第5話:アイテム改良とスキル訓練
「さて、ナヴィ。落ち着いた?」
「はい。お気遣いありがとうございます、ご主人様。」
そう言うとナヴィは、俺の隣にストンと座った。
「どうした?」
「いえ。特に深い意味はありません。ただ、クエストを受注したので、ステータスや装備、討伐対象を確認しておいた方が良いのではないかと思いまして。」
「ああ、そりゃそうだな。じゃ、出すか。開示!」
俺がそう唱えると、シュンッという音と共に俺のステータスが現れた。
桐川疾風
種族:人間
性別:男
年齢:16歳
Lv:4
職業:アイテムコレクター
戦闘スキル:【棒術Lv1】
生活スキル:無し
魔術スキル:無し
特殊スキル:【鑑定眼Lv1】
「レベルUP以外には変化なしか。」
俺は次にアイテムメモリーを開く。
アイテムメモリー
種別アイテム所持数:12/??????
合計アイテム所持個数:15
所持アイテム:普通級:13(【ガラスのコップ】×3、など)
希少級:1(【リグナムバイダの枝】)
白銀級:1(【トトナッツの実】)
黄金級:‐‐‐‐‐‐
伝説級:‐‐‐‐‐‐
銀河級:‐‐‐‐‐‐
神話級:‐‐‐‐‐‐
「普通級多っ……」
「多い分には良いのではないでしょうか? 【鉄の剣】や【革の鎧】などの戦闘用装備も普通級ですし。」
「まあ、そうだけど……あ、そう言えばさ。」
「はい。何でしょう?」
「フレイムレオだっけ? その討伐クエスト受注したけど、あれってどんなモンスターなんだ?」
「ナヴィが説明するよりも、図鑑をご覧になられた方が良く分かりますよ。」
ナヴィに言われて、俺は【平原魔獣図鑑】を貰っていたことを思い出した。召喚し、フレイムレオのページを開けると、そこにはこう書いてあった。
【フレイムレオ】 炎属性肉食モンスター
食物連鎖の頂点に君臨する肉食獣。燃えるように赤いタテガミと、1000℃を超える温度の炎を先端に灯した尾を持つ。強力な破壊力を有する爪と牙、1分程度ならばリニアモーターカーにすら引けを取らないスピードでの疾走を可能とする強靭な筋力は、草原の王者と呼ぶにふさわしい。どんな敵に出会おうとも一歩も引かず、堂々と立つその佇まいと立派な風貌は見る者を魅了し、絶対強者としての貫禄を醸し出す。しかし、性格は外見に似合わずとても温厚で、空腹時に近くを草食獣の群れが通り掛かっても、その群れに子供、年寄り、弱った者がいる場合は襲わず、それどころかその草食獣の食糧となる草を自ら摘み取り提供する程の共存精神の持ち主。普段はあまり狩りをしないが、空腹の極限状態に陥った場合は健康な個体ばかりの群れに正面切って戦いを挑み、一対多の戦闘をする。死の間際には、最後の力を振り絞って尾を持ち上げることで草が燃えるのを防ぐ。命尽きるまで高潔な精神を保つ、気高き獣である。
「何でこんなモンスターを討伐しなきゃいけないんだ? いい奴っぽいのに。」
「フレイムレオは、ごく稀に生に執着することがあるのです。すると、そうなったフレイムレオからは理性などがすべて失われ、暴走するだけの破壊の権化に成り果てるんです。」
「そんなの初心者に討伐できるのか? どう考えてもお勧めクエストじゃないよな? 失敗したら100%死ぬじゃん。」
「破壊の権化になったフレイムレオは戦略などを考えたりしませんし、死の間際ですから、普通より簡単に倒せるんです。」
「いくら硬いとはいえ、流石に【リグナムバイダの枝】じゃ無理だろ。【鉄の剣】とか【鉄の槍】もいまいち心許ないし。」
「じゃあ、改良して貰いましょう。」
「改良?」
俺は首を傾げた。枝をどうやって改良するんだ?
「冒険者ギルドで、無料で武器を改良して貰えるんです。ですから、【リグナムバイダの枝】を使える武器に改良して貰えばいいんです。改良の場合もアイテム破損扱いになりますから、【リグナムバイダの枝】がなくなる訳じゃありませんし。」
「そうか。なら、やってみるか。」
俺はそう言うと、ナヴィと再び冒険者ギルドに向かった。
「あんちゃんじゃねえか。また何か用か?」
ギルドに行くと、ヴィトルスさんが出迎えてくれた。
「はい。フレイムレオと【鉄の剣】とか【鉄の槍】とか扱いに慣れてない武器で戦うのは難しいと思ったので、改良して貰おうと思いまして。」
「改良か。だが、【鉄の剣】とかは無理だぞ。ああいうのは、所持者が使うにつれて強くなっていくタイプだからな。かと言って、【トトナッツの実】や【ガラスのコップ】の改良は流石に出来ねえし。なんか他にアイテムを持ってるのか?」
「はい。これです。」
俺はそう言って、【宝物庫】から【リグナムバイダの枝】を取り出した。
「ああ、【リグナムバイダの枝】か。これならできるぞ。よし、ちょっと待っていてくれ。」
そう言うと、ヴィトルスさんは近くに立てかけてあった斧槍で器用に【リグナムバイダの枝】を削り、槍を作り上げた。その時、脳内に声が。
【アイテム【リグナムバイダの枝】が破損しました。複製します。】
【白銀級アイテム、【リグナムバイダの槍】を入手しました。アイテムメモリーに登録します。】
「できたぜ。こんなのでどうだ?」
ヴィトルスさんは、【リグナムバイダの槍】を俺に渡してくれた。
「木製だが、リグナムバイダは硬いから折れにくい。加えてフレイムレオは刺撃系の攻撃に弱いから、これで十分戦えるぜ。」
「そうですか。でも、俺は槍を使ったことが無いんです。」
俺はちょっと不安そうに言うと、ヴィトルスさんは笑顔でこう答えた。
「だったら俺が扱い方を教えてやるよ! もちろん教授料とかは取らねえから、安心していいぜ! エドイックス一の槍使い、腕の見せ所だぜ!」
そう言うと、ヴィトルスさんは俺の腕を引いて、ギルドの地下へと向かった。
「ギルドの地下は訓練場になっている。ここで訓練ができるぜ。」
ヴィトルスさんはそう言うと。ハルバードを構えた。
「まずは、突き技の練習だ。敵がいると仮定して、こうやって突き出す。1、2、3、4、5……」
そう言ってヴィトルスさんはハルバードを突き出す。キレがある動きだ。俺もそれに倣ってやってみる。100回ほど繰り返すと、脳内でまた声が響いた。
【戦闘スキル【槍術】を入手しました。ステータスに追加します。】
【戦闘スキル【棒術】は【槍術】に統合されます。スキル【槍術】がレベルアップしました。】
「どうだ? そろそろ突きに慣れてきたんじゃないか?」
「あ、はい。スキルも得ました。」
「そうか。じゃあ、ちょっとこれを突いてみろ。」
そう言って、ヴィトルスさんは木の板を持ってきた。
「分かりました。」
俺はそう言うと、力を込めて槍を突き出す。すると、意外とあっさり木の板を貫くことができた。
「よし、扱いも様になってるし、突きは大丈夫だろ。次は回し技だ。相手の後頭部を殴打したりするときに使える。これも敵がいると仮定して、こうやって回す。1、2、3、4、5……」
ヴィトルスさんはそう言ってハルバードを振り回す。斧の刃が回るたびに唸りをあげるので、怖いことこの上ない。
「ん? どうした、あんちゃん。ほら、やってみろ。」
「はい。」
俺はそう答えると、ちょっとヴィトルスさんから距離を取ったところで槍を回してみる。これも100回ほどやると、【槍術】がレベルアップした、と声がした。
「慣れたか?」
「多分、ですけど。」
「じゃあ、これを砕いてみろ。」
そう言って、ヴィトルスさんはまた木の板を持ってくる。やってみると、これも意外とあっさり砕くことができた。
「大丈夫だな。じゃあ、最後は投げ技だ。向こうにある標的に向けて、思いっ切り投げる。」
ヴィトルスさんは10mほど先にある案山子に向けてハルバードを投げた。それは風を切る音を立てて飛び、見事案山子に突き刺さった。
「これなら遠くからでも攻撃できる。さ、やってみろ。」
「分かりました。」
俺はさっきヴィトルスさんがやっていたのを見よう見まねでやってみる。なかなかうまくいかなかったが、30回ほどやってみると、的中率が上がって来た。そして、100回ほど案山子に当たったところで、脳内で声が。
【戦闘スキル【投槍術】を入手しました。ステータスに追加します。】
【スキル習得数がノルマに達しました。Lv5にレベルアップします。】
「あ、レベルUPしました。」
「おお、そうか。」
ヴィトルスさんはそう言うと、
「クエストは常に危険と隣合わせだが、あんちゃんならできる。頑張れよ! それと、嬢ちゃんに怪我をさせるなよ!」
と言って、階段を上がって行った。
「ご主人様、お疲れ様でした。格好良かったですよ。」
「ありがとう、ナヴィ。じゃあ、明日はクエストだ。頑張ろう!」
「はい!」
それはそう答えるナヴィと手を繋ぎ、ギルドを後にしたのだった。
【疾風の現在のステータス】
桐川疾風
種族:人間
性別:男
年齢:16歳
Lv:4→5
職業:アイテムコレクター
戦闘スキル:【槍術Lv3】【投槍術Lv1】
生活スキル:無し
魔術スキル:無し
特殊スキル:【鑑定眼Lv1】
アイテムメモリー
種別アイテム所持数:13/??????
合計アイテム所持個数:16
所持アイテム:普通級:13(【ガラスのコップ】×3、など)
希少級:1(【リグナムバイダの枝】)
白銀級:2(【トトナッツの実】、【リグナムバイダの槍】)
黄金級:‐‐‐‐‐‐
伝説級:‐‐‐‐‐‐
銀河級:‐‐‐‐‐‐
神話級:‐‐‐‐‐‐