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なぜか私は恋敵と付き合っています  作者: 多美橋歌穂
第七章
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都子先輩の恋・真実

 和樹部長なら丁度今来たところだし、渡せばいいのに。


 都子先輩は静かに中身を取り出し……ん?


「都子先輩、それ和樹部長宛なんじゃ……」

「和樹宛ということは私宛でもあるでしょう?」

「? そうですか?」


 あまりに自然な流れ過ぎて、私も「そういえばそうだな、年子だし」なんて納得してしまった。

 よく考えたらおかしいけど。


「差出人の名前は書いていないようね。どこの誰が書いた手紙なのかしら」


 中身はどうやらラブレターのようだ。和樹部長への想いを綴っている。


 あれ、これ一番最初に和樹部長が読むべき物なんじゃ……。


「……」

「……」

「……」


 誰が書いた手紙なのか――都子先輩の問いに答える者はいなかった。

 全員顔を逸らし、現状を維持しようとする。


「手紙を持っていた金本君なら、知っているわよね?」

「……」

「あらごめんなさい、みんなの前では言い辛いわよね」

「え?」


 床に組み伏せられていた審判先輩の手を引く都子先輩。なんか、怖い……。


「二人でゆっくり話しましょう?」


 審判先輩が都子先輩に連れて行かれそうになった、丁度その時。


「――そ、それ書いたの僕なんですぅっ!」


 突然叫ぶ一年生男子。言っている意味が分からない。


「え、誰あの子」


 私が悟に聞くと、悟はとても悲しそうな顔をしながらも教えてくれた。


「一年の、梶って奴です……今この場では、英雄と言ってもいいでしょう……」

「梶、お前自分を犠牲に……!」

「早まるな! 誰も犠牲なんて出したくないんだ!」


 先輩達が次々に涙を浮かべ始める。

 何が起こっているのか、なんとなく、わかってきた気がするのだが……。


「あらそうだったのね、ごめんなさい金本君。私ったら早とちりしてしまって」


 都子先輩の笑顔が、途端に悪魔の笑みに見えた。都子先輩は今、確実に、激怒している。


 和樹部長へのラブレター。

 それを都子先輩にだけは隠そうとした審判先輩。

 青ざめる部員達。

 ラブレターを書いたのは自分だと己を犠牲にした一年生。

 私の恋は難しいと言って遠い目をした都子先輩――この状況から、考えられる可能性。


「あのさ、悟。都子先輩の好きな人って、誰だかわかる?」

「……あれを見ればわかるでしょう」


 都子先輩は梶という一年生の前に立ち、震えるその子に笑顔で言った。


「私の和樹に手を出す愚か者は、今ここで死んで頂戴」


 なあんだ、都子先輩の好きな人って、やっぱり裕也君のことじゃなかったのか!

 和樹部長のことねー、よかったよかった!


 ……私の都子先輩に対するイメージが……。



     ※  ※  ※



 ――でも俺、もういいんだ。


 そう言った裕也君は、気付いていなかっただろう。

 でも、裕也君を見ていた私は気付いた。


 心臓を針で突かれる痛みに堪えるような、そんな表情をしていたのだ。

 雨の中、寒さに凍える子猫を連想させるような。


 そんな裕也君の表情を見た瞬間。


 私の中で、一つの決心が固まった。

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