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なぜか私は恋敵と付き合っています  作者: 多美橋歌穂
第六章
35/102

 微睡の中、私はいつもの十字路に立っていた。


「――優里先輩、俺、裕也先輩と付き合い始めました!」


 悟が照れたように笑って私に報告してくる。


「はあ!?」


 すると私の動揺が自然界に轟いたのか、通学路にある電柱が倒れ、地面が割れ、空間が歪んだ。

 ゴゴゴゴゴ……。


 そこで気付く。


 ――あ、ああ、なんだ、ここは夢か。


 たまにあるよね、夢の中でこれは夢だって気付くこと。

 それにしてもなんちゅー夢を見てるんだ私は……。さっさと起きよう。


 そう思って現実の自分に意識を持っていこうとした時。


「亘理さん、おはよう」


 裕也君の声が聞こえて、思わずそちらに意識が集中する。

 裕也君に会えるなんて、なんていい夢なんだ! どうせ夢なら裕也君に、告白してみようかな……。


「裕也君、あのね」


 あの日悟に邪魔されて言えなかった言葉。夢でもいい、一度裕也君に言った気になりたい。


 私はぐちゃぐちゃになった空間の中で、口を開いた。


「私、裕也君のことが好き」


 夢のおかげか、私は躊躇することなく、夢の中の裕也君に好きだと伝えることができる。

 そして一人で勝手に感動を噛み締めていると。


「ごめん、亘理さん」


 ――振 ら れ た。


 ……え、いや、そこまでリアイティ追及しなくていいんだけど……。


「俺、悟と付き合うことにしたから」


 なんでよりにもよって悟と!? 私の頭の中おかしいんじゃないの!?


「そうなんですよ優里先輩! 悪いですね、裕也先輩は俺が貰います」


 いかにも悟が言いそうな言葉。でも、例え夢だとしても、これだけは許せない!


「ダメに決まってるでしょ! 裕也君には……好きな人が、いるんだから!」


 言ってて悲しくなるけれど、これが現実。いやこれは夢だけどね。


 なんて私が夢の中で無意味な争いを繰り広げていると、現実ではあり得ないことがおこった。


 裕也君が悟を正面から抱きしめている。


「愛してるよ、悟」

「俺もです裕也先輩……」


 悟もうっとりした目で裕也君を見詰めて、そして二人は幸せなキスを――だから私の頭の中おかしいんじゃないの!?



     ※  ※  ※



「っふぁあああ――!」


 私は悪夢から逃げ出すように、ベッドから飛び起きる。

 私の叫びを聞きつけたヒビキ君が、こっそり私の部屋を覗いていた。

 が、私と目が合いそうになると逃げて行ってしまう。

 そうだ、まだ私が女好きという誤解が解けていなかった……。


 だが今はそれどころではない。

 今私が見ていた夢が現実になってしまうのではという恐怖をひしひしと感じる。


 これもそれも、裕也君の好きな子が気になって気になって仕方ないからだ。

 悟のこともあるし、好きな子と言うのが女の子とは限らな――いやここは裕也君を信じるべき! きっと裕也君の好きな子ってすごく可愛い女の子だよね! 思わず守ってあげたくなるような!


 今日は少し、裕也君の周りをよく観察してみよう。

 いつも裕也君ばかり見ていたから、裕也君の幅広い交友関係を全て把握しているわけではない。

 もしかしたら私が気付いていないだけで、裕也君は学校にいる誰かに特別な視線を向けているのかも。


 でも、裕也君の好きな人を知ったからと言って、私に何ができるのだろう。

 麗華様とのデート同様何かできるわけでもないし、裕也君とその子の邪魔をするなんて、そんなの悟が私にしたことと同じようになってしまう。私は裕也君の恋の邪魔をしたいわけじゃない。


 ……でも、それでも、どうしても気になってしまう。

 なんでも出来て、生徒からも教師からも人気の裕也君が、告白できずにいる、恋の相手。


 どんな相手なのだろう。

 学校にいるという情報しかない今、特定できる条件が少なすぎる。

 女か男かも正直わからないし(男という可能性を考える時点でおかしいのだが)、どの学年かもわからないし、ひょっとしたら先生の中にいるのかもしれないし……。


 ただ唯一、麗華様ではないということしか、今の私にはわからないのだ。考えていたらきりがない。


 私は朝から深い疲労を感じながら、ベッドから降りた。


 ただでさえ昨日、裕也君に好きな子がいたという事実を知って絶望しているのに、更に朝からあんな夢を見てしまったのだ、私の心労は絶えない。


 気分を紛らわせようと、私は部屋のカーテンを開いて窓の外を眺めた。

 窓ガラス越しに雲から差し込む光が見える。

 まるでそこから天使が降りてきそうなほど、その景色はガラス玉のように綺麗だった。


 空はこんなに綺麗なのに、私の心は沈んだまま。

 好きな人に好きな人がいた、なんてよくある話だろう。

 でもそれだけでこれだけ心が沈むとは思わなかった。


 恋って、恋してる時が一番楽しいんだなぁ……。


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