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なぜか私は恋敵と付き合っています  作者: 多美橋歌穂
第七章
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矛盾してしまう

 裕也君は、溜め込んでいた疲労を吐き出すように、大きな息を吐く。


「前に、悟にも言われたんだ」

「? 何を?」

「あなたの優しさなんて自己満足だって。イライラするとも言われたなぁ……」

「え!? 悟が!?」


 裕也君大好きラブラブズキュンな悟が、裕也君に対してそんな辛辣なことを言うなんて信じられない。

 裕也君を疑うわけじゃないけど、それ人違いじゃない? どんな状況だったのか気になるところだ。


 私が口をパクパクさせて驚いていると、裕也君は少し慌てて付け足した。


「昔の話ね。三年くらい前……悟と会った頃の話」

「……会った頃、仲悪かったの?」


 私と悟は出会った時点で敵同士だったから、辛辣なことも沢山言われたけど。


「仲が悪かったわけじゃないよ。でも……悟が辛い時、俺はそのことに気付けなかった。だから、優しくされても腹立つだけだったんじゃないかな」


 ――その頃の話は悟も思い出したくないだろうから、俺が話したことは秘密――そう言って困り顔で人差し指を口に当てる裕也君。

 話から察するに、当時の悟は相当ツンツンしていたのだろう。

 いじめられていたと言っていたし、家庭の悩みもあったというし。

 いじめから助けて貰ったことで知り合ったのではなく、助けて貰う前から二人は友人同士だったということだろうか。

 二人にとって当時は、辛いことが沢山あったのだろう。


 けど、思い出したくない思い出だけなのだろうか。

 悪いことだけではなかった……今の悟ならそう言いそうだ。


「悟、裕也君に助けて貰えて本当に感謝してると思うよ」


 性別を越えて、恋をしてしまうほど。


「自己満足の優しさでも……少なくとも悟は救われてる」


 私も、裕也君の優しさに救われた。裕也君の強さに一目惚れした。


 優しさなんてもの、全部自己満足だ。

 自己満足だと理解して、それでもその優しさを捨てないのは、その優しさが本物である証。


「……ありがとう」

「いえいえ」


 裕也君が元気になってくれてよかった。

 先程の女の子のように、優しくすることによって傷つけてしまう人がいなくなるわけではないだろう。

 だが、生きている上で誰も傷付けない人なんていない。

 誰だって傷付け傷付けられて生きているのだ、裕也君がその優しさで誰かを傷付けることになっても、それは仕方のないことで。

 悩んでいたって、解決方法は誰にも分らない。


「……」


 ……裕也君は、今なら答えてくれるだろうか。


「嫌だったら答えなくてもいいんだけどね」

「うん、なに?」


 私は気になっていたことを、聞いてみることにした。

 裕也君の好きな人の正体。


「……好きな人がいるって噂、本当?」

「……」


 沈黙を肯定と受け取った私は、そのまま続ける。


「どうして告白しないのかなぁって思って。ほら、裕也君ってすごくモテるでしょ? 裕也君が告白を躊躇うような相手って、どんな人なのかなぁって、思ったりしてて……」


 少しだけまた暗くなる表情。

 けど次の瞬間にはニッコリ笑って、何もかも振りきるように明るい声で言った。


「自信がなかったんだろうなぁ。その人はすごく魅力的な人で、中学の時に一回告白しようかと思ったんだけど、結局怖くなってやめちゃったんだ」


 ちゅ、中学の時ですと? つまり、裕也君の好きな人というのは、裕也君と同じ中学出身で今もこの高校に通っている人物ということになる。


 だがそれよりも気になることが。


「自信が『なかった』ってことは、今は……」


 裕也君、今なら告白できると腹を括ってしまったのでは……。


「んー……もういいんだ」

「えっ……諦めちゃうの? なんで!?」

「俺の恋は、少し難しいから」


 遠い目。デジャヴ。

 これは……まさか……。


 ――私の恋は……少し、難しいから。


 あの時の都子先輩と、全く同じことを言う。

 更に同じ中学出身だと聞いた今、その可能性がじわじわと私の背後に近付いてきた。


「諦めるべきだってことは、確実なんだ」


 これ、確定でよろしいですか……?


「変な意地張って、届きもしないものに手を伸ばすのは、もういいかなって」

「と、届かないなんて、そんなことないよ! そんなちょっとぐらいの障害、乗り越えてこそ恋だよ!」


 親戚中と縁を切って結婚した従姉弟いとこ同士だっているんだよ!


 私の必死な励ましにも、裕也君は笑った。

 いつものように。笑顔を浮かべるのが自分の義務だとでも言うように。

 ……笑うのだ、裕也君は。


「ありがとう亘理さん。でももういいんだ、色んな人が傷付くし、嫌われたくない人達にも嫌われるだろうから」

「っ……」


 裕也君の背中を押してあげたい。けど、それは私にとって正しいことなのだろうか。


 私は裕也君が好きだ。一緒に歩いていきたいと思ってる。

 けど大切な人の恋を応援したいという気持ちもある。


 ここで私が背中を押すと、矛盾しないか?

 私の心は?

 私は何がしたい?

 裕也君とどうなりたい?

 裕也君のために何をしたい?

 裕也君をどうしたい?


 一瞬で頭の中を巡る疑問。矛盾してしまう心。


 私は――


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