表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の弟たち、可愛いんです  作者: しまね
12/13

12

あの日からお嬢様は、アリーナからもらったブレスレットをつけています。そして使用人の元に行っては楽しそうに、ワザとらしく髪をかきあげ、ちらちらとブレスレットに目線を送っています。使用人が、可愛らしいブレスレットですね、と声をかければそこはもうお嬢様の独壇場です。


「そうよね!これ、アリーナがくれたの!私に弟か妹ができるお祝いなのよ!それに見て!ここ!!愛するジャネットって彫られているの!しかもこれ、光にかざすと透けるように輝くのよ!さすがはアリーナよね!もう私とっても嬉しくて!」


と、怒涛(どとう)の勢いで喋り出し、使用人たちもその勢いにびっくりしています。でもそのおかげか、今のお嬢様にとってご両親に愛される愛されないより新しくご兄弟ができるということが大切なのだと分かる人が増えたのです。


そしてなにより増えたのが、お嬢様へのお祝いのプレゼントを渡す人です。

私とジンもお嬢様にかなり大量のお菓子をプレゼントとして渡していました。それを食堂や兵士の訓練場の隅など人目につく所で食べては


「新しく兄弟ができるお祝いにジーンとカルトがくれたの!」


と、幸せそうに言うのです。

もう私もジーンも狙ってやっているのでは、と疑ってしまうほどです。当然お嬢様が大好きな使用人たちは、自分も、とたくさんの人がお嬢様にプレゼントを渡します。そのうち9割が食べ物です。

そしてまた、人目につく場所で食べて言うのです。


「これ、新しい家族ができるお祝いにもらったの!とっても美味しいわ!私はなんて幸せなのかしら!」


最初は純粋に言葉にしてたかもしれませんがもう、絶対狙ってますよね!?しかもあえて、アリーナのいないところで食べているところを見ると、アリーナはお菓子をこんなにもらってること知らないんじゃないですか!?

他の使用人も気づいているかもしれませんが、基本的にみんなお嬢様には甘いんです。狙っていようが喜んでくれるならとさらに食べ物を送っています。

しばらくはお嬢様にとって幸せな日々が続くのでしょう。......アリーナに見つかるまでの話でしょうが。



ですが、お嬢様はもらってばかりではないのです。最初はもらったお礼に、ハンカチに魔力を込めて刺繍をしようとしていました。お嬢様には合わずに1枚も完成することなく次の案が出されました。


魔力玉です。その名の通り、魔力を固めた玉です。口にすれば魔力が回復し、剣や槍などに当てればその属性を纏います。例えば、火魔力玉を剣に当てれば燃える剣の完成です。魔力玉の純度によってその威力、時間が変わります。回復も含め、自分と同じ属性の魔力玉であれば、他の属性の魔力玉より効果が強くなります。


そして魔力玉の純度は見た目の色で識別できます。純度の低い物だと濁り気のある色に、高くなるほどにその属性の純粋な色に近づきます。そして、滅多に市場に出ることのないかなりの高純度の魔力玉は、透明なのです。属性という概念を越え、魔力そのものなのです。この魔力玉は属性を問わず、かなりの効果をもたらします。


魔力玉の作り方は簡単です。体内にある魔力を体外へ出し、それを凝縮するだけです。

体外へと出すだけなら、私にもできます。ですが、凝縮するとなると私にはできません。というよりも、触れるわけでもない魔力を纏わせるならともかく、凝縮する、の意味が分かりません。

お嬢様にそう言ったら、


「ぎゅっ!ってすればいいのよ!」


と言われて、余計分からなくなりました。

とりあえず、お嬢様には刺繍よりも魔力玉の製作の方が性に合っていたようで、かなりの数を量産しています。綺麗な水色の魔力玉です。



お菓子のお礼が魔力玉とあって使用人たちはもらいすぎだと、さらにお菓子をお嬢様に渡しに行くという良循環。きっとお嬢様の将来はぶくぶくと肥えていらっしゃるのでしょう.....。




そして、一方的に気まずい思いを抱えていたレイラのところに、お嬢様が行っていきました。ニールとともに作った花束に、魔力玉をつけたリボンを結いつけて


「レイラ、これで元気出して?」

と、プレゼントを。

レイラはまた泣いたそうです。




奥様のご懐妊から変わってしまっていた別館の空気も、元の明るいものへと戻り、使用人たちもお嬢様の新しいご兄弟を楽しみに待っております。




あ、


「お嬢様!!!!クローゼットの中からこんなに大量のお菓子が出てきましたよ!!?お菓子のプレゼントは少ししかないとおっしゃってましたよね!これはなんですか!!?それに私に見つからないように隠れて食べてましたね!?

1人で食べられる量でありませんよね?食堂に提供させていただきます!」


「まって!まって!!食べられるわ!!私の胃袋の前ではその量は1人分よ!」


早速見つかりましたね。


お嬢様は食い下がっていましたが、アリーナには勝てませんでした。食堂の一角にお菓子コーナーができました。

常にお嬢様が張り付いておりますが。

ちなみに、執事のアデルからのプレゼントは、異空間バックと可愛らしい水色のリボン。

異空間バックはその辺で売られているものではなく、遺跡の中から見つかった大きさ、重さ、そして個数、全てに制限のないかなりのプレミアもの。リボンも強い水属性を帯びた特別なもの。


アデルはジャスミンにもこれと同じものをプレゼントしている。リボンの色は黒。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ