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アイテムコレクションで異世界旅 ~楽しく最強へ~  作者: 紅蓮グレン
第1章:冒険の始まり ~クラインテリート大陸~
3/8

第2話:入町とポリスセンター

「町の入り口に到着です、ご主人様。」


 ナヴィがそう言ったのは、砂浜からも見えた大きな門の前に着いた時だった。


「でかい門だな。何でこんな門があるんだ?」

「不審者や盗賊、罪人などを街に入れない為ですよ。エドイックスの通行許可証か全世界共通の通行許可証を持っている者以外は入れないように門番の警備兵が24時間365日、休みなく見張っています。」

「……ちょっと待って。俺らって通行証持ってないじゃん。」

「ステータスが怪しくないですから大丈夫ですよ。取り敢えずナヴィが誤魔化してみます。それで駄目ならステータスを開示オープンしましょう。ステータスが怪しくなければ通行許可証を発行して貰うこともできますし。」


 ナヴィの言葉に俺は安心した。


「警備兵に通行許可証を見せないで入ることはできるのか?」

「できない事は無いですが……ご主人様とナヴィの服装はこちらの世界ではかなり珍妙ですから100%止められるかと思います。」


 確かに俺の重ね着ルックとナヴィのメイド服は街中ではかなり浮くだろう。


「じゃあ、取り敢えず通ろうとしてみるか。止められるところから始めれば怪しまれにくそうだし。」


 俺はそう言って門を通ろうとする。すると案の定、


「待て、そこの人間!」


 と警備兵に呼び止められた。


「何ですか? 怪しい者じゃありませんよ。」

「そう言う奴は大抵の場合、怪しい奴だ! それに、そんな見目麗しい女性と一緒にいるのも怪しい!」


 オイッ! それは嫉妬だろ! 私情を入れんじゃねえよ! と思ったが口には出さなかった。


「ナヴィは俺のメイドです。そうだよな?」


 俺がナヴィにアイコンタクトを送りつつそう言うと、ナヴィはコクリと首肯して、


「はい。ナヴィはご主人様専用のメイドです。」


 と答えた。理解が早くて助かる。


「ふーん、ならそこを疑う必要はねえ。だが、アンタら見かけねえ顔だな。どっから来たんだ?」


 俺たちを止めた、斧槍ハルバード戦斧ウォーアックスを持ったゴツい顔の警備兵がそう聞いて来た。止められるのは想定内だったが、『どこから来た?』と質問されるとは厄介だ。こっちの世界の場所の名前なんて10個の大陸とエドイックスしか知らないし。俺がどう答えようかと思案していると、ナヴィが代わりに答えてくれた。


「南の、ナモナキという名の小島からです。」

「ナモナキ? ああ、あの辺境の南の島か。証拠はあるのか?」

「これでいいですか?」


 そう言いながらナヴィは手をサッと振り、どこからともなくヤシの実のような物を取り出した。


「【トトナッツの実】です。ナモナキの名産品ですよ。」

「うーん、証拠として認めてえところだが、これだけじゃ不十分だな。」

「なぜですか? トトナッツはナモナキの固有種のはずですが。それにここ数ヶ月、エドイックス周辺にナモナキの行商人は来ていませんよね?」

「ああ、確かにトトナッツはナモナキにしか生えてねえし、行商人も来てねえんだが、なんつうか、その、あれだ。その【トトナッツの実】、見た感じ新鮮すぎるんだよ。いくら白銀シルバー級アイテムに分類されるとはいえ、生の果物だ。鮮度は落ちるだろ。まあ、嬢ちゃんが【アイテムコレクター】なら【倉庫】の時間を止めることで鮮度を保てるからまた別だが、メイドだからな……」

「そういう理由でしたら、この実は十分証拠になります。ご主人様はアイテムコレクターですから。」

「何? 本当か、あんちゃん?」


 ゴツいガチムチ警備兵は、めっちゃ怖い顔で俺を睨んだ。眉間に何本も皺を寄せている。こちらを疑い、訝しんでいる……というより、睥睨されている感じがする。威圧感が半端ない。


「そんな睨まないでください。ナヴィは嘘を言ってませんから。俺はアイテムコレクターです。」

「証拠は?」


 この警備兵、随分証拠にこだわるな。まあ、街に不審者が入らないようにするのが仕事の兵士なら当たり前かもしれないけど。


「ステータスでいいですか?」

「ああ。ステータスは偽装できねえからな。」


 そう言われたので俺はステータスを開示オープンした。


桐川疾風


種族:人間

性別:男

年齢:16歳

Lv:2

職業:アイテムコレクター

戦闘スキル:【棒術Lv1】

生活スキル:無し

魔術スキル:無し

特殊スキル:【鑑定眼Lv1】


「これでいいですか?」

「おう。あんちゃんはアイテムコレクターで間違いなし。疑って悪かったな。職業柄、まず疑うのが癖になっちまっててよ……」

「いえ、分かって頂ければいいですよ。」

「そう言ってもらえると救われるぜ。ところで、通行許可証はどうする? 発行してえならここで発行できるぜ。」

「じゃあ、是非お願いします。」

「了解だ。念の為、嬢ちゃんもステータスを開いてもらえるか?」

「畏まりました。ご主人様、これを持っていて頂けますか?」


 ナヴィはそう言って、俺に【トトナッツの実】なるアイテムを差し出してきた。


「ああ、別にいいよ。」

「ありがとうございます。では、開示オープン!」


ナヴィ


種族:人間

性別:女

年齢:14歳

Lv:2

職業:メイド(桐川疾風の専属従者)

戦闘スキル:無し

生活スキル:【解説能力Lv1】

魔術スキル:無し

特殊スキル:【魅了Lv1】


「うぇ?」


 ナヴィのステータスを見て、俺は素っ頓狂な声を上げてしまった。


「どうした、あんちゃん。急に死にかけたウシガエルみてえな声出して。」

「いえ、何でもないです。気にしないでください。あとナヴィ、水貰える?」

「あ、はい。畏まりました。」


 そう言って、ナヴィはまたガラスのコップに入った純水を出してくれた。


「どうぞ、ご主人様。」

「ありがとう。」

「あんちゃん、無理は身体に毒だぜ。どうしても体調が回復しねえようなら病院に行けよ。」


 ガチムチ警備兵は心配そうにこちらを見ながらも、巨大なハルバードを器用に操り、手の平より小さな木のカードに文字を刻む。そして、こちらに差し出した。


「ほい、これが世界共通の通行許可証だ。こっちがあんちゃんので、こっちが嬢ちゃんの。これを見せれば、世界のどの国にでも入れるぜ。」

「あ、ありがとうございます。」


 そのカードには、俺たちの名前と職業が飾り文字で刻まれている上、縁の部分に綺麗な装飾が施されていた。何の変哲もないただの木の板を一分もかけずに、しかも巨大なハルバードでこのクオリティに仕上げるとは……この警備兵はただものではない。敵に回すのは危険だ、と俺の生存本能が告げた。


「なに、礼には及ばねえ。あ、そういや自己紹介をしてなかったな。俺はヴィトルス・ドルガという。エドイックス一の槍使いだ!」


 やっぱり敵に回したら冗談抜きで命の終幕が訪れる系の人だった。仲良くしておこう。俺はそう思いながら門をくぐり、エドイックスに入った。すると、俺の脳内にまたあの声が。


普通ノーマル級アイテム、【ガラスのコップ】2個目を入手しました。アイテムメモリーに追加記録します。】

普通ノーマル級アイテム、【世界共通通行許可証】を入手しました。アイテムメモリーに登録します。】

白銀シルバー級アイテム、【トトナッツの実】を入手しました。アイテムメモリーに登録します。】


「この通行許可証もアイテムなのか……鑑定しとこう。」


 俺はそう呟き、鑑定眼を発動。


【世界共通通行許可証】 レアリティ:☆☆

普通ノーマル級アイテム。コレクトワールドのあらゆる国に入ることが出来る通行許可証。


【トトナッツの実】 レアリティ:☆☆☆☆☆☆

白銀シルバー級アイテム。南の島国、ナモナキの固有種であるトトナッツという木の実。果肉は甘く歯応えがあり、少々高価ではあるが需要はある。


「よし、データは覚えた。【宝物庫】!」


 俺は入手した2種のアイテムのデータを見終えると、宝物庫にそれらを放り込んだ。そして、【消滅シャットダウン】と唱えて入り口を閉じると、ナヴィの方に向き直った。


「ナヴィ。」

「はい、何ですか?ご主人様。」

「ナヴィって、俺より年下だったのか?」

「はい。ステータスに偽りはありません。ナヴィは14歳です。年頃の女の子です。人間界なら中学生です。きゃぴっ☆」


 ……取り敢えず、『きゃぴっ☆』に関しては無視して俺は会話を続けた。


「じゃあさ、なんであんなに説明が分かりやすいの?」

「それは、ナヴィの生活スキル、【解説能力】の効果です。」

「そうか。じゃあ、そのスキルの説明を頼む。」


 そう言うと、ナヴィは目を輝かせて説明を始めた。


「畏まりました。生活スキルに分類される【解説能力】は、知っているものに関する解説の能力が飛躍的に上昇するスキルです。このスキルの取得条件は不明ですが、ご主人様が所持なさる必要はないかと思われます。」

「何で?」

「ご主人様は既に超高度な話術やディベート能力をお持ちだからです。それに、【鑑定眼】を発動させれば大抵の情報は分かりますから。」

「ははあ、成程。じゃあ、次の質問。なんでナヴィは語尾に『きゃぴっ☆』って付けるんだ?」


 俺がこう聞くと、ナヴィはフリーズした。


「ナヴィ? おーい、戻ってこい!」

「…………」

「固まるな!」

「…………」

「仕方ない。無理矢理起こすぞ。恨むなよ。」


 俺はそう言うと、アイテムメモリーを開いた。


アイテムメモリー


種別アイテム所持数:4/??????

合計アイテム所持個数:5

所持アイテム:普通ノーマル級:3(【ガラスのコップ】×2、【世界共通通行許可証】)

       希少レア級:1(【リグナムバイダの枝】)

       白銀シルバー級:1(【トトナッツの実】)

       黄金ゴールド級:‐‐‐‐‐‐

       伝説レジェンド級:‐‐‐‐‐‐

       銀河ギャラクシー級:‐‐‐‐‐‐

       神話ミソロジー級:‐‐‐‐‐‐


 俺はその中から希少レア級アイテム、【リグナムバイダの枝】を選択。すると、右手にキラキラと光の粒子が集まり、その中から【リグナムバイダの枝】が出てきた。


「痛いかもしれないけど、我慢してくれ。」


 俺はそう呟き、枝をナヴィの頭に向けて振り下ろした。


「ヒギャッ?」


 ナヴィは変な声を上げた。


「気が付いたか、ナヴィ?」

「あれ? ご主人様?あ、申し訳ありません。ちょっとビックリしちゃったので、固まってしまいました。」

「いや、良い。それより、質問に答えて。」

「畏まりました。ナヴィが語尾に『きゃぴっ☆』を付ける理由でしたよね? それは、ご主人様がお好みになるかと思ってです。言わないことも可能ですので、鬱陶しいならば言いませんが。」

「いや、構わない。寧ろ続けて欲しい。」


 そう言うとナヴィは顔をほころばせた。


「畏まりました、ご主人様。きゃぴっ☆」

「ナヴィ、お前結構『きゃぴっ☆』って言うそれ、気に入ってるだろ? 俺的にもそういうのは好きだけど、毎回毎回は言うなよ?」

「それは承知しております。」

「んじゃ、最後の質問。ポリスセンターってどこ?」

「ここから南東に150m程です。ご案内致しましょうか?」

「じゃあ頼むよ。よろしく。」

「畏まりました。こちらです。」


 ナヴィは先立って歩き始めた。



「ここがポリスセンターです。」


 ナヴィに案内されて着いたのは、日本でいう『THE 交番』だった。


「これがポリスセンター?」

「はい。ここは日本の交番とほぼ同じ役割を担っており、落とし物の持ち主探しから犯罪の調査、犯罪者の捕縛もしています。」

「ふーん。そういう所は一致しているのか。」

「その通りです。」


 ナヴィはそう言うと、閉まっていた扉を開けた。


「すみません!」

「はい。何かありましたか?」


 ナヴィが声をかけると、奥から警棒を持った正しく『警官』と呼ぶのに相応しい風貌の男が出てきた。但し、銀色のオオカミのような耳が生えている。


「ナヴィ、対人でも鑑定眼って使える?」

「はい。ステータスの全てを見ることが可能です。」

「そうか。んじゃ、鑑定。」


 俺は警官にバレないように、こっそりと鑑定眼を発動させた。しかし……


『スキル【鑑定眼】の効果がスキル【隠蔽】によって妨害されました。』


 と無機質な声が告げた。警官が俺を睨む。どうやらバレたようだ。


「あなた、今私のステータスを覗き見ようとしましたよね?」

「すみません。気になってしまうとつい知りたくなってしまうんです。」

「ふむ……知りたくなる、ですか……何か少し怪しいような……」


 ヤバい。怪しまれている。どうにか誤魔化さないと……と俺が思っていると、ナヴィが一歩前に進み出た。


「ナヴィのご主人様を理由も無しに侮辱するのは許しませんよ!」


 ナヴィがキレた。警官が驚いたように固まってしまっている。勿論俺だって驚いたけど。しかし、そんな周りを気にしないようにナヴィは続ける。


「ご主人様は素晴らしいお方です! ナヴィのことを信頼してくれて、ナヴィのことをただの従者では無く大切な仲間として見てくれています! それに、何にでも好奇心を持つのは悪い事ではないはずです! 確かに盗み見ることは良くないことかもしれませんが、ただそれだけで罪の無い人を疑うなんて、あなたは警官の風上にも置けません!」


 もの凄い剣幕で俺を擁護してくれている。警官はポカーンとした顔をしていたが、ナヴィに言い返した。


「し、しかし、怪しい者を取り調べるのは、本官の責務であります故、必要と思われることは調査する権限や義務も……」


 言い訳を並べようとした警官をナヴィは眦を釣り上げて睨んだ。


「だったらさっさと調べればいいじゃないですか! ご主人様、この不届きな愚物に絶望を与えてやってください。地の底に沈むような絶望を!」


 なんかナヴィがいつもと違う。物騒な言葉を並べてフーフーと息を荒くして……決闘が避けられない状況で興奮している猫みたいだ。これも『きゃぴっ☆』の時と違ってちょっと可愛いかも。


「ご主人様! 早く!」


 ナヴィの刺々しい声で俺は現実に引き戻された。


「いや、でも絶望って?」

「ステータスです! それを開けばいいんですよ!」

「ああ、分かった。開示オープン!」


 俺は何が何だかわからなかったが、取り敢えずステータスを開いた。門で出したのと全く同じステータスの文字が並ぶ。すると、その文字を見た警官は途端に背筋を伸ばし、敬礼をした。そして、


「申し訳ございませんでした! まさかアイテムコレクターの方でいらっしゃったとは……知らなかったとはいえ、大変ご無礼を致しました!」


 と土下座せんばかりの勢いで頭を下げてきた。態度の変わりようが著しい。


「え? あ、いや、いいですよ。誤解が解けたのなら。俺は桐川疾風っていいます。こっちは俺の専属メイドで仲間のナヴィ。あなたは?」

「私は、エドイックス警察庁の警部を務めております銀狼族の、ボリス・チェスターと申します。以後お見知りおきを、ハヤテ殿。」

「敬語が使えるならば最初からそうしていればいいものを……全く、これだから上流階層は……」


 ナヴィは大袈裟に溜息を吐く。


「は、申し訳ありません。して、何の御用でしょうか?」

「ああ、このアイテムが落とし物じゃないかどうか調べて貰おうと思いまして。」

「ん? これは……希少レア級アイテム、【リグナムバイダの枝】ですか。うーむ……」

「調べられないんですか?」


 俺が言うと、ボリスというらしい警官は酷く面倒臭そうな顔をした。職務怠慢かよ、こいつ。


「いや、調べられない訳ではないんですが、これは少しばかり面倒というか……」

「これが落とし物だった場合、ご主人様には『拾得物横領罪』、場合によっては『占有離脱物横領罪』が罪状としてつくかもしれないんですが、それでも調べられないと?」

「いや、占有離脱物横領はペットなどの場合ですからつかないでしょう。それに、罪ではないことは私が証明致します。」

「このアイテムをご主人様が入手した瞬間を見ていないのに、ですか? 万が一にもこれが落とし物だったら、あなたにも『犯罪教唆』が罪状としてつきますよ。」

「う……それは……」

「まあ、それは自業自得ですね。もし警官のあなたに罪状がついたら、あなたは解雇され、警察庁に対する信用はガタ落ち。その責任を上層部は全てあなたに押し付け、あなたは就職したくても就職できずに路頭に迷い、職業安定所も派遣事業所もあなたの受け入れを拒否。そして疲れ切ったところを警察大臣のスパイに襲われ、社会的に抹消されるんでしょう。ざまあみやがれです。」

「恐喝は犯罪ですよ!」

「正当防衛です。それと、ご主人様を侮辱したことだって『名誉毀損』に当たりますよ。」


 ナヴィはそう言って、ニコッと笑……いや、ニヤッと嗤った。なんか暗黒のオーラが噴き出しているような気が……


「……調査致しましょう。少々お待ちください。」


 ボリスさんはそう言うと、奥から水晶玉を持って来て、それに【リグナムバイダの枝】を当てる。すると、水晶玉が薄ぼんやりと光り、ピーッと音が鳴った。


「これは落とし物ではありませんね。よって、これは拾得したハヤテ殿の物となります。」

「そうですか。ありがとうございます。」

「ご主人様、負け犬の匂いがこびりつきます。早く行きましょう。」

「負け犬? 私は銀狼族です! ライカンと一緒にしないでください!」

「すみません、失礼言って。良く言っておきますから。」


 俺はそう言うと、ポリスセンターを飛び出した。


「ナヴィ、なんであんなこと言うんだよ。めっちゃ睨まれたじゃん。」

「ご主人様をバカにするような輩は、何人たりとも許せません。」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、変に目立っちゃうのは困るから。これからあんまり変な事を言うのは禁止。分かった?」

「畏まりました。ご主人様のご命令とあらば。」


 ナヴィは渋々といった感じながらも了承した。


「よし。いい子だ。じゃあ、質問をしてもいいか?」

「はい。」

「なんでボリスさんは俺のステータスを見た途端に態度を変えたんだ? ヴィトルスさんはそんな気にしてないみたいだったけど。」

「それは、ご主人様が生まれ持った天性の才能でしか就けない激レア職業である【アイテムコレクター】だったからです。その絶対数こそ少ないですが、時に王家とパイプを持っているなどと噂されることもあるぐらいですから。」

「じゃあ、ヴィトルスさんはなんで平然としていたんだ?」

「彼はこの街の警備兵で、王家に依存してませんから。それに、エドイックスで一番強い槍使いともなれば、王家の騎士を相手取っても戦えるほどの実力があるでしょう。ですから、相手がアイテムコレクターでも無理に敬語を使ったりしないのです。」

「分かった。ありがとう。」


 俺がナヴィにそう言って笑いかけると、ナヴィは頬を朱に染めた。やっぱり可愛い。そう思っていると、道の脇にあったガス灯に、ボッと火が付いた。


「うを?」

「ああ、もう日が落ちちゃったんですね。ご主人様、ホテルに行きましょう。」

「へ? ホテル? でも俺、お金持ってないけど……」

「大丈夫です。コレクトワールドのホテルは、一ヶ月に一度の一括払いと出る時払いですから。連泊者が多いのでそういうシステムになっているんですよ。」

「ふーん。じゃあ行こうか。」

「はい。ではご案内致します。」


 俺はナヴィに連れられて、今夜の宿へと向かったのだった。

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