表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なぜか私は恋敵と付き合っています  作者: 多美橋歌穂
プロローグ
1/102

忘れられない

 柔らかくて温かい、キスの瞬間。


 一生忘れることはできないであろう、唇の感触。


 放課後の教室で好きな人と交わす、甘く幸福に満ちたロマンチックな口付け。


 ……だったなら、どれほど幸せなものだったか。


「どういうことなの……」


 ――さて、なぜこんなことになったのだろう。


 教室の冷たい床に跪き、女子高生らしからぬ体勢で首を垂れることになった私は、自分の身に起きた不幸により、頭の中が真っ白になっていた。

 身も心も灰になってしまいそう。


 悲劇? 惨劇? そんな言葉で片付けられるようなものじゃない。

 十六歳にして必死に守ってきたファーストキスを、見覚えのない初対面の男子にあっさりと奪われ、さらにそれを好きな男子に目撃された――そんな状況の悲惨さを的確に表現できる人が、この世に存在するだろうか。


 なぜ。どうして。それ以前に――あなた誰?


 ぐちゃぐちゃと音を立てて混乱しきった私の頭の中には、疑問符が飛び交っていた。


 教科書を開いたとしても、ネットで検索をしたとしても、今の私にその答えを教えてくれる存在は一人しかいない。


 私に突然キスをして、それを私の好きな人に見せ付けて、「俺達付き合い始めました」なんて嘘八百を宣言した、名前さえ知らなかった一年生の男子生徒。


 当のそいつはといえば――


「――いつまでそんな所で項垂れてるんですか? 床好きなんですか? 変わった人ですね。先輩の胸にも立派な床が付いてますし、それで満足したらどうです? ほら、ヒマワリのように上向いてくださいよ」


 どこからそんな毒舌が沸いて出るのか。

 教室の床に跪く私を、呆れたような表情で見下ろしてくる最低男。


「……あのさぁ……」


 本気の殺意というものを、十六歳で覚えてしまった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ