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なぜか私は恋敵と付き合っています  作者: 多美橋歌穂
第六章
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その恋は

「俺だって最初からこの気持ちが恋愛感情だとは思っていませんでしたよ」

「それじゃあなんで恋愛感情だと思ったわけ?」

「……想像してみて、ああやっぱりこの人のこと好きなんだなって思ったんです」

「想像? 想像ってなにを?」

「下品な話になりますけどいいですか?」

「わかった、言わなくていい。察した……」


 つまり悟は、裕也君と……き、キスするような想像をして、それで自分の気持ちと比較した結果、やっぱりこれは恋愛感情だと決定付けたわけだ。

 友達とキスしたいとは思わないからね、その確かめ方が一番手っ取り早いだろう。


 ……こいつ純粋に裕也君のことが好きなのかと思いきや、そういう目で裕也君を見てたのか……え、じゃあ居残り練習の後二人でシャワー浴びてるけど、裕也君のこといつもいやらしい目で!?


「なんだか酷い想像をされている気がするので言いますけど……」

「い、いやらしい想像なんてしてないから!」


 裕也君のシャワーシーンを想像したりなんてしてないから!


「俺は裕也先輩とそういう関係にならなくてもいいんです。ただ誰の物にもならず、ずっと俺の傍にいてくれれば……」

「……なにそれ」


 その消極的な言葉は、名取悟らしくなかった。強引な手段で私の告白を邪魔し、裕也君に教えて貰えるという理由だけで運動音痴の振りをし、積極的に大好きアピールをしてきた悟の言葉にしては、ネガティブすぎる。


 まるで、最初から裕也君と恋人同士になるのは無理だと悟っているような。


「悟は、裕也君と恋人同士になりたいわけじゃないの?」


 てっきり、悟は裕也君と恋人同士になりたいから、私の告白を邪魔したものだとばかり思っていたけど。


「……なれたらいいな、とは思いますけど」


 同性に想いを寄せる恋の切なさは、私には正直わからない。

 けれど悟のその言葉は聞き捨てならなかった。


「私の告白を邪魔しておいて、自分は裕也君に告白する勇気はないわけだ?」


 責めるような口調になってしまい、殴られるかとも思ったが、私の言葉が図星だった様子の悟はふいっと顔を背けてぽつりと言った。


「……優里先輩には関係ありません」


 関係ない――悟はそう言ったが、関係ないわけあるか! 一番の被害者だよ私は!


「……一ヶ月経ったら、私また裕也君に告白するから」


 告白する気は消えかけていたが、悟の言葉を聞いて決心が付いた。

 悟は本気で裕也君を求めていない、ただ自分の傍に置いておきたい――そんなの子供の我儘だ。


 悟のこと大好きだって言ってたのにいきなりどうしたのかという話になったら、思っていたのと違ってた、とかなんとか無難な理由をこじつけてしまおう。


 俯いたままだったが、私のその言葉に、悟が息を飲むのが伝わって来た。

 告白させたくない、けど自分が告白したいわけではない。なんだそれは。


「かまわないよね? それともまた私を脅してこの関係を延長する? 悟はそれでどうしたいの? 裕也君とどうなりたいの? こんな延命処置みたいなこと、無意味だって思わない?」

「……うるさいです」

「一生そうやって裕也君を繋ぎ止めておくつもり? それで悟は……裕也君はどうなるの? 相手のことを考えないのってね、自己中心的って言うんだよ」


 その言葉がトドメだった。

 悟は静かに顔を上げて、鬱陶しいとでも言いたげに私を一瞥した後、踵を返し歩き出した。

 帰っていく部員達の声が、やけに虚しく鼓膜を揺らす。



     ※  ※  ※



 その日、裕也君と悟の夢は見なかった。

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