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私の弟たち、可愛いんです  作者: しまね
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遅くなりました。申し訳ないです。

広場でショーをやっていると聞いた3人はそこへ向かった。




広場の中心では2人の男女がダンスを踊っていた。そこから少し離れた位置で、数人が楽器を持って演奏していた。


女性のスカートがひらひらと揺れるとそこから水の雫がきらきらと舞い、男性が動けばぱちぱちと火花が散る。

それが空中で合わさり、弾ける。今度は風がそれを運び、頭上から降り注ぐ。

日の光を浴びてきらきらと光る雫と、ぱちぱちと弾けるように輝く火花を浴びながら踊る2人はまるでおとぎ話に出てくるお姫様と王子様のようだ。


ほぉ、と広場に集まった人々が感嘆のため息をこぼす。


曲が終わり、2人はお辞儀をして背中を向けあった。するとそこにさらに2人の男女が来て、今度は2組で踊り始める。


先程より少し大きな水玉を舞わせる女性とバチバチと小さなイナズマを走らせる男性。それらが合わさり、水玉の中で光が走る。

もう1組では、先程と同じように火花を散らす男性と小さな竜巻のような渦をいくつも作る女性。それらが合わさり、渦の中にきらきらと光る火花が舞う。


すると、離れたところでバイオリンを弾いていた男性が踊っている2組の間に入ってそこで演奏する。


イナズマの走る水玉と火花を含んだ渦が出会い、高いところまで上がっていく。渦と渦とがぶつかると水玉は地に落ちていき、渦は勢いを弱めつつ大きくなる。

水玉が地面につく瞬間に、バイオリンを弾く男性がタップを踏んでカツン、と音を鳴らす。すると落ちたところから、可愛らしい花が咲く。


気がつくと広場には花が咲き乱れ、優しく風が花を揺らし火花を運ぶ。その中心で2組の男女が華麗に踊り、彼らの頭上からはきらめく水玉が降ってくる。


誰一人として声を発せず、魅入っていた。



曲が終わると、5人は頭を下げた。

見ていた人からは惜しみない拍手が送られた。もちろんジャネットたちもだ。


「すごかったわ!おとぎ話の中の舞踏会みたいだったわ!!私もできるかしら?」


「あれ程繊細に魔法を使えるようになるには相当練習しないとな。」


「魔法の発動のタイミングはもちろん、パートナーとのタイミング。そしてコントロール。それもあれ程の細かさで、しかも踊りながら....。

水玉だけでしたら、少し練習すればできるようになるかもしれませんが。あれ程となると、難しいですね。」


2人はそこまで言って、ちらっとジャネットの横目で見て、心の中で呟く。


(なにより、大雑把だもんな。)





その後も3人は、ショーを見たり露店を周ったりと楽しい時間を過ごしていた。


「さてジェシー、そろそろお使いを果たしに行くか!」


ジーンに言われてジャネットは少し寂しくなった。お使いが終われば、帰らなければならないからだ。いつまでもここで遊んでいられないことは分かっているが、最近味わえていなかった楽しさとさよならかと思うと名残惜しかった。




細い道を通り、少し奥まった所に魔法具屋はあった。こじんまりとした木造のボロい建物だった。だが、なんとなく違和感を覚える建物であった。こんな所にアリーナが手紙を渡す相手がいるのかと不思議になる。


「本当にここなの?」


「ええ、本当にここです」

思わず声に出すとカルロが答えた。

「中に入りましょう」


恐る恐る扉を開ける。


そして、閉める。


そしてさらに開ける。


「あははは!ジェシー、いくらやっても同じさ。ここは少し特別なんだよ」


扉の中は外観からは想像できないくらい立派で、そしてなにより広かった。想像できないというより、物理的に考えてありえないだろう、広さ。それに外観は1階だにも関わらず部屋には2階への階段もある。


「いらっしゃい、小さなお嬢さん」


カウンターに座っていた人が話しかけてきた。とても綺麗な人だ。女性だと思うが、中性的で性別を感じさせない。綺麗という言葉がこれほど似合う人は初めて見る。そして透き通るような声で喋っている。


「お久しぶりです、カティ。今日はアリーナに頼まれてきたのですが」


「カルロ、ジーンも、久しぶりですね。その可愛らしいお嬢さんの紹介を頼んでも?」


思わず聞き惚れてしまった。スッと耳に入ってきてぐるぐると耳に残る感じがする。ひと呼吸おいて、自分の紹介だと気付いた。


「あ、あの!私、ジェシーです。アリーナにあなたに手紙を渡すように言われて来ましたの。こ、これ」


何故だか緊張してしまって、少しばかり震える手で手紙を渡す。

彼女は手紙は受け取らず、私にに目線を合わせるようにすぐそばまで来て屈んだ。


「ジェシー、ですか。素敵な名前ですが、ここで偽る必要はありません。もう1度、教えてください」


ビックリして、喉がひくりと音を立てたのが自分でも分かった。でも彼女の目を

見ていると、なんだかよく分からない安心感が生まれた。


「ジ、ジャネット・マーキュリーと申します。よろしくお願いいたしますわ」

スカートを軽くつまみ、顔を伏せる。この人に礼を欠いてはいけない気がした。


「ジャネット。うん、ぴったりの名前ですね。ジャネット」

彼女は舌の上でじっくり転がす様に何度か私の名前を呟いた。そしてにっこりと笑った。

「私の名前はカティ、カティ・リングウェン・アルビストン。エルフですが、仲良くしてくださいね?」


彼女、改めカティは長い銀髪を耳にかけ尖った耳を見せた。

獣人なら街にもいるがエルフを見るのは初めてだ。エルフは人前には滅多に姿を現さず、とても高貴な存在だと聞いたことがある。その通りだと納得できる。




カティはジャネットから手紙を受け取るとその場で読んだ。読み終わるとクスリと笑って、カウンターに入っていく。何かを取りに行ったらしく、背中に隠す様にして戻ってきた。そしてまた私に視線を合わせる様にしゃがんだ。


「ジャネット、これはアリーナが君の為に私に依頼してきたものです」

カティが後ろから持ってきた手には、銀色のブレスレットだった。不思議な輝きを放っていてとても綺麗だ。そしてなにより、このブレスレットから大きな力を感じる。そこまで見て、気付いた。


「え、私に?」


「ええ、とても大切な人へのプレゼントだと言っていました。内側を見てください」


愛するジャネット


そう彫られていた。


「更にお姉さんになるからとても喜ばしいことだと、なにか特別な物を送りたいと、左腕につけたミサンガを撫でながら私に依頼してきたんです。

大切なあなたに新しく弟か妹ができると、とても嬉しそうでした。あなたの家族が増えてくれるだろうと。」


ブレスレットを手にとった。お腹の底から何かが湧き出す様だった。

本当は言って欲しかった。

街で仲良くなった同い年の子に妹ができた時、みんなにおめでとうと言われていた。家族が増えることは、とても喜ばしいことのはずだ。なのに。

屋敷のみんなが私を大切にしてくれているのはよく分かってる。みんなが私を哀れに思っているのも分かってる。

でも言って欲しかった。

例えどんな状況だろうと、どんな子だろうと、どんなに私との待遇が違うだろうと、私の血の繋がった家族が増えるのだ。

おめでとうと、よかったねと、そう言って欲しかった。



カルロが頭を少し強めに撫でてくれた。

ジーンが抱き上げて、そのまま肩車をしてくれた。その時、手に水が降ってきた。

私、泣いてる。あれ、なんでだろう。手の甲で拭っても拭っても、次から次へと、降ってくる。


「ジャネット、おめでとう。2人のお姉さんになるな」

「お嬢様、おめでとうございます。もうこれからは我儘ばかりではだめですよ?」





屋敷に着く頃には私の目は真っ赤に腫れ上がっていた。

「え!?まだ食べるんですか!?」

「ほら、カルロ、お前甘いもの好きだろ?」

怒るカルロにリンゴ飴を渡すジン。

甘党のカルロはそれから何も文句を言わずにお金を払う。






言葉で表現するってすごく難しいですね。ちゃんと伝わったかどうかが不安でしょうがないです。これからも精進していきます!

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