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なぜか私は恋敵と付き合っています  作者: 多美橋歌穂
第十一章
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悟の友達

「俺、サトルンとアマネンのクラスメイトの、要蒼斗かなめあおとです! 今日は限界までジェットコースターを乗りに来ました!」


 やけにハイテンションな子で、中学生のヒビキ君と比べてもかなり幼く見える。ここでふと、引っかかる単語を聞いた気がした。

 ん? 要……? なんか覚えのある名字だけど……。

 と、私が覚えのある朋子の方を見ると。


「ごめん優里ちゃん、言い忘れてたんだけど、この子私の弟」

「え、朋子の!?」


 弟がいるのは知ってたけど、会うのは初めてだ。でもなるほど、だから遊園地のチケットを手に入れるタイミングが、悟と一緒だったのか。

 姉がいつもお世話になってますと勢いよく頭を下げる蒼斗君。テンションが高い、声も大きく語尾に必ずと言っていいほどエクスクラメーションマークが見える。


 そしてなぜか蒼斗君も天音ちゃんと同様、私の顔をじっと見詰めてきた。え、なんだろう、私の顔変? しばらく私の顔をじっと見ていた蒼斗君は、何かを思い出したように頭の上で電球を光らせた。


「あっ、そうだ! 彼女さん、この前サトルンと一緒に読んだエロ本の――」


 ――ゴッ。

 蒼斗君が鈍い音を立てて倒れる。


 一方蒼斗君を殺した張本人は真顔でトンカチを鞄にしまい、声を上げた。


「あ、蒼斗……誰がこんな酷いことを」

「一部始終見てたからね!?」


 何ナチュラルにしらばっくれてんだこいつ! しかも何、エロ本!? 私が何!? 私がエロ本の何!? ものすごく知りたくない情報を蒼斗君の口から聞いた気がするんだけど! てかお前らなんてもん読んでんだ!


 倒れた蒼斗君に駆け寄った天音ちゃんは、涙目で蒼斗君の肩を揺らす。


「あ、蒼斗君大丈夫? しっかりして!」

「うぅ……サトルンからの愛が重い……」

「愛!?」


 蒼斗君の暴力=愛という認識には驚いたが、蒼斗君が生きていてよかった。殺人現場に居合わせるのだけは嫌だから……。

 悟が再び裕也君から説教を受け鞄にしまったトンカチを没収られているのを見ながら、私は視線を感じてそちらを見る。と、三上君が私にアイコンタクトらしき目線を送ってきた。いや、何を言いたいのかはさっぱりなのだが。

 視線だけではわからないので、私は三上君に寄って話を聞くことにした。


「どうしたの三上君、目の前で死人が出たのに楽しそうだね……」

「いや死んでねーし……てか、亘理は今日、あの二人をくっつけるために来たんだよな?」


 悟との会話が聞こえていたらしい。三上君は朋子と圭介を見ながら話を続けた。


「俺も協力する。まずあの二人を二人きりにさせてやろうぜ、あわよくばチビ助と亘理も二人きりになれるかも」


 前者は賛成ですが後者は勘弁してください。遊園地にトンカチ持ってくるようなサイコパスと二人きりとか、恐怖で手先が震えます。


 ともあれ私の目的は朋子と圭介の距離を縮めること。三上君なら場を仕切ってもおかしくないし、三上君に頼るのは正解かもしれない。

 が、まず先に私ができることをやろう。


「圭介、ちょっと」

「ん、どうした優里ちゃん。今日はやけに俺に話し掛けてきてくれるな」


 悟が裕也君に付き添われながら蒼斗君にごめんなさいをしている最中、私は圭介にだけ聞こえるように口を開いた。


「圭介、私からの一生のお願い、聞いてくれる?」

「命に代えても」


 そんな真面目な顔はしなくていいんだけど。


「今日一日、朋子を楽しませること。帰る時に、今日は楽しかったかどうか聞くから」

「うむ、楽しいと言わせればいいんだな?」

「もし朋子が楽しくなかったって言ったら、絶交ね」

「優里ちゃん、絶交は七回目だ」

「もし楽しくなかったって言われたら、都子先輩――」

「全力を尽くそう」


 私まだ都子先輩としか言ってないのに。都子先輩はあの笑顔の裏で、圭介に何をしたのだろう……。


「よし! チビ助の友達も無事みてぇだし、そろそろ行動するとしますか!」


 三上君の言葉に、圭介の隣でもじもじしていた朋子も「いえーい!」とテンション高く応える。赤くなっちゃって可愛いな、朋子にも恥じらいってあったんだ……。


「八人でぞろぞろ動くのもなんだしさ、ちょっと別れね? 俺もともと人数合わせ的に呼ばれただけだし、それぞれ目的があるみたいだし?」


 ここは朋子と圭介を二人きりにしてあげた後、私は裕也君と二人きりで遊園地デートと洒落込むか……。

 三上君の言葉を聞いた瞬間、朋子が隣にいた圭介の腕をガシッと掴んだ。え、何が始めるの?


「圭介君圭介君! あれ乗ろうあれ!」

「いや、俺は優里ちゃんと――てかお前誰だ」


 朋子、なんて積極的なの! 頑張って朋子、私応援してるよ!

 てか圭介、朋子の名前知らなかったんかい! どうやって朋子を楽しませるつもりだったんだ!?


 ――一方こちらでは。

「見て見てサトルン、アマネン! あれ乗ろうぜあれ! 『死への超特急』だって、すっげー!」

「いや、俺は裕也先輩と――」

「悟君一緒に来て、お願い……!」


 蒼斗君が天音ちゃんの腕を引っ張り、天音ちゃんが縋るように悟の腕を引っ張る。

 蒼斗君、なんていい仕事をしてくれるんだ! 頑張ってねサトルン☆

 ……なんて思っていたら。


「勿論優里先輩も来ますよね!?」

「いや、私は裕也君と二人きりで――」


 結局悟の馬鹿力で引っ張られた私は、三人分の力に踏ん張れるはずもなく、悟に引っ張られることになった。三人でずるずると芋蔓式に……蒼斗君の筋力どうなってんの?


 保護者のように後ろに付く三上君と裕也君の姿が見えて、少しだけ安堵する。蒼斗君の面倒を見れる自信がないから助かった。


 結局、愛の逃避行へ旅立った朋子と圭介を除く六人で、死への超特急に乗った。

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