都子先輩の恋・真実
和樹部長なら丁度今来たところだし、渡せばいいのに。
都子先輩は静かに中身を取り出し……ん?
「都子先輩、それ和樹部長宛なんじゃ……」
「和樹宛ということは私宛でもあるでしょう?」
「? そうですか?」
あまりに自然な流れ過ぎて、私も「そういえばそうだな、年子だし」なんて納得してしまった。
よく考えたらおかしいけど。
「差出人の名前は書いていないようね。どこの誰が書いた手紙なのかしら」
中身はどうやらラブレターのようだ。和樹部長への想いを綴っている。
あれ、これ一番最初に和樹部長が読むべき物なんじゃ……。
「……」
「……」
「……」
誰が書いた手紙なのか――都子先輩の問いに答える者はいなかった。
全員顔を逸らし、現状を維持しようとする。
「手紙を持っていた金本君なら、知っているわよね?」
「……」
「あらごめんなさい、みんなの前では言い辛いわよね」
「え?」
床に組み伏せられていた審判先輩の手を引く都子先輩。なんか、怖い……。
「二人でゆっくり話しましょう?」
審判先輩が都子先輩に連れて行かれそうになった、丁度その時。
「――そ、それ書いたの僕なんですぅっ!」
突然叫ぶ一年生男子。言っている意味が分からない。
「え、誰あの子」
私が悟に聞くと、悟はとても悲しそうな顔をしながらも教えてくれた。
「一年の、梶って奴です……今この場では、英雄と言ってもいいでしょう……」
「梶、お前自分を犠牲に……!」
「早まるな! 誰も犠牲なんて出したくないんだ!」
先輩達が次々に涙を浮かべ始める。
何が起こっているのか、なんとなく、わかってきた気がするのだが……。
「あらそうだったのね、ごめんなさい金本君。私ったら早とちりしてしまって」
都子先輩の笑顔が、途端に悪魔の笑みに見えた。都子先輩は今、確実に、激怒している。
和樹部長へのラブレター。
それを都子先輩にだけは隠そうとした審判先輩。
青ざめる部員達。
ラブレターを書いたのは自分だと己を犠牲にした一年生。
私の恋は難しいと言って遠い目をした都子先輩――この状況から、考えられる可能性。
「あのさ、悟。都子先輩の好きな人って、誰だかわかる?」
「……あれを見ればわかるでしょう」
都子先輩は梶という一年生の前に立ち、震えるその子に笑顔で言った。
「私の和樹に手を出す愚か者は、今ここで死んで頂戴」
なあんだ、都子先輩の好きな人って、やっぱり裕也君のことじゃなかったのか!
和樹部長のことねー、よかったよかった!
……私の都子先輩に対するイメージが……。
※ ※ ※
――でも俺、もういいんだ。
そう言った裕也君は、気付いていなかっただろう。
でも、裕也君を見ていた私は気付いた。
心臓を針で突かれる痛みに堪えるような、そんな表情をしていたのだ。
雨の中、寒さに凍える子猫を連想させるような。
そんな裕也君の表情を見た瞬間。
私の中で、一つの決心が固まった。




