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なぜか私は恋敵と付き合っています  作者: 多美橋歌穂
第十一章
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チャンス

 目に染みるような夕日の色が辺りを照らし、園内の中心にある大きな噴水の水が、キラキラとオレンジ色を反射していた。園内のアトラクションを粗方制覇した私達の影も、色濃く地面に伸びている。六人分の真っ黒な影が不規則に並んでいた。


 もうすぐアトラクションの利用時間も終わるという頃。みんなの後ろを歩いていた三上君が、口を開いた。


「そろそろ日も落ちてきたし、アトラクションもラストといきますか」


 三上君の提案に、まだまだ元気な蒼斗君が飛び跳ねながら手を上げる。


「死! 最後に死への超特急乗ろうよみんな!」

「「ひっ……」」


 私と天音ちゃんが、死への超特急という言葉に過敏に反応して、小さな悲鳴を上げる。

 そんな中、私だけを助ける言葉が三上君から放たれた。


「じゃあ最後は一年生達だけで行ってこい」


 その言葉に、天音ちゃんにがっしりしがみ付かれた悟が不満げな表情で私を見てくる。


「は? 優里先輩も来ますよね?」

「い、いや、私はちょっと……」


 今度こそ吐く。


「亘理はもう疲れてるみたいだし」

「だったら俺だって疲れてますよ!」

「じゃあ天音ちゃんをあの野性動物に任せていいのか? ん?」

「……チッ」

「先輩に対して舌打ちすんな」


 三上君に頭をコツンとやられる悟。裕也君の時と違って、その顔に悦びはない。

 悟は渋々といった体で、蒼斗君に引きずられる天音ちゃんの後を大人しく着いて行った。や、やっと心が休まる……!


 私は大きな溜め息を吐いて、溜まった疲労を吐き出す。残ったのは同じクラスの三人だ、気を抜いてもいいだろう。

 裕也君も疲れた様子だが、何やら落ち着かないのか緊張したような強張った表情をしていた。どうしたんだろう、時間でも気にしているんだろうか……。

 そんな時。三上君がおもむろに声を上げた。


「あ! わりぃ二人共、俺財布落としたみてぇだ!」

「え、大丈夫? いつからないの?」


 一緒に探すよ。そう続けようとした私に向かって、三上君はストップを掛けるように私に両手を突き出した。


「ああ大丈夫、落とし物センターに行ってみるから、二人はここで待っててくれ」

「いや、一緒に行くよ、途中で落としてる可能性もあるし、人が多い方が……」

「時間掛かるかもだから! 二人はゆっくりしててくれ! 時間掛かるから! 遅くなるから!」

「え、うん……」


 な、なんだこの人、いつにも増して変な行動をとるな……。

 まあ裕也君と二人きりだし、いっか。

 三上君が慌てて落とし物センターの方へ走り去り、残されたのは私と裕也君だけだ。裕也君の様子がなんかちょっと変だし……具合悪いのかな? やっぱり私と同じくお化け屋敷での後遺症が……。


「……あの、亘理さん」

「えっ? なに、裕也君」


 少し震えてる裕也君の声に、思わず私の背筋が伸びる。やっぱり疲れたのかな。

 そう思っていたら。


「亘理さんって、高い所大丈夫?」

「うん、まあ苦手な方ではないけど……」

「最後にさ、あれ乗らない?」


 裕也君が指さす先には、県内最大の大きさを誇る観覧車。確かに今日一日あの観覧車には乗っていなかった。


「総司も遅くなるって言ってたし、悟達が帰ってくる頃には戻ってこれると思う」

「の、乗る!」


 き、きたー! やったー!

 私は今までの疲労も吹っ飛んで飛び跳ねたい衝動を抑えながら、元気に返事をする。

 裕也君、観覧車に何か思い出でもあるのだろうか、乗りたかったんならみんながいる時に言ってくれればよかったのに。男の癖に観覧車に乗りたいなんて言い出すのが恥ずかしかったのだろうか。

 任せて裕也君、誰にも言わないからね!


 私と裕也君は、夕日に照らされる中、時間ぎりぎりでゴンドラに乗り込んだ。


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