表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

第三話 二日目【前編】

よろしくお願いします。

二日目


目覚めはすっきり。


きっと昨日は一日中ベッドで本を読むか、講義されていたから慣れたんだろう。



「おはようございますエルナード様。朝食の用意が出来ております。」



美味しそうな匂いを纏ったクレアさんが俺に向き直る。



「ありがとうございます、クレアさん。今日も…本読むんですか?」

もはやトラウマになりそうなレベルで読書が苦手になりそうだ。

自然と鬼のクレアに対して防衛本能から敬語が出るほどには…



「いいえ、今日は魔術講習です。午前中は適性検査になります。」

ほっ…

いや、まだ油断ならないぞ俺!


「適性検査ってなにするんですか?」



「適性検査は適性属性、魔力量、魔力線といった比較的伸び代の少ない先天性のものと操作性、想像性、魔術学といった後天的に鍛えられるものの計六種からなります。今日はとりあえず先天性の三種だけを確認しますね。」



おしっ!

読書からの開放か!

「なので、その前に基礎的な魔術知識だけ自習してもらいます。」

ドンっ


見えない。

てか、見ない。

こんな分厚い本なんか読めるかっ…


「ちょ、ちょっとトイレに…」


「読み終ればすぐにでも検査に移れるんですけどねぇ…」

そ、そうは言っても…


「早く終われば魔術訓練まで移れるんですけどねぇ…」


いや、ここで負けたらこれからもずっと主導権を…

「早く読みなさい。今すぐ起きないと本を追加しますよ。」


あわてて本を取る。


【これであなたも魔術院首席に!】

【わかりやすい魔術理論!頻出詠唱節を2000用意!】

【ここで手順を間違えると即死するぞ!正しい魔術陣の書き方!】


なんか胡散臭いぞこれ…


隣に立つ鬼は俺を見てゆっくりと深く頷く。


いや、今度こそちゃんと読もう…


【Q:固有魔法エクストラとはなにか?

A:精霊または神の助けを得る事で使う事が出来る魔法。魔術理論では説明出来ない現象を起こす。】


【Q:六等級の火属性魔術を使うとき、風系統魔術で相殺するにはどうする?

A:風系統の方が基本的に弱いため風属性なら二等級、嵐属性なら六等級、天属性なら十等級で相殺出来る。】


知らんわ!!

まず等級ってなんだし!


これはもうクレアさんに助けを求めるしかっ!

「とりあえず話は読み終わってからです。」

ニコっ


俺はもう知ってる…

それ、全然信用なんねぇ微笑みだから…



仕方ないか。

とりあえず読もう…

人間諦めが肝心ってな。




ーーーーーーーーー



パタン



あれ…なんか以外とわかるな…


こんな才能があったとは。


いや、違うな…読んだことがある気がした。


デジャブ?

特に魔方陣?

の知識は意外と大丈夫かもしれない…



ってあれ?クレアさん?

気付いたら誰もいない。


「クレアさーん…」


ガチャ

「あっ、すいません。クレアさんは今、ちょっと席を外されているので呼んで来ますね。」


扉をわずかばかり開いてそう告げたメイドさんも地味目だけど綺麗な顔立ちしてたな…


なんか心なしか周りの人を見る限り美人が多い気がするんだよなぁ…




タッタッタッ、バンっ!

「エルナード様!?まさかもう読み終わったのですか?」

クレアさんが息を切らせてまで慌ててるけど、俺なんかしたか?



「あ、あぁ。一応、覚えられたと思う…」


愕然といった表情を見せらクレアさん。


「じゃあとりあえず復習でもしてみますか。最初は四大属性の初級魔術からですね…



ーーーーーーーーー



「ホントにカンペキだわ…信じられない…」



そんなこと言っても頭が覚えてるんだからしょうがない。



「とりあえず今日は演習場が借りられないから魔術院で測定出来るものからやっていくわね。

…計算が狂いましたね…ホントはこれだけで三日間くらいみてたのに…少し待っていてください。」


そんな難しいかなぁ?

俺的には詠唱も魔方陣も法則に基づいて考えられてるためわかりやすかったけど。


詠唱なら正式には『我、◯◯〔属性の名前〕の精霊に魔力を対価に命ずる。○○○となり〔形状〕○○せよ〔効果〕○○○!〔魔術名〕』

というかなり法則に従ったわかりやすいものだ。


例えば火球ファイヤーボールなら『我、火の精霊に魔力を対価に命ずる。球体となり攻撃せよ、火球ファイヤーボール!』といった具合だ。


別に攻撃せよじゃなくても、飛べでもいいらしい。


まぁ実際に全ての詠唱を使うのは初等部まででそれ以降はまず中等部なら『火の精霊よ、火球ファイヤーボール』となるし研鑽を積んだ高等部の生徒なら『火球ファイヤーボール』のみでも発動が可能となる。

加えて魔術に精通した魔術師なら無詠唱や詠唱破棄と呼ばれるノータイムでの発動も可能となる。


魔方陣は詠唱を方陣化フォーミングしたもので魔力を流すだけで魔術を発動できる便利なものだ。

難点としては誰が使うかによって陣に書き込む必要のある情報量が変わるということ、つまり誰でも魔力を込めるだけで魔術が発動する魔方陣を作るには詠唱で発動させるより細かい設定が必要となるのがあげられる。

先ほどの火球ファイヤーボールならどこに発生させるか、どれほどの魔力を消費するか、サイズ、熱量、発動時間などが方陣に刻まれる。

魔道具職人になると明確なイメージを補助する文や流す魔力を無駄なく有効化する言葉を独自に見つけて刻むらしい。


バタンっ

「エルナード様?許可が降りましたので魔術院に向かいましょう。」

いきなりドアが開いてクレアさんに手を掴まれる。


「えっ、はやっ!ちょっ、待ってクレアさん、歩くの早いから!」

毛足の長い廊下の絨毯は二人の駆け足の足音をきれいに消し去る。


波乱の二日目はまだ終わらない…



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ