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私の弟たち、可愛いんです  作者: しまね
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3

作中に出てくるリシルという単位はお金の単位です。


「アリーナ!!!これ見て!!!私が作ったのよ!上手にできたと思わない!?」


アリーナが食事を食堂に並べていると、ジャネットがたくさんのミサンガを持って走り寄ってきた。



別館に追い出されたあの日から3年が経って、ジャネットは6歳になった。

その間両親は一切干渉してこなかった。

その為、使用人たちの手によって育てられているのだ。アデルが率先して貴族に必要な教養やマナーを教えているが、それを使う機会も無ければ、周りに使っている者もいないのでこの通りだ。


幼い頃は両親が好きになってくれるように、と自分で行動を制限していたようだが、もうそれを気にする必要はない。ジャネットは両親が絶対(・・)入ってくることのないこの別館でのびのびと成長していた。



「お嬢様、元気なのは良いことですが、食事の準備をしている横で走り回っては危ないですよ?」


アリーナが注意をするとジャネットがハッとして


「ご、ごめんなさい。でも、やっとみんなの数分、綺麗にできたから、アリーナに1番に見せたかったの.....。ごめんなさい。」


「分かっていただけたのなら、良かったです。それにしてもこれだけたくさん。しかも全てに加護をつけて....。お嬢様、よく頑張りましたね。どれも上手にできてますね。」


アリーナはそう褒めるとそのままテーブルに食器を置いてジャネットの頭をくしゃくしゃと撫でた。

えへへへ、と嬉しそうにジャネットが頬を赤らめた。


アリーナはもう一度、ジャネットが作ったミサンガをよく見る。編む時に魔力を練り込んで作ってあるのが分かる。ミサンガに魔力を一定量以上込めて作ると、1度だけ受けた攻撃を肩代わりしてくれる。肩代わりしたミサンガは切れてしまうが、大切な人へのプレゼントとしてよく贈られる。


「みんなに配るの!ご飯食べる時に渡すから、アリーナも手伝って!」



朝の8時に別館の朝食は始まる。

本館での仕事が休みの者と、別館に配属されている使用人全てと、そして、ジャネットが一緒に食事をする。

普通、貴族では考えられないが本館にいた時からジャネットは使用人たちとご飯を食べる。本館にいた時は、ジャネットが寂しいと涙を零して食事に誘ったからだった。別館に移ってからアベルが、


「貴族ともなれば、使用人と食を共にしません。立派な貴族になるために、食事は分けることにしましょう。」


と宣言したところ、


「わたしたちは、かぞくでしゅ。なので、いっちょにたべるのがただしいでしゅ。もっとなかよしなかぞくになるために、ごはんはいっちょでしゅ。」


と返され、アベルは何も言えなかった。



今日は食堂の入り口にジャネットとアリーナが立ち、ジャネットの作ったミサンガをみんなに渡していた。


「あ、ジーンだ!おはよう。これ、私が作ったの。ジーンにもあげるわ!」


朝練を終えて食堂に来たのは、ジャネットの護衛のジーンだ。彼の属性は火。ジーンに駆け寄ってミサンガを突き出す。


「おお!すげぇーな!うまくできてる。これだけ強力なら、しっかりと護ってくれそうだ。ありがとうな!!」


ジーンはにかっと笑って手首にミサンガを巻いた。


「ジーン、なんですその言葉遣いは。敬語を使いなさい!敬語を!!」


アリーナは、ジーンを見かける度にジャネットへの言葉遣いを注意しているが直る気配はない。

そしてそれを見慣れているジャネットは何も気にしない。アリーナの言葉に被せ気味に、

「ホントに!?いつもはジーンが護ってくれてるから、ジーンのは特別に魔力込めたの!」


「すげぇ綺麗な水色してるもんな。全部にこんだけ力込めてんのかとびっくりしたわ。そうか、特別か。ありがとな。」


ジーンはもう一度お礼を言ってジャネットの頭を撫でて、少し考えるようにミサンガを見つめた。

話を無視された形になったアリーナは、いつものこといつものことよ、とイライラする自分を抑えていた。


ジーンが綺麗な水色、と言ったのは、物に強く(・・)魔力を込めると色が込めた属性の色に侵食されるのだ。火属性なら赤。水属性なら青。風属性なら緑。雷属性なら黄。土属性なら茶。込めた魔力が多ければ多いほど、色は澄んだ色になる。


ミサンガにこれだけ綺麗に色をつけるのは難しい。元々色のついた糸を使えば別だが。ミサンガは攻撃を肩代わりしてくれるが、編んでいる途中はただの糸だ。そこに一気に魔力を押し込めば糸は耐え切れず切れる。それにミサンガを編み始めてから編み終わるまで、ずっと一定の魔力の量を込めなければ色にムラができる。

とてもじゃないが、普通はできない。


普通のミサンガは大体300リシル程、

身代わりのミサンガは大体5000リシル程する。高いと思うかもしれないが売っている物は、職人が作ったものでそれに見合った価値がある。

だが、このジャネットの作ったミサンガはどうだろうか。肩代わりどころか反撃もできそうだ。そこまで考えてジーンは、ジャネットがマーキュリー家の子であることを思い出した。

こんな別館に押しやられ、俺らなんかと飯食ってるがこいつはマーキュリー家の子なんだ。

「はははっ」


急に笑い出したジーンをアリーナは気持ち悪そうに見ていた。ジャネットはとっくに、違う人にミサンガを配っていた。


ジーンにとってジャネットは妹のような存在だ。これからの成長が楽しみだ。


その日食堂では、終始ニヤニヤと食事をするジーンが見られ、アリーナの冷たい視線がジーンに浴びせられていた。



「アリーナ!手伝ってくれてありがとう!はいこれ、アリーナの!!」


「!!?」


魔力の込める量を調節してミサンガに[Alina]と書かれていた。

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