たちってもしかして世界救ちゃうとか、商人になって一攫千金とか」


「あとダークサイトに堕ちて復讐を目的にしたり」


「それは嫌だな。でもそう考えるとマイナス面とか見えてくるよな。『冒険者はモンスター倒したりしないと儲からない』とか『王国奴らの黒い陰謀』『奴隷制度』『能力がゴミみたいでつかえない』あ、チート能力とかどうなんだろう? あれ、神とか対談したっけ? やべえ、もらってないけどどうする?」


「……えーと、あれだよ。ほら、ドラゴンボールとかドラえもんの宇宙開拓使パターンの、ここは地球と重力とかが違うから、身体能力が跳ね上がるパターン」


「便利だけど何かと地味だな。でもあれって空想科学か何かで、身体能力を見せる前に逆に重力差にやられて身体が壊れるみたいこと書いてなかったっけ?」


「僕は読んでないから分からない……けど、なんか聞いたことはあるな。……ならなんだかでチートとかない系じゃない。思考を凝らす頭脳タイプじゃない? 『はっ、これはこういう風に使えば爆弾に! 』的な。周りはチートチートだらけで、主人公はチート持ってないパターン」


「けど結局は現代兵器を開発してチートになるんだろ? ちゃんとドワーフさんは存在するかな? 俺たちのふわふわした説明でちゃんと作ってもらえるのか? お前、そのへんの知識とかある?」


「いや全然全くこれっぽっちもないけど。ふわふわした説明どころかガタガタだよ。ポケモンとパワポケの説明ぐらいしかスラスラ話せる自信はないよ」


 その後もこんな調子でしばらく間、雨崎君と熱を込めて語り合い予想ができる範囲で最悪と希望の見込みの話をしていると、先頭を歩む眼鏡の男がこちらをチラリと警戒するように覗き、聴く耳を立てていた。


 それに気づいて僕たちは静かにする。話を聞かれたことに対しての警戒心ではない。これは先生が壇上に上がったことに気づいてギャーギャーと騒いでいたのに先生の背後から『怒』と見えそうな雰囲気に飲まれて静かになるアレみたいな感じでビビったのだ。「はい、静かになる二分かかりました」とこの台詞が続きそうだがこの場合だと「お前たちの遺言はそれだけか」と言われそうだ。……逆に静かにするのはやめて、もっと喋るべきか?


 だが、こちらに気付いたことに気付いた様子で眼鏡の男は何も言わず。けれどどこか警戒したような空気を醸し出している。


 その後、話すのもやめた僕たちは無言のまま進んでいく。すると、目的の場所についたのか二人の兵士たちが守護する大きな扉の前に着く。


 兵士たちは牢屋にいた彼らほどではないが、それでも冷たい視線のまま僕らを一瞥する。できるだけ笑顔で僕らも返すが彼らますます目を細くされたので全力で目を逸らす僕ら。残念ながらチキンな僕らには兵士さんたちとはとても親しき仲にはなれそうにない。


 そんな僕らの様子に構わず、眼鏡の男はノックをする「はい、どうぞ」と声が返ってきて扉が開いて中へと。


 中も豪華な仕上がりになっており、天井にはシャンデリアにあちらこちらに飾られた外装用の装飾品の数々、中央には大きな円卓のテーブル。そして僕たちから円卓の対面の席で部屋の奥に位置づくように座っていたのは、一人の少女だ。


 銀色に薄い青が混じったような長い髪を三つ編みに捻りを入れた、上品なヘアスタイルに奇麗なエメラルドの瞳。座っていて身長は分からないがそれでも小柄だとは分かる。顔立ちの幼さっぷりから中学生くらいの年齢と思える。


 気品のあるお姫様のようにも見える彼女だけど、けれど格好がドレスではなく、軽装な鎧を纏い、それの理由も華奢な彼女に重いもの着衣し続けることができないからではないのか予想できる。


 騎士のような格好は似合っているが、年齢と釣り合ってとても戦力になるようなタイプには見えない。見た目で判断するなというが、基本的に僕は先入観バリバリで物事を決めるタイプなのでたぶん、彼女はこの場で一番地位が高い人で戦場でなく後衛で支持を出すキャリアタイプではないのか。反対に眼鏡の男は苦労に耐える中間管理職に見えるが、顔の斜めV傷跡のせいかそれなりに強そうに見える。


「コール。彼らが異界から人……たち? アメザキジュカイ様ですか? えーと、どちらが」


「いえ、彼らはどちらもアメザキジュカイではありません。アメザキジュカイの孫と名乗るアメザキチヒロと、その友のヨナツガノイチです」


 眼鏡の男がコールという名だと初めて分かった。まあ、それはいいとして。


 敬語を使ったということは、この女の子がはやはり立場としては上なのか。それに「異界の人」ということはやっぱり、ここは異世界転移なのか。


「お二人とも、席をどうぞ」


「「あ、はい」」


 言われたとおりに僕ら席に着く。


「えーと、説明してくださるんですよね? なんで俺たちがここにいるのかとか、ここはどこなのか……とか」


「もちろんです。ですがその前に自己紹介を致しましょう。私はキルレアル・ホームレス・ロード。役職としては一応、この勢力のリーダーですが、あなた方は気軽にキルとでもお呼びください。あなたがアメザキチヒロさんでしょうか?」


「あ、はい。雨崎千寿。えーと……一応、雨崎樹海の孫です」


 若干緊張気味に自己紹介をする雨崎君。ロリコンである彼は、もしかしたら彼女に見惚れていたのかもしれない。


 僕の場合だと……うーん、ギリギリないかなー。年下が駄目とかじゃなくて、年下はリアル妹とかがいるせいか妹系は好みではないのだ。第一印象だけだけど、彼女は妹キャラっぽいんだよな。年下は後輩系の方が好みで「センパイ」と尊敬されるように言われる方が好み。「お兄ちゃん」は甘えてくる感が猫のようで、うーんなんだろう。こう、……時々思いっきり蹴飛ばしたくなることがあるんだよな。なんでだろう?


 僕の趣味嗜好の性癖、好みは一先ず置いておいて。


 キルレアル=ホームレス・ロードちゃん。キルと呼んでくださいと言われたが、初対面の相手を気軽に愛称呼びはしない、キチンと礼節を持つと評判の高い僕としては、ここは名字……いやこの場合はミドルネームとかいうやつだろうか? ともかくそれらしき敬称であるはずの、その上、個人的に気になった、いや気に入った敬称としてホームレスちゃんと呼ぶことにしよう。なんせ、ホームレスなんだし。覚えやすくていい。人の名前を覚えることが苦手な僕でもこれなら覚えられる。なんせホームレスだし。うん、ホームレスホームレス。


 ホームレスちゃんが僕の方にも視線を移して「あなたは」と訊ねてくるので(先ほどコールさんが名乗ったのに。この子も僕と同じで名前を覚えられないタイプなのか。親近感が湧くな)僕も名乗る。


「僕は夜名津我一。よろしくお願いします、ホームレス様」


「いえ、様をつけなくても構いません。名前も気軽にキルとでも呼んでください」


「あ、そうですか。分かりました」


 とても気軽な気分になれそうにないので言われたとおりにホームレスで通そう。ほら僕って人見知りだから、なれるならたぶん三年は欲しいな。人間、仕事は三年目からが本番って言うし。人付き合いも仕事のうちって言うし。三段活用で人付き合いは三年目から。と、素晴らしい結論が僕の中で出たところでホームレスちゃんは話してくる。


「さて、どこから話したものでしょうか。そうですね……ではまずはあなたのお祖父様の、私たちの英雄である勇者ジュカイ様については話をしましょう」


 今から百年ほど前のことです。魔物たち統べし世界を滅ぼそうとする災厄の化身、魔王が存在しました。王国の騎士たちを中心に魔物との戦いに明け暮れる毎日。けれど、凶悪な魔物たちに人々は劣勢にかられて壊滅の危機に陥りました。けれど、そこに現れたのは異界より召喚されし勇者、ジュカイ。彼は仲間たちとともにこの世界の魔物たちを次々と倒していき、最後には魔王を倒すことに成功しました。世界の終焉の危機は無事に回避でき、勇者は元の世界へと戻って行ったのです。


 簡単に説明してくれるホームレスちゃん。けれど、その話はだいたいよくある話で、テンプレートである。そして、あとの話も大体の流れから魔王が復活した、あるいは別の何か凶悪な存在……たとえば魔神とかが存在するので倒してください。とかの類の話になるだろう。


 アニメ、ゲームのファンタジーでは定番だが、やはり主人公が自分たちになると、こう、胸に熱いものがある。


「そしてその約百年後になり、厄災魔獣が誕生して再び世界に混沌が訪れたのです」


「俺たちはその厄災魔獣を倒せばいいのか?」


 待ってました、と言わんばかりの態度で先走る雨崎君。おいおい、いくら分かっているからってそんなにがっつくなよ。気持ちはわかるけど、それじゃ『待て』のできない意地汚い犬みたいだぞ。


 内心ではクールな突っ込みを入れる僕だが、彼が言わなかったら僕が先に言っていたかもしれない台詞だ。僕の予想通りで、後者のほうか。


 そう、思っていたけれど、ホームレスちゃんは「違います」と首を振る。


 へ? 違うってどういうこと。僕たちはそれで呼ばれたんじゃないの?


 否定されてきょとんとする僕らだったがそれとは違い、ホームレスちゃんは笑みをやめ、真剣な表情となる。一人だけ座らず、執事のようにホームレスちゃんの近くに立っていたコールさんも難しい顔をする。


 急に部屋の空気がやけに重くなるのを感じた、僕らは目を合わせて『どう思う?』『分からない』とアイコンタクトで会話し、二人の言葉を待つ。


「……災厄魔獣ガルシアルヨルガは既に倒しています。……倒してもらいました。ですが問題はその先のことです。―――予言者カルロ、勇者ジュカイの仲間の一人の魔術師は勇者が去った後に彼はこう告げました」

『真なる最悪のものが現る。世界を侵す害悪であり本物の最悪が。しかしこれの存在は、我々人の罪であり罰。世界の理に背いたがゆえの最悪の誕生。けれど世界の終焉を迎えん時新たな勇者が現れる。最悪を止め、再び世界を救うだろう。だから人よ、過ちを犯しはいけない。禁忌に触れてはいけない。正しいことはできなくとも間違えることがあっても、それを触れることなかれ。それを学ばなければ、完全に二度目で理解しなくちゃいけない。三度目の救いはないのだから』


「?」


 理解できない。かろうじて理解したことをいえば二つ。一つは「新たな勇者」とつまり、雨崎君と……僕だろうか? 僕の扱いがなんかオマケ扱いに近いんだけど、そこはまあ目を瞑るとして。もう一つ「三度目の救いはない」ということはこれ以上の異世界転移はしてはいけないということだろうか?


 それに『最悪のもの』は、災厄魔獣なんたらかんたらではないのか? もう倒したって言うし。……なら、えーと、なんだ? 考えられることは、つまり。


「えーと、災厄魔獣って倒したってもしかして人じゃなくて、別の生き物ってことか? たとえば魔王が復活して『俺の世界征服を邪魔すんな』ってな感じで」


「いえ、それは……半分正解で半分間違いと言えます。魔王は復活などしておりません。人、……一応人です」


 僕が言いたかったことを雨崎君が言うと、ホームレスちゃんは顔を暗くしたまま首を横に振りつつ、最後の方は重く、どこか諦めたような何故あんな失敗をしてしまったんだろうと悔やむような、そんな嘆きの入った調子で呟かれた。


『一応、人です』。人。人間。


 ここで僕はあることを思い出した。ここに、この世界に来て目覚めたときのことだ。


 害敵を見るような殺意を込められた数多の視線。物音を立てただけで殺さんばかりに過激な反応と警戒の強い態度。取り上げられた木刀に、コールさんの意味深に呟いた『お前たちの武器は何かと面倒なものが多い』の一言。


 ん? ……『お前たち』……『たち』? いや確かに僕たちは二人組なので『たち』と複数系で呼ばれるだろうけど、……アレは本当に僕たち二人のことだったのか?


 いや違う。あの時の様子と発言からして、明らかにアレは僕たち以外の誰かを指しており、予想として有りそうなのは先人者。先代勇者でもあるはずの雨崎君のおじいちゃんこと雨崎樹海さんことなのだが……。


 何だろう。この駆り立てられるような……何ともいえない不安感は。


 胸がトクントクン、と高鳴りを上げる。異世界に転移して冒険が始まると興奮し、期待している時のとは違う。例えるならバレたくないものを隠していたのに、何かの調子でバレってしまったことで追い詰められた時の奇妙な恐怖感に似ている。


 体の底から嫌なものがこみ上げてくる。いいようのない不安感が、僕の脳内信号がヤバイと告げている。


 なんなんだ、この不安は?


 そして、彼女は告げてくる。


「彼は、災厄魔獣ガルシアルヨルガを倒したのは、貴方たちと同じ、私たちが魔獣を殲滅するために禁忌を犯してまで自らで呼んだ“救世主”と呼んでいた方。けれどそれは間違いでした。私たちは自らの手で首を締めたのです。その存在を呼びよせたことで。……彼の者の名は―――オカノハラリョウスケ。災厄魔獣を退けて後、私たちの世界を支配し始めた。異界の人間です」


 だから。


「だから、お願いします。お二人とも、私たちに力を貸してください。人類最悪の存在。救世主オカノハラリョウスケを倒してください!!」


「「ふぇ?」」


 あまりにも意外な展開に僕ら二人は変な声がハモって出る。勿論、それは彼女が僕たちに対して、『世界を救う頼み事』と予想していた展開の上に頭を下げたことに対してではない。その前の、話の内容について、にだ。


 戦うのは、魔王でも魔神でも悪魔でも魔獣でもなく―――人である。


 異世界転移した人。それってつまりは……。


 僕と同じことに結論づいたのか壊れた扇風機のように首をカクカクと回しながら強張った顔で言ってくる。


「しゅ、主人公が敵ってことか!?」


 雨崎君の一言に僕も「だよねー」と肯定する。そして、そのまま二人して頭を抱える。


「ヤバイヤバイヤバイ、ヤバイよ! この世界普通に難易度高い、高すぎる!? 」


「やっぱそうなるよな!? どう考えたって相手チート持ちなんだろ、絶対魔王よりやばいやつだって! サイコパスだって! そして初代主人公では二代目の主人公では絶対勝てない不思議な法則があるもんな、俺らってこの場合は二代目だから絶対勝てないもんな」


「その上相手は先にいるぶん、この世界について大体のことは把握しているし、欲しい人材とか完璧抑えているよ! 女の子だらけでハーレムってるよ!! 主人公補正で最強の魔法使いとか武器職人とかに現代兵器を造らせたり、商人に顔が利いたり情報通だったり、国家権力を駆使していたり。その上、あいつ等って強いくせに『石橋叩いて渡るという言葉あるが、俺の場合は石橋叩き壊して自分で作り直す』とか陰湿なことやってくるからね」


「道理であの兵士たち俺たちに警戒心マックスで殺意をぶつけてくるわけだ!! 同類と思われているわけだもんな、そりゃ警戒するよな!! やべぇよこれ! 俺っておじいちゃんのお陰で血族強い系の人って、内心安心していたけど相手は転生者で、敵って考えるとゴミのように思えてきた!! おじいちゃん! 嫌いじゃないし悪くないけど、プレゼントとかのチョイス好きだったけど! ごめん、おじいちゃんこればかしはもっと凄いものが欲しかった!!」


「バカヤロー! それだったら僕は『転生したけど、僕だけチートを持ってない』的なタイトルの巻き込まれた主人公系で君が表で頑張っている間は陰ながらいい感じの主人公として商人辺りで大成功を納めていると思ったんだよ!! 僕の希望と夢を返せ!!」


「知るか! お前は主人公って柄じゃないだろ、どっちかというと狂戦士とか、あるいは作中に一人はいる変人タイプの暴走するタイプだろ! アンダードッグス効果で人気投票の時は無駄に高いタイプだろ!!」


「その理屈ならサブエピソード時の主人公は僕じゃないか!!」


「あ、本当だ。それならメインエピソードは俺が主人公だ! やったね! ってなるかバカ!! 結局は敵の難易度がたっけーのは変わんねーし!! 勝てる気全くしねーし!! 死ねってんだし!!」


 勝てるかー!! と二人して絶叫する。


 史上最悪と考えられるボスキャラ相手に完全に絶望し、恐怖して髪の毛が抜けるのでないかというくらいに全力で頭を掻きむしっては「あああぁぁぁーーー!!!」 とヤバイ薬を使いこんで、精神崩壊まで陥ったヤバイ奴っぷりに乱れる僕たちだった。


夜名津(よなつ)我一(がのいち)

主人公。語り部。パワポケ厨の変人。木刀には奇妙な縁がある。千寿とはパワポケキャラに出てくる雨崎千羽矢と名前が似ていたから友達になった。千寿に巻き込まれる形で転移された。周囲曰く、何処か恐ろしい奴。


雨崎(あめざき)千寿(ちひろ)

主人公。ロリコンの変態。元世界を救った勇者である雨崎樹海の孫であり、世界を救うため勇者として異世界に転移された。我一とは友達と思っているが、簡単に人を殺す奴、と恐怖心から敵に回したくないと危機感から友人になった経緯がある。

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