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第2話

 理琥が寝て何時間か経過した。そろそろ晩御飯の時間が近づいたのか、エミリアが理琥を起こす。


「リク様、起きてください。そろそろ晩御飯ですよ」


「うっ。。うーん・・・」


 理琥は起きてから背伸びをする。それからエミリアと共に晩御飯を食べてから話をする。


「エミリアさんはこの世界にどのような武具があるのか御存知ですか?」


「リク様、私の事はエミリアとお呼びください。それに私に対して敬語は不要です。この世界での武具は剣、槍、斧、弓が主な武器です。そして剣にも片手剣、両手剣、大剣、短剣、レイピア等様々な種類があります。そしてこの王宮には様々な種類の武具があるのできっとリク様がお気に召す物があるかと思われます」


「そうか、ありがとう」


 そうやってご飯を食べているとドアがノックされた。そしてエミリアがドアを開けるとそこには将と凛が立っていた。


「理琥さんいますか?」


「将さんに凛さんですか。2人そろってどうされたんですか?」


「明日からの事について少し話そうと思ってみんなを集めてるんだよ。もしよかったら来てくれないか?」


(めんどくせえええええぇぇ!でもここで行かないと後々面倒なことになりそうだな・・・仕方ないか)


「わかりました。エミリアさん、少し出掛けてくるから片付けとお風呂の準備していてもらえるかな?」


「畏まりました。それとエミリアで良いと先ほども言いましたよね?」


「癖みたいなものなんで許してください!それでは行ってきます」


「行ってらっしゃいませ」


 エミリアに見送られて俺は家を出た。そして6人が将の家へと集合した。



~~~~~~~~~~


「ラキア。皆で相談したい事があるから一旦席を外してくれないかな?」


「畏まりました。では私はお茶とお茶菓子の準備をした後に他の家のメイドさん達と会合を行ってきます。終わりましたらリン様の家にいますので皆でお越しになって下さい」


「わかった」


 そう言ってラキアと呼ばれた将の担当のメイドはお茶とお菓子を準備して家を出て行った。


「さてと、俺達がいるのって異世界だよね?」


 当たり前の事を将が言い出す。


「そうだね。でもいまいち実感わかないよね」


 凛がそれに答える。


「私達どうなるんだろう・・・?」


 光がもっともな事を言う。


「わからん。でも何とかなるよね?」


 雷介が言う。理琥と香織は特に何もいう事が無かった。


「それとみんなに聞きたかったことがあるんだ。明日から訓練が始まるわけじゃん?ペアを組めとか言われたらどう組む?男性3人女性3人だから組みにくくない?」


 将が尋ねる。


「年齢で決めたらどう?わざわざこんなことに時間割くのもめんどくさいでしょ?」


 凛が答える。


「悪くないと思う」


「私も賛成」


 雷介と光は年齢に関しては賛成のようだ。そしてこの時点で半数以上が賛成したため済し崩し的に決まってしまった。


「これからペアの交流会をやろうと思う。それぞれペアの男性の家で話し合ってお互いの中をこれから深めよう」


 将の言葉に雷介と光は頷いて家を出て行った。香織は理琥を見てため息をついた。理琥からするとめんどくさい事が余計に増えた状態であった。しかし動かないのは変である。そのため理琥は香織と共に理琥の家へと向かった。



~~~~~~~~~~~


 理琥と香織は理琥の家にいた。


「あのー、水野さん、どうしましょう?」


「・・・帰っちゃダメかな?」


「良いんじゃないんですかね?別にペアだからと言って仲良くする必要もないですしね」


 香織は男と言う物が苦手であった。


 香織は大和撫子と言う言葉がぴったりと合うような容姿をしている。少しキリッとした目、少し高めの鼻、桜色の程よい大きさの唇、黒い髪を腰のあたりまで延ばしている。そして胸を除いてスレンダーな体系をしている。香織は高校2年生でありながら年不相応の胸の大きさであった。それ故に周りからは下卑た卑猥な視線を浴び続けていた。だからなのか、香織は男と言う物が苦手であった。


(どうせこの男も他の男と同じよ)


 香織は心の中で理琥の事も他の男と同じにしか考えていなかった。


 逆に理琥からすると勇者召喚された自らで考えると人と接するのは極めてめんどくさい事であった。さっさと終わらせて地球に帰りたい。理琥の内心はこんな感じであった。


「そうね。おやすみなさい」


「おやすみなさい」


 そう言って香織は理琥の家を出て行った。そして理琥は凛の家へと行きエミリアに声を掛けて風呂に入り再び夢の世界へと旅立って行った。



~~~~~~~~~~


「それでは訓練を始める」


 理琥達勇者6人は王宮の訓練場にいた。


「そして今から君たちには各々武器を決めてもらう。自分が興味ある武器を手に取りなさい」


 そう言われた6人は目の前にある多種多様な武器を見定めていた。理琥は以前の異世界でも使ってきた片手剣を使うつもりでいた。そして将はハルバートを、凛は短剣、香織は薙刀っぽい武器、雷介は両手剣、光は槍を手に取っていた。


「各々武器が決まったようだな。それぞれの武器に詳しい者に指導を行って貰う。担当の者に従ってくれ。そしてリク殿、貴殿は私が指導を行う。こっちに来てくれ」


 こうして6人の訓練が始まった。


「初めに自己紹介をしておこう。私はフラギスと言う。今後片手剣の訓練を担当する。よろしく頼む」


 理琥は片手剣に関する訓練を受けていた。しかし最初の異世界で片手剣術のスキルをマスターレベル(スキルレベルマックスと考えて頂けると有難いです)まで上げていた理琥からすると正直暇でしかない。しかし目立つ真似はしたくない。そう思いながら訓練を受けていた。


「リク殿、貴殿はもう片方の手には何を持つつもりかい?」


「えっとー俺はもう片方の手で魔法を使おうと思っています。どうも重たい物は苦手なんです」


「なるほど。今後はとにかく試合形式の実践で剣を学んでもらうぞ。早速始めるか」


 そう言ってフラギスと理琥の試合が始まった。フラギスの動きは洗練されていた。しかし理琥からすると隙だらけである。スピード、パワー、テクニック。あらゆる面で理琥は勝っていた。しかしそんな事は知られたくない。その一心で訓練をテキトーに流している理琥。


 ちなみにフラギスはこの国において片手剣の扱いは国1と言われるほどである。実際、片手剣の戦いにおいてフラギスは負けを知らなかった。そんなフラギスであっても理琥の足元にも及ばなかったのである。


「動きは悪くないな」


 もちろん理琥は手加減をしている。そして所々初心者っぽく装っている。傍から見ても不自然さはない。完璧だと思っていた。現にフラギスも理琥の手加減には全く気が付いていない。


 そんな試合を約5分ほど続けたところでフラギスが試合を中断した。


「リク殿、貴殿の動きは素晴らしい。素質を感じる。これからしっかりと訓練を続ければ良き剣の使い手となる」


「ありがとうございます」


「貴殿に教える事はほとんどない。これからの訓練は今回のようにとにかく試合を行う事にする。貴殿には経験が足りていない」


「わかりました」


「うむ、それでは家で昼ご飯を食べてくるといい」


 そう言われた理琥は家へと昼食を食べに戻った。


(理琥って言ったかな・・・彼の動きおかしいわ。どこか手を抜いているように見える・・・気のせいかしら?)


 理琥の動きの違和感を感じた女性が勇者の中に存在した事に理琥は気付かないでいた。



~~~~~~~~~~


 昼食を食べ終えた勇者達を待っていたのは魔法の訓練であった。と言っても今回は初めての魔法の訓練であるため座学である。ちなみに魔法を教えるのはミスティア王女であった。


「本日は魔法に関する事をお話しします。まず魔法は自らの体内にあるMPを消費して発動する物であります。そして魔法に欠かせないのはイメージです。イメージをしっかりと持つ事が出来ればそのイメージ通りの現象を魔法によって引き起こせます。しかしイメージがあいまいなままだとMPを消費するだけで魔法は発動しません。ここまでで質問はありませんか?」


 ミスティア王女の問いかけに誰も質問をしない。


「理解しているようなので続けます。そして魔法には昨日調べたように属性と言う物が存在します。この世界における属性は炎、水、風、雷、光、闇の6つです。そして複数の属性を操れる人にはメイン属性とサブ属性が存在します。そして昨日の水晶の色の割合によりメイン属性とサブ属性に関することが決まります。まずはメイン属性に関する簡単な魔法から初めて行きましょう。まずは炎属性でお手本を見せます」


 そう言ってミスティアは右手を掲げた。


「炎の精霊よ。手の上に炎弾を作り給え」


 するとミスティアの手の上に直径30センチ程度の炎の球体が現れた。


「このように的確なイメージのもと、魔法を使えば魔法を扱うことが出来ます。そして私は詠唱をしましたが、詠唱はあくまでイメージの補完でしかありません。なのでしっかりとイメージできる人は詠唱を行わなくても魔法を扱うことが出来ます。それでは魔法の訓練を始めるために移動しましょう」


 ミスティアの先導の下、座学を行っていた部屋を出て理琥達は朝武器の訓練を行った訓練場へと足を運んでいた。


「それでは先程私が行ったように手の上に魔法の弾を作り出してください」


 ミスティアがそう言うと皆が思い思いの詠唱を行って手の上に弾を作ろうとする。結果としては光と香織は見事作成に成功した。将、雷介、凛は失敗した。理琥はわざと失敗して見せた。


「早速御2人も成功しましたか!では御2人は魔法を使って様々な事を行ってみてください。残った方々は1人1人に講師を付けようと思います。なので講師の方に色々と質問をしてみてください」


 そう言ってミスティアは4人の魔術師と思わしき人たちを連れてきた。理琥からすると闇魔法は手足の如く自由に、しかも無詠唱で行使できるわけではあるが、目立つことは極力避けたいため魔術師の人の話をしっかりと聞く。他の人の講師の話も聞き耳を立てて聞いてみてわかる事であるが理琥に対して教えている講師の魔術師の人の説明は非常にわかりやすかった。例えを挙げるのであれば他の人たちが中学の頃の数学の先生、理琥の講師をしている人が塾の先生と言った具合だ。要点をわかりやすく、そして簡潔に教えてくれる。流石にそこまでされて出来ないのも申し訳なく感じて来た為、理琥は適当な詠唱をして闇魔法で出来た5センチほどの球体を作り上げる。何故こんなにも小さいのか、理由としては単純に理琥が手を抜いているからである。


「お、早速魔法が使えましたね!それにしても・・・大分小さいですね?」


 魔法が使えるようになったことに気が付いた魔術師の人が話しかけてくる。


「ありがとうございます。なんというか力加減が未だによくわかんないのでそのうち慣れて行けばミスティア王女様みたいに出来ると思います」


「なるほど。これからは試行錯誤が大事になってくるから練習あるのみです!頑張って下さい!」


「はい!今回は教えて頂きありがとうございます」


 そう言って頭を下げる理琥であった。


(また手を抜いてる・・・あの子はなんで手を抜いてるの?)


 剣術の訓練と同じ人が再び疑問に思っていた。



~~~~~~~~~~


 その日のメニューを終えた勇者達は家に帰るなり糸の切れた人形のようになって眠りについた。もちろん理琥は手を抜いて適当にやっていたため特に疲れは無い。体育の授業と同じ感覚である。


 それからエミリアが夕食を作り2人で食べ終わってお風呂に入った頃に突如として扉がノックされた。理琥は風呂に入っているためエミリアがその時は対応をした。そしてお風呂から上がった理琥に対してエミリアが来客に関することを話し出した。


「リク様、お風呂に入られている際にマサル様が尋ねて来られました。そしてお風呂から上がったら家に来るようにと伝言を受けました」


「了解。エミリアありがとう」


 そう言って理琥は将の家に行った。中に入るとそこには将、凛、香織がいた。雷介と光はまだ来ていないようだった。


「風呂に入ってのんびりしてたところ呼び出しちゃったりして悪いね」


「気にしないで下さい。雷介さんと堤さんがまだ来てないみたいですが・・・?」


「彼らも君と同じだよ。大事な話は全員そろったら始めようと思う。それまではのんびりしていてくれ」


「わかりました」


 そう言われてから約5分で雷介はやって来た。雷介が来てからさらに10分経つと光が現れた。


「これで全員そろったかな。訓練で疲れているところ集まって貰って悪いな。みんなは本当に魔王を倒せると今日の訓練を受けてみて思ったか?」


 将が尋ねたのは何とも弱気な発言であった。普段の彼からは考えられない弱気発言にペアの凛が驚く。


「倒せる倒せないの問題じゃないと思う。どれだけ掛かっても倒さないといけないんだよ」


 そう言ったのは光であった。


「悪い、そうだよな・・・倒さないといけないんだよな・・・よしっ、これからみんなで魔法について考えようと思う。出来るだけ多くの人に聞いて魔法の使い方のバリエーションを増やしていくべきだと思う。そして未だに使えない俺と雷介、凛は使える人の話を聞いて少しでも何か掴めたらと思う。香織、光、理琥、お願いできるか?」


 めんどくさい。理琥はそう思った。


「魔法と言ってもねー・・・体内にある魔力を感じて頭の中に現象、私の場合は空気中の水分を手の上に集める事をイメージして詠唱でさらにイメージを固めて魔力を放出して魔法を使ってるとしか言えないなー」


 香織がわかりやすく説明してくれた。


「人によってイメージは変わるんだと思う。炎藤君の場合は魔力を燃料と考えて頭の中では火花を起こすイメージで炎が発生すると思う。そして凛さんの場合は魔力で掌の上の空気を高速移動させるイメージをすれば風が発生すると思う。雷介は摩擦で静電気が発生する事を考えれば雷が発生すると思うよ」


「光、ありがとう。なんだかできそうな気がしてきた」


「光さん、アドバイスありがとうね」


「光、サンキューな。なんかわかったかもしれない」


「当然の事を下までですので気にしないで下さい」


 光の詳しい説明により何かしらを感じ取った3人。


「理琥は何か魔法に関する事とかないの?」


「俺は使えたばかりですし・・・それに未だ慣れてもいないので・・・」


「そっか。んじゃーこれからまたペアで話合いをしようか。終わったら各自解散って事で良い?」


 将の提案に頷く5人。理琥としてはめんどくさいこの上ない提案だ。しかし昨日の香織の対応から今日も前日と変わらない感じになるだろうと予想して目立たないように頷いて見せたのだった。きっと今日も特に問題なく終わるはず。そう信じていた理琥であった。



~~~~~~~~~~


 理琥は香織を連れて自らの家までやって来た。そしてエミリアに頼んで席を外してもらう。


「えっと・・・水野さん、どうしようか?今日も昨日と同じで帰る?」


「1つ聞きたい事があるんだけど良いかな?」


「え・・・?別に構わないけど・・・何?」


 香織の聞きたい事があるという言葉に驚く理琥。理琥の中で香織と言う人間は人が苦手な人だと考えている。何故そう考えられるのかと言うと今日の訓練を通して香織は常に人と1歩離れた関係、つまりは周りの人と親しくしようとしていなかったのであった。それを見てしまえば多くの人は人の事が苦手な人と言う印象を抱くと思う。そんな彼女が突如自分に聞きたい事があると言いだしたのだ。少しは驚くのも無理はない。


「今日の訓練受けてみてどう思った?」


「うんとねー、やっぱり学ぶことがいっぱいあると感じたよ。周りのみんながすごいからねー、俺も遅れをとらないようにしないと」


「そう。じゃあまた明日ね」


「うん。またね」


 そう言って香織は理琥の家を出て行った。


(彼は何かを隠しているわ。剣術の時も魔法の時も彼はテキトーに流していただけだったはずよ・・・何を隠しているというの?気になるわ)


 水野香織。彼女こそ剣術の時に理琥が手を抜いていると気が付き、尚且つ魔法の訓練の際にも理琥の手抜きを見破ることが出来た唯一の勇者。何故見抜くことが出来たのか、彼女も一度過去に勇者召喚と言う物を経験していたあらである。そのためなのか武術の訓練でも教官役の騎士を倒し、魔法の扱いにおいてもほぼ無意識に魔法を使ってのけた。そんな彼女だからこそ理琥が手を抜いている事、適当に流していることを見抜けた。そして質問でそれとなく探ってみたのだったが理琥自身も尻尾を掴ませる気は全くと言って良い程なかった。


(夜杜理琥。今回も勇者召喚かーと思ったけど思わぬところで面白い御方と出会えましたわ・・・今後が楽しみです)


 そう思いながら香織は自らの家へと帰っていた。

最後まで読んで頂きありがとうございます!

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