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なぜか私は恋敵と付き合っています  作者: 多美橋歌穂
第八章
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出会ってしまった

「あ」

「あっ」


 出会ってしまった二人。そう、悟と裕也君である。


 正面から出会うことになるとは思わなかっただろう裕也君は、何か言い訳を探しながら目を泳がし、どう見ても挙動不審。

 尾行という悪いことをしていたという罪悪感があるんだろうな、裕也君正義感強い人だもんね……。


 わずかに顔を青くする裕也君とは対照的に、悟の表情はみるみる明るくなっていった。

 見て下さいこのビフォーアフター! 私と一緒にいた時とは比べ物にならないほどの舞い上がり様!


「裕也先輩! 偶然ですねっ!」


 必然だったとは思うけど。

 悟は満面の笑みを浮かべて、内から込み上げる嬉しさを抑えきれず公衆の面前で裕也君に抱き付く。


 ちらりと周りを見ると、物陰に隠れていた三上君が意を決した様子でこちらに近付いてきた。

 裕也君が単独行動中に見付かってしまったので、諦めて出て来たのだろう。


 ふう、これで監視の目から逃れることができる。

 全然人のこと言えないけど、尾行されるのって精神的に疲れるからなぁ。


「おーチビ助ー、偶然だな!」

「……はぁ」


 見て下さいこのビフォーアフター! 爛々と煌めいていた笑顔が三上君を見た瞬間氷のように冷たい表情に!


「亘理も偶然! いやぁ、本当偶然! 偶然! ぐ、う、ぜ、ん!」


 隠す気あんのかこの人は。


「偶然ついでに、一緒に遊ぼうぜ! 俺らこれから二人でボウリングの予定だったんだ、二人とも予定ないなら一緒にいかね?」

「お、おい総司、悟達は今――」


「「行きます」」


「えっ」


 やだ、悟とハモったのなんて初めて。


 裕也君とボウリング? 私の有意義な休日ドストライクだよ!



     ※  ※  ※



「亘理さん、迷惑じゃなかった? ごめん、折角のデートだったのに……」


 ボウリング場から出てくる途中で、裕也君が申し訳なさそうに謝って来た。

 するとそれを聞いていた悟が、裕也君の腕を引っ張る。


「裕也先輩がいた方がいいに決まってるでしょう、ねえ優里先輩」

「うん、すごく楽しかったよ! こっちこそお邪魔しちゃってごめんね」

「そうだぜ裕也、気にすんなって。二人も楽しかったって言ってるんだし」


 はい、楽しかったです。

 私と悟は裕也君がボールを投げるシーンを食い入るように見ていました。ボールを投げる瞬間の、裕也君の肌チラを見るために! ボウリング最高!


 だけどこれは筋肉痛不可避。

 普段運動しない私がいきなりあんな重い物を投げ続けたのだ、足腰は正直ガタガタである。


「でも二人とも、デートだったのに……」

「そんなに悪いと思うなら、何か二人に奢ってやったら? 汗かいたし、アイス食いたくね? この前チビ助もアイス食いたいっつってたよな? あ、このショッピングモールの五階のテラスにファザークレープあんじゃん! あそこで食って行こうぜ!」


 ほら早く! と、私達の意見を一切聞かずに、三上君が次の行き先を決めていく。

 そしていつぞやと同じように私の肩に腕を回した。


 待って三上君、そんなことしたらまたふっ飛ばされる……と思ったが、想定していたことは起こらなかった。


 あれ? 普段ならここで、どこからともなく圭介が……。


「亘理、今日は滝富の奴、都子先輩に捕まってっから近くにいないぜ」

「……え」


 そういえば、昨日都子先輩から「私にできることは協力するから、デート楽しんできてね」と言われた。

 これからも相談に乗るからね、という意味だと思っていたが、まさか物理的な方の協力だったとは。

 そして圭介は無事なのだろうか……。


「俺もお前らが二人きりになれるように努力するから、チビ助ともっと進展しろよ?」


 余計なお世話過ぎるてか邪魔すぎる!

 私から裕也君を切り離すつもりか!


 進展させろって言ったって、悟とは後退する未来しか見えないのですが。


 これから裕也君と引き裂かれる運命とも知らずに、悟は大好きな裕也君とそれはそれは嬉しそうに会話を弾ませているのだった。

 私の前とは偉い違いですね……。



     ※  ※  ※



「なあなあ、あの店員さんめっちゃ可愛くね? ちょっとアタックしてもいい?」

「恥ずかしいから止めてくれ……」


 屋根のない広いテラスには、ファザークレープというアイスクリーム屋がある。

 そこでアイスやクレープを買った客が、テラスにあるテーブルでそれを食べるのがいつもの風景。

 コーヒーなんかも売っているので、コーヒーを飲みながら読書を楽しむ人達もいる。


 私達は全員分のアイスクリームを買って、空いているテーブルに着く。私から時計回りに三上君、裕也君、悟の順である。


「なあなあ、チビ助は巨乳と貧乳だとどっち派なわけ?」


 あの、女の子の前でそういう話やめて貰えません?

 私、女だって認識されてない?


 私がその言葉を聞いて嫌そうな顔をすると、三上君からの質問だというのに悟がキチンと反応を返した。


 私の嫌がる姿がそんなに好きなの? テレチャウナー……。


「そうですね、俺はどちらかというと胸の大きい人が好みです。わかりましたか、優里先輩」

「なに!? 私が貧乳だとでも言いたいの!?」

「……はっ」


 鼻で笑いやがった。


「今日(階段で転びそうになった時に)触った時は床って言うほどでもないですねって言ってたじゃん!」

「何言ってるんですか優里先輩……」


 何言ってんだ私!


「ふ、二人はもう、そんな仲なんだ……」


 違う! 違うの裕也君!


「い、いや、あの、あれは事故みたいなもので、決して私から触らせたわけではないから!」


 なーに言ってんだ私。


「まあ確かに絶壁だと思ってましたけど、わずかにありましたね。Bくらいですか?」

「Cだから!」


 って黙れ私落ち着け何口走ってんだぁ!


 好きな人(片想い中)の前で胸のサイズを声高々に宣言する愚か者。はい、私です。


 悟は呆れたように溜め息を吐いた後、裕也君が持っているバニラアイスクリームを見て、思い付いたように口を開いた。


「裕也先輩のバニラ美味しそうですね、一口下さい」

「っ……!」


 そ、それは水族館で麗華様が使っていた秘技!


 悟は裕也君から「いいよ」と言われて、差し出されたアイスを躊躇いがちにペロリと舐めた。

 ちょっと赤くなってる、自分で提案したくせに恥ずかしがってるとかバカじゃねーの!


「お、美味しいですねー、裕也先輩のバニラ……」


 私、アイスを舐めて恍惚の笑みを浮かべる人初めて見たよ。


 二人の様子をじっと見ていた私を見て、悟は勝ち誇ったようにニヤリと笑った。

 くっそおおお羨ましいいいいい!

 私だって裕也君のバニラアイス食べたいぃ!


「あ、ほら悟、早く舐めないと垂れてくるだろ」

「ちょっと、んっ……」


 溶けてきたバニラアイスを慌てて舌で掬い取る悟。

 それを傍観する私。

 なにこれ?


「……」


 なんで私と悟のデート(仮)なのに、悟と裕也君がイチャイチャしてるの? これは私と悟のデートだよ!? 私だって裕也君とイチャイチャしたいよ!


 自分でも何を言っているかわからなくなってきたが、このままではいけない。


「ほら悟、腕にも垂れてるよ? 全くしょうがないなぁ」

「いいですよ、ハンカチが汚れます。洗ってきますから大人しく待っててください。大人しくですよ」


 私はルンバか。そんな二度も言わなくても暴れんわ。

 悟が立ち上がったその時、三上君の目が光った。


「あ、悪い亘理~!」


 と言いながら、三上君は私の頬っぺたにアイスクリームを付ける。言いながらである。

 え、何、そのわざとらしい挙動……。


「ごめんな亘理~、チビ助と一緒に洗ってきてくれ」

「いや、これくらい拭けば――」

「ベタベタになるの嫌だろ?」

「そこまで酷く――」

「嫌だろ? ほらほら行った行った!」


 私は三上君によって強引に悟の隣に置かれた。

 二人きりにする手段が強引だし、ただ洗いに行くだけで何を進展させろというのか。



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