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なぜか私は恋敵と付き合っています  作者: 多美橋歌穂
第十一章
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約束

 昼休み。私は朋子に頼まれた通り圭介を遊園地に誘うため、少し離れた奴の教室にやってきた。大きな声で呼べばすぐに来てくれるのだろうが、本当に急に現れるため心臓に悪く、やりたくないのが本音だ。


「どうした優里ちゃん」


 まだ何も言ってないけど。

 教室を覗き込んだだけですぐに私の元に走り寄ってくる圭介。うぅ、この反射神経怖いよ……でも呼ぶ手間が省けたし、用件を言ってさっさと教室に帰って朋子とお弁当食べよう……。


「圭介、明日暇?」

「土曜日か、暇と言えば暇だぞ」

「一緒にふわふわランド行かない? 私の友達も一緒なんだけど」

「ふらふらランド……? なんだそれは、危険な場所なのか」

「いや、『ふわふわランド』ね、遊園地なんだけど……」


 そんな深刻な顔されても困ります……。


「遊園地、だと……!? 待て優里ちゃん、それはつまり、俺と優里ちゃんのデーt」

「四人分割引できるから勿体ないでしょ? 私の友達の朋子って女の子がね、圭介君も誘ったら~って言ってくれたんだよ? 朋子に感謝してよね」


 はっきりと返事は聞いていないが、この調子なら圭介は遊園地に来るだろう。「おお神よ!」とか叫んで教室の床に膝を付くくらい嬉しがっているし、圭介も遊園地に誘われて嬉しいみたいだ。よし、これで明日は朋子に楽しんで貰えるぞー。


 私は咽び泣く圭介を放置して教室に戻る廊下を歩いた。ふと、朋子から「もう一人分残ってるし、優里ちゃんの好きな人誘っていいよ!」と言われていたことを思い出した。好きな人、好きな人か……。

 そういう意味の「好き」とかじゃないよね? 私が自由に選んでいいよっていう意味の「好きな人」だよね?

 だったら……。


「……悟、遊園地とか行ったことないだろうな」


 水族館だけであんなに目を輝かせていたのだから、遊園地なんて別世界とか思っていそうだ。裕也君がいなくても来てくれそうな気がするし、この間はお世話になったし。

 ……放課後、誘ってみようかな……。


 そう決めて自分の教室に戻ってきた私は、教室では見慣れない姿を発見した。

 二年生の教室に、一際小さい奴がいる。名取悟だ。

 悟が二年の教室にいるなんて、何か大事な用事でもあったのだろうか。座っている裕也君の腕を小さく引っ張りながら、きゃるるんとした笑顔を浮かべていた。相変わらず裕也君に話し掛ける時はそういうキャラなんですね、私には一度も向けたことないくせに……。


 私がモヤモヤしていると、悟の手に見覚えのあるものが握られているのが視界に入った。


 ――ふわふわランドのチケットだ。


 なんで悟がそれを? なんて疑問を抱きながら、私は教室に入る。悟も裕也君も私の存在に気付いていないようで、会話を続けていた。


「裕也先輩、ふわふわランドですよ? 明日一緒に行きましょうよ、一人分余ってるので勿体ないですよ」

「そういうのは亘理さんを誘ってあげなよ、付き合ってるんだから」

「友人から誘われて、友人二人が行くのは決定してるんです。一人だけ学年が違っていたら、優里先輩だって可哀想ですよ」

「俺も学年違うんだが……」


 裕也君は乗り気ではないように見える。が、そんな裕也君を前に、自信の籠った瞳を煌めかせる悟。


「へぇ、行かないんですか? いいんですか? 一人は天音あまねですよ、裕也先輩だって会いたいでしょう?」

「えっ」


 ん? 天音?

 人の名前だというのはわかるのだが、私の知らない名前だ。悟の言葉からして、その天音という子は悟の友人ということになるが……えっ、悟、普通に友達いたの!? そこにビックリだよ!?

 と、私が悟に友人がいたことに驚いた後、更に驚くことが裕也君の口から告げられる。


「……天音もくるなら、行こうかな」

「はい」


 え、なに? 裕也君の知り合い……?

 乗り気ではなかったみたいなのに、天音という子の名前を出した途端、裕也君が少し笑顔になる様子が見えた。しかも、天音という子が来るなら行くとまで。


 気になる。大いに気になる、が、今は悟の暴挙を阻止しなければ。

 私は丁度今教室に戻って来た体を装って、悟の肩を叩いた。


「悟、こんな所にいるなんて珍しいね? 裕也君と(私を差し置いて)何の話してるの?」

「げっ」


 げってなんだよ。私は普段悟にされているような作り笑顔で、悟が手に持ったままのふわふわランドのチケットをナチュラルに指さした。


「あー、それ、ふわふわランドのチケットじゃん! 奇遇だね、私も明日朋子と一緒に行くんだ~。あ! もしかして裕也君も一緒なの? よかったら一緒に回ろうよ!」


 すまない朋子。でもちゃんと恋の応援はするから許して!


「俺は全然いいよ」


 裕也君は勿論承諾してくれる。

 悟には「余計なこと言いやがって死ねクソ」みたいな顔で睨まれたが、無視無視。普段私が感じている屈辱をとくと味わうがいい。

 悟なりに裕也君に対する想いをどうにかするために、こんな行動に出たのかもしれない。けど、でも……!

 私は悟を誘おうとしたのに、悟ときたらなんなの!? 私に一言あってもいいんじゃないの!? 私に一言もなく裕也君とお楽しみなんて許せん、裕也君に片想いしている同士なんだから、もうちょっとこう――


「……」


 よし、三上君を誘ってやろう!


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