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なぜか私は恋敵と付き合っています  作者: 多美橋歌穂
第七章
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剣道部員の隠し事

 先生が来る前の数分でお弁当を胃に突っ込んだせいか、放課後になった今も若干胸が苦しい。

 一時間だけでも我慢して、五時間目の休み時間にゆっくり食べればよかった……。


 正常な判断ができなかったのも、全部悟のあの発言のせいだ……!


 放課後、剣道場へ向かう私と裕也君は、並んで廊下を歩いていた。


「悟と仲直りできたんだね、よかった」

「う、うん、お陰様で」


 正直それどころではない。

 もう好きな人って誰なの? 私が想像しないような人ってことは、私の知らない人ってこと? それともやっぱり男ってこと!? もし男なら、俺の恋は少し難しいという言葉もしっくりくるんだけど……どうなの裕也君!


 なんて間違っていたら失礼どころの話ではないので聞けるはずない。

 でも気になる、正直午後はそのことばっかりで全然授業聞いてないし。


 悶々としている間にあっと言う間に着いてしまった剣道場。

 悟は既に着替え終え、剣道場の隅っこで先輩達と何やら神妙な顔で話している。和樹部長がどうとか。


 こうなったらもう一度悟に詳しく聞くか? いや、昼間の受け答えの様子だと、私に教える気はさらさらなさそうだったし……。

 やはりここは、もう少し裕也君の様子を監視して、特別な接し方をしているような女性を見付けるしかないか。


「……」


 ここでふと疑問に思う。

 都子先輩と両想いじゃないってことは、都子先輩の言っていた「難しい恋」の相手って一体――


「――お前ら! 都子先輩と和樹部長が来たぞ! 早く解散しろ!」


 剣道場の隅っこで固まっていた剣道部員達が、蜘蛛の子を散らすように剣道場へ散らばっていく。

 なんだなんだ、悟を含めた部員達、全員青白い顔をしているけど……。


 裕也君を見ても、首を傾げるばかりで何が起こっているのか理解できてはいないようだ。

 悟は何か知ってるみたいだし、聞いてみよう。


「悟、みんな顔真っ青だけど、どうかしたの?」

「うるさいです余計なこと言ったらぶっ殺しますよ」


 直接的に殺すって言われたの初めてじゃない!?

 さすがの私もイラッときたよ!


「悟に聞いたのが間違いだった。……圭介―!」

「ここに」

「ひっ……」


 しゅっと私の前に現れた圭介。

自分で呼んでおきながら、あまりの速さに恐怖を感じる。


 だが今は怖がっている場合ではない、なんとか圭介にこの状況を説明して貰おう。

 一応圭介も剣道部員なのだから、何か知っているはずだ。


「け、圭介、みんなが慌ててる理由、なんかわかる?」

「ああ、それなら恐らく――」

「全員滝富を殺せぇ!」


 遠くからの部員の叫びと同時に、圭介の腹部に無言の悟の拳がクリーンヒットする。

 そして瞬きをする間も無く他の部員達から組み敷かれ猿轡を付けられる圭介。

 誰だ学校に猿轡持ってきてる奴。


 尋常ではない剣道部員達の様子に私と裕也君が後退していると、その人達は現れた。


「今日はなんだか騒がしいわね、どうかしたの?」


 いつも通り、都子先輩と和樹部長が現れる。

 その時の部員達の表情は、とても形容しがたいものだった。


「み、都子先輩! お疲れ様っす! 和樹部長も!」

「……みんな何してるの?」


 和樹部長が床に組伏せられ猿轡をされた圭介を見ながら、得体の知れないものを見たような眼差しを部員達に向ける。

 私も全く同じ顔をしていたと思う。


「滝富がまた部活をサボろうとしていたので! 引き留めていました!」

「あっ、そうだったんだ」


 そう言って緊張していた表情を綻ばせる和樹部長。


 そんな説明で納得していいんですか和樹部長!

 学校に猿轡持ってきてるキチガイが部員の中にいるんですよ!


「圭介君、今日は来てくれて嬉しいよ。部員みんな集まることって少ないし、ちょっと寂しかったんだ……」


 そのまま部員達に組み敷かれた圭介へ話を続ける和樹部長。

 なんて異様な光景だ、この部活狂ってる……!


「それよりも気になることがあるのだけれど、いいかしら?」


 びくぅ! と部員達の肩が跳ねる、都子先輩の一言。

 悟や他の一年生も、死体を見付けたかのような表情で固まっている。

 中には涙目の一年生もチラホラ……だからなんなのこの人達。どうしても都子先輩に知られたくないことでも……あ、まさかいかがわしい本でも持ってきてるんじゃ……!


「あなた、何か後ろに隠しているみたいね。何を隠しているの?」


 見ると、先程部員達が集まっていた剣道場の端で、見たことのある先輩が何かを守るように両手を後ろに隠している。

 圭介と悟の決闘の時、ノリノリで審判をしていた先輩だ。どう見ても怪しい……。


「なっ、なんでもない! 九条に見られたらマズイものなんて……!」

「なら見せてちょうだい?」


 バカだな男子共、都子先輩が剣道場にいかがわしい本を持ち込むことを許すはずないでしょうに。

 別にいかがわしい本って決まってるわけじゃないけど。


「――何してるのあんたら」


 緊張した雰囲気の中、その人は現れた。裕也君との一件があってからしばらく部活に顔を出さなかった、麗華様だ。

 昼間の宣言通り部活に来たらしい。


 そして道場に広がる緊張した雰囲気をぶち壊してくれた麗華様に、悟がサッと寄っていき、耳元で何かを麗華様に伝えた。


 普段仲が悪いくせに、お互いあまり嫌がっていないことに違和感を感じる。

 え、あなた達そんな仲良かったっけ? そんな至近距離にいて睨み合わないような、柔らかい関係だったっけ?


 麗華様は悟から告げられた内容を理解すると同時に、「げっ」という顔をして、部員達と同じく顔色を悪くした。

 私と裕也君は全く着いていけない。


「あ……あー、都子、さっき近藤先生があなたのこと探してたわよ」

「あら、どうして?」

「……あ、あなただけ提出していないプリントがあったみたいで」

「そんなものないわ。近藤先生とも先程お会いしたけれど、何も言われなかったもの。麗華ちゃん、どうしてそんな嘘を吐くのかしら?」

「あっ、えっ、と……」


 隣で悟が「使えねー野郎だな」みたいな目で麗華様を一瞥してる。お前麗華様いじめんなよ!


 どういうわけかわからないが、部員達は都子先輩にだけ隠したいことがあるらしい。

 麗華様さえそれに加担するということは、いかがわしい本ではないらしいが……。


「うっ……うわぁ!」


 何かを隠していた審判先輩が、トチ狂ったのか都子先輩の横をダッシュで通り抜けようとする。


 が、次の瞬間には、仰向けで床に叩きつけられていた。

 都子先輩に腕を掴まれ関節技を決められて――待って待って都子先輩、ここ柔道部じゃありませんよ!?


「ぐふっ……!」

「これ借りるわね」


 都子先輩が審判先輩に関節技を決めたまま、涼しい表情で手に握られていた封筒を取り上げる。

 ピンク色の封筒のようだ。


 私も気になって都子先輩の隣でその手紙を覗き込む。

 剣道場はお通夜のように静まり返っていた。


「えっと……『和樹先輩へ』?」


 どうやら和樹部長宛の手紙らしい。

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