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初投稿です。お手柔らかにお願いします。
私の名前は、ジャネット・マーキュリー。
ダスカイダ王国の五大公爵家の第一子として産まれた。私は人工のミルクを飲んで育ち、使用人たちの手によって立つことも、言葉も、文字も、振る舞いも教えてもらったのだ。
私が3歳になった時、魔法適正審査が行われた。それ用の陣の中心に立ち、陣の光る色で属性を、光る輝きと起こる現象で魔力量を示す。
これは人生での一大ビックイベントであり、王族、貴族、平民と分け隔てなく行われる。
王都や街に住む者は教会に行き、村や小さな町で住む者は教会が神父を乗せた馬車を転送の魔法陣を経由しながら走らせ、あちこちを周って行われる。
私の生まれた、五大公爵家の一角を担うマーキュリー家は魔法属性の【水】に長けた一家である。魔法属性は、火・水・風・雷・土の五属性と、光と闇の属性がある。建国時に国王を助け、支えた五属性のスペシャリストたちに国王が与えたのが、五大公爵家という名誉だ。
もちろん、生まれてくる子どもが必ずその属性を持っているということもなければ、必ず魔力量が多いということもなければ、必ず才能があるということもない。ただその可能性が非常に高く、過去歴史に名を残してきた者も五大公爵家が多いのだ。
私は3歳の誕生日に行われた魔法適正審査の時のことをよく覚えている。この時も連れて行ってくれたのは優しい使用人たちだった。
周りの貴族は両脇を両親で固め、その後ろをゾロゾロと使用人を引き連れていた。庶民の子ですらその横には緊張な面持ちの両親がいた。それを横目に見ながら、審査の場に入った。
黒く塗り潰された、しかし妙な安心感のある審査の場に白く描かれた魔法陣の中心に立った時だった。白かったはずの魔法陣が青く輝きだし、溢れるように湧き出した水が踊るように宙を舞い、私の頬を、顔を、全身を、撫で、包み込むようにしてから陣の中に戻っていった。とてつもない幸福感と安心感を私の中に残して。
審査の結果はかなり良かったらしく、神官は思わず引きつった顔と声を漏らしていた。付いてきてくれた使用人が私を強く抱きしめて、おめでとうございます、と感極まったように涙ぐみながら祝ってくれた。
家に帰ってから、誕生日の祝いとこの結果に対して盛大なお祝いをしてくれた。私が滅多に使うことのない食堂では豪華な食事が並び、使用人たちの魔法によってとても幻想的な空間となった。
とても満ち足りた気持ちでベットに入り、興奮して中々寝付けなかったが、気がつけばぐっすりと寝入ってしまっていた。
私には双子の妹がいる。私が生まれてから10時間も後になって生まれたため、日をまたいでしまった。そのため、私たちは双子ではあったが誕生日は1日違いだった。
妹の名前はジャスミン。ジャスミンは私より少しばかり小さく、そして私よりかなり手がかかる赤ん坊であった。私の泣く5倍の声量で泣き、両親が私に構うと更にその倍の声量で泣いた。両親はジャスミンにかかりきりになり、私を使用人に任せることが多かった。そしてそのうち、私を構うことがなくなった。
それでも私はこの時、自分は愛されていると思っていた。いつかきっと、愛しているわ、と抱きしめてくれると。
次の日目を覚ますと、ドタバタと騒がしい音がしてジャスミンの魔法適正審査へ行く準備をしていることが察せられた。侍女のアリーナの手を借りて身支度を済ませ部屋を出る頃には両親もジャスミンも家を出ていた。
使用人たちと遅い朝ご飯を共に食べ、部屋でアリーナと絵本を読んでいる時、
バァン!!
と、大きな音が玄関の方から響いてきた。その直後
「あれはどこにいるの!!?」
母の金切り声が聞こえた。
執事長のアデルが必死に諌めているも、もう一度母が同じセリフを口にした。
「あれはどこにいるの!!?」
アデルが返事をする前にドタドタと大きな足音が聞こえた。それがこの部屋に向かってくることに気づき、アリーナが私の腕を引っ張り移動しようとしたが、遅かった。
バァァン!!!
今度は私の部屋のドアを突き破るように鬼の形相をした母が入ってきた。そのまま腕を振り上げ、
パァンッーーーーーー!
私の頬を打った。
「奥様!おやめください!!」
アリーナが必死に母を止めようとしてくれたが、母は聞こえていないかのように私だけを見て怒鳴った。
「なぜお前なの!なぜお前なの!!お前なんて生まれて来なければよかったのよ!お前なんて私の子ではないわ!!」
この時、私は両親に期待するのをやめた。