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なぜか私は恋敵と付き合っています  作者: 多美橋歌穂
第八章
57/102

 真っ青な晴天。

 まだ涼し気な太陽光が、ヨーロッパの聖堂のようなステンドグラスを通って、地面を透明感のある虹色に色付けている。


 私は今、先週の土曜日に裕也君と麗華様が待ち合わせをしていた駅中に立っていた。

 もちろん、都子先輩に背中を押されるがまま、悟とデートをするためである。

 言っておくがこのデート、誰の得にもなっていない。


 私に巻き込まれる形になった悟さんも、それは不機嫌な顔をしておりました。


「裕也先輩が『デートしない?』なんて言ってきたので、無駄な期待をして損しました、責任取ってください」

「ごめんて……」


 裕也君からの「誘うのが恥ずかしいなら、俺の方から悟に言っておくよ」なんて有り難迷惑な気遣いの元、私は休日に悟とデート(笑)をすることになった。

 悟にはとても残酷なことをしてしまって頭が上がらない。


 しかも二人の監視付き!

 なんで三上君が裕也君と一緒に物陰にいるのかなぁ!

 変装したってわかるよ!


 どうせ興味本位で尾行を企てた三上君が裕也君を巻き込んだのだろう。

 裕也君は「後輩の初デートを見守る義務」とか言われたら断れないだろうし、かわいそうな裕也君……。


 裕也君は尾行なんて初めてなのだろう、挙動不審で私から見たらバレバレだ。

 悟は完全に気付いてないけど。この子目付いてないの?


 何が悲しくて好きな人に他人とのデートを見守られなきゃいけないんだろう……。


「貴重な休みを潰された気分です」

「だからごめんて。なんか甘い物奢ってあげるから……」

「タピオカ飲みたいです、ココナッツミルク」

「女子か」


 タピオカといいココアといいい、飲み物好きだなこいつ。


「それにしても……」


 何か楽しいことでもあったのか、悟は先程の不機嫌な表情から一変、私を見詰めてニヤリと笑った。


「優里先輩って、本当に残酷ですね」



     ※  ※  ※



「うわ、凄い人の数……」

「近くでイベントがあるみたいですね。映画館の方はそれほど混雑していないと思いますが」


 都子先輩が勧めてくれた映画を見に、私と悟は映画館のあるショッピングモールを目指して駅中を歩いていた。

 が、人が多い。休日だから仕方ないと言えば仕方ないのだが……。


「やめますか?」

「ここまで来て何言って――うわっ」


 階段を上っている最中に後ろを振り返ってしまい、私はバランスを崩してしまう。

 そしてそのまま階段から落下……する前に、後ろにいた悟が受け止めてくれた。

 なかなか力があるな、一緒に転がり落ちると思った危ない危ない……。


「何やってんですか、ただでさえ人多いんですからちゃんと歩いて下さい」

「は、はい、スミマセン……」


 言い返す言葉もない。


「それと、優里先輩」

「何?」

「優里先輩って床って言う程じゃないですね」

「……は?」


 床? 何言ってんだこいつ。


 ……あっ。


 私はバッと悟から離れて、体を庇う。

 正確には、胸を。


「……あのさ、悟君」

「君付けなんていいですよ、俺と優里先輩の仲じゃないですか」

「超えてはならない一線ってあるでしょ?」

「俺と優里先輩の間にそんなものありませんよ?」

「……」


 まあ減るもんじゃないし、あんまり怒っても可哀想だ。

 それにこいつ、裕也君にしか興味ないし。


「まあいいよ、受け止めてくれてありがとね」

「……もっと怒って下さいよ」

「怒って欲しいとか変わってるね」

「ここは怒っていい所ですよ、もっと自分を大事にしたらどうですか?」

「あんた裕也君にしか興味ないでしょうが」

「その通りですけど」


 その通りですか、はい。


 正直、悟が私の胸を触って顔色一つ変えなかったことに、少しショックを感じていた。

 女としての魅力がないと、こんな反応をされるんだと実感させられる。

 あー、裕也君の好きな人が巨乳だったら、全国の巨乳を呪ってしまいそうだ。


「……あの、優里先輩……」

「何?」

「手……」


 人混みで離れ離れになったら困るので、私は悟の手を握っていた。

 昔はよくこうやって、ヒビキ君の手を握って迷子になったなぁ。


「離れ離れになったら困るでしょ、早く行くよ!」

「……」


 躊躇いがちに握り返してきた悟の手を引っ張って、私は映画館を目指した。


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