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なぜか私は恋敵と付き合っています  作者: 多美橋歌穂
第三章
20/102

写真

「ケーキ美味しかったねー。悟、ごちそうさま」


 ホイップとイチゴがふんだんに使われた悟の誕生日ケーキは、大変美味でした。

 最後に残しておいたイチゴを悟に横取りされた恨みだけは、一生忘れない。


「俺が買ったわけじゃないので、それは裕也先輩に言ってください」

「都子先輩達と一緒に買った物だから、気にしないで」


 あまり遅くならないうちにと、誕生日パーティーは早々に切り上げられた。

 都子先輩と和樹先輩とも駅で別れ、三人で夜道を歩く。


 ちなみに私からのプレゼントは、写真立だ。あらかじめ裕也君がカメラをプレゼントすると知っていたから、それに合う物をプレゼントしてやった。

 私からのプレゼントなんて使わない気もするけど……。


 裕也君はこの日の為に、色々考えていたのだろう。

 人気のカフェを予約したり、誕生日プレゼントを予め用意してたり、名前入りのケーキまで用意して。

 大好きな人からそんな風にサプライズをされたのだ、悟はさぞや嬉しいだろう。いつも通りの無表情で澄ました顔をしているが、内心はすごく嬉しいに違いない。

 私だったらニヤニヤ止まんない。悟が羨ましすぎる……。


「優里先輩、そこ立って下さい」


 裕也君から貰ったカメラをじっと見詰めていた悟が、突然立ち止まって私に言った。


 そこに立ってくださいだって……?

 いや、私普通に立ってるけど……。外で座るほど、野性味溢れてないし……。


 意味がわからず真顔で悟を見つめ返していると、悟は私に理解を求めるのを諦めたようで、私と裕也君の前に走ってサッとこちらを振り返る。そして。


 ――カシャッ。


 カメラのフラッシュを浴びた私と裕也君は、突然の悟の行動に茫然とする。

 フラッシュによりチカチカしていた目が復活する頃に、ようやく悟が私と裕也君をインスタントカメラで撮影したのだと理解した。


 ……え、どうしよう、これって裕也君とツーショット!?


「なんだよ悟、使い道ないって言ってたくせにさっそく使ってるじゃないか」

「折角あるなら使わないと勿体ないですからね」


 再び歩き出した悟と裕也君の会話を聞きながら、私はどうやって悟から今の写真を貰うか思考を巡らせるのに必死だった。いや、貰える可能性は低い、隙を見て奪うか……?

 裕也君とのツーショット写真なんてこの後の人生において二度と手に入らない! 絶対に欲しい!


 土下座してでも欲しかったけど、裕也君の手前そんな無様なことはできなかったので、私も適当にニコニコしておいた。ニッコニッコ。私はやましいことなんて一切考えてませーん。


「じゃ、二人とも気を付けてね。また月曜日」

「うん、またね」


 裕也君と十字路で別れる。悟の家もその方向だが、誕生日会が終わる頃に私を家まで送ると言ってきたので、お言葉に甘えることにした。

 こいつ、一応私を女の子扱いしているらしい。


 裕也君は何を察したのか、悟と一緒に私を送るとは言い出さず、先程一人で帰路に着いてしまった。

 本当に何を察したのだろう。多分その気遣いは間違ってるよ裕也君……。


 裕也君の姿が見えなくなると、私は顔から笑みを消し、真剣な表情で悟を見詰めた。


「……悟、さっきの私と裕也君のツーショット写真、ひょっとして今日のお礼として私にくれようと……?」

「は? 裕也先輩を撮ろうとしたんですよ、優里先輩が邪魔だったので移動して貰おうとしたのにどうして伝わらなかったんですか? 無能」

「そこ立ってくださいって避けろって意味だったの!?」


 てっきり私の写真を撮ってくれようとしたんだと思ってたのに!


「おかげで優里先輩のアホ面まで撮れちゃいました。裕也先輩の所だけ切り取って飾るしかないじゃないですか」

「そこまで徹底して嫌ならその写真私に譲ってよ!」

「五百円」

「お金取るの!?」


 と言いながら真っ先に財布から小銭を取り出す私を、悟は呆れと軽蔑の入り混じった眼差しで見詰めて来た。

 くっ……これが体は正直ってやつか……てか小銭足りない……。


「五百円はいいので、来週飲み物奢って下さい」

「来週? 学校でってこと?」


 私が聞くと、悟は「勿論」と言って頷いた。

 ……読めた。私にジュースを奢って貰うのを理由に教室に来て、裕也君と会うつもりだ! 自分の財布にダメージを与えることなく裕也君と会う口実を作るとは、なんて卑劣な!


 ……悟って、思考回路が私とちょっと似てるんだな。複雑……。


 なんて思っていたら、悟に頭を叩かれた。


「うっ……なんで今叩いたし……」


 脳が! 脳が揺れる!


「なんか今気に障ることを言われた気がして」

「気だけで女の子の頭叩かないでよ! 脳細胞死んでバカになったらどうするの!?」

「その発想が既にバカですよ」

「バカって言った方がバカだから!」

「うわぁ……」

「何その反応!」


 私達はそのままくだらない会話をしながら、暗い道を歩いた。

 悟が家の前まで私を送ってくれたのは、まあ誕生日を祝って貰ったささやかな礼のつもりだろう。


「それじゃあ優里先輩、俺は帰りますね」

「うん、送ってくれてありがとね」


 私が玄関の前で素直に礼を言うと、悟は一瞬ぽかんとしてから私に背を向けた。

 あれ、私今変なこと言った?


「……優里先輩って、損する性格ですよね」

「え?」

「なんでもないです、ジュース忘れないで下さいね」

「? うん」


 私の返事を聞いて、悟は歩き出す。が、三歩程歩いた所で足を止めて、くるっとこちらを振り向いた。

 なんだろ、お別れの一撃とか言って殴られるのかな? そこまで鬼畜ではないか……。


「優里先輩」

「なに?」

「今日はいろいろありがとうございました」

「……は?」


 悟の口から礼を言われるなんて、私は夢でも見ているのだろうか。


「じゃあ月曜日、また会いましょう」


 そう言って遠ざかる悟の背中に、私は小さな声で呟いた。


「……どういたしまして」


 なんやかんやで私は、悟とまた会うような約束をしてしまった。


 ……取りあえず、写真の為にもヒビキ君に土下座してお金貸して貰わなきゃ……。

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