私が
悟の告白現場を密かに見守っていた私は、道場を飛び出し目の前を通り過ぎた悟を呼び止めることが出来なかった。
悟を掴もうとした手も虚空を掴んで、力なく落ちる。
悟が激昂した理由。裕也君が悟の想いを、嘘だと切り捨てて――
「――嘘じゃない!」
弱々しく上半身を起こした裕也君に向かって、私は力一杯叫んだ。静かな道場に私の大声が響き渡る。
突然の大声に驚く裕也君。私の姿を確認して、更に目を見開いた。
「……亘理、さん……?」
見開かれた裕也君の瞳から、ポロリと涙が落ちる。
裕也君が泣いていた。いつも義務的な笑顔を浮かべ、誰にも涙なんて見せたことがない、あの裕也君が。悟の言葉に、本気で傷付いた裕也君が。
私はそんな裕也君に、呼吸を整えて向き合った。
「お願い……悟の話を、ちゃんと聞いてあげて……」
まだ、裕也君は悟の想いを受け取っていない。どんな形でも返していない。
悟が希望と勇気を抱いて差し出した大切な心を、裕也君は受け取る前に振り払ってしまった。振り払ったそれは地面に叩き付けられ、音を立てて割れてしまい、その破片が突き刺さって悟を苦しませている。
「……悟から聞くことなんて、何も……」
「あるよ!」
もう割れてしまった。誰にも受け取られなかった綺麗な心は今、バラバラになって地面に散らばっている。
熱く、冷たく、血を流しながら。
「悟からの言葉、裕也君はちゃんと受け取ってない。ちゃんと返してない」
綺麗な綺麗な、宝石のようなその破片達。
「悟の想い……嘘なんて、言わないで」
――私が拾ってあげなきゃ。




