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◆絶滅寸前の人間は、魔族の友達に会いに行く  作者: 駄文職人


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1/15

森の中で

「――きゃああああっ!!」


 甲高い悲鳴。女の声だ。ラスラはウサギ用の罠を回収する手を止めて耳を澄ませた。


 誰だ、こんな森の深くで?


 足元には罠にかかっていたウサギが縄に縛られて並んでいる。全部で四羽、全て角をへし折った後なので昏倒していた。

 今日はたくさん獲れた。鍋にしようか丸焼きにしようか、と鼻歌混じりに作業していたところで、水を差された形だ。


 思わず顔をしかめ、袋の中にツノウサギを放り込んだ。ぎゅっと口を絞って逃げられないようにする。


 そして、側に置いていた弓と矢筒を担いで走り出した。

 ラスラにとって森の中を駆けるなんて朝飯前だった。彼は五つの頃から十五になった今まで、ずっと狩人である。


 茂みを掻き分け、木の陰から様子を伺うと――そこには、旅装束の少女がいた。荷を背負い、小さなカバンを胸に抱きしめながら、木の上にいる。

 その真下には。


「うわ、魔熊」


 大人二人並べたほどの大きさの熊が幹をガリガリと引っ掻いていた。その爪が今にも少女の足を引っ掛けそうになっている。


 魔熊ならあの程度の木、登るもへし折るも容易にできる。咄嗟に逃れるために上へ逃げたのだろうがあれでは駄目だ。すぐに食いつかれるだろう。


 ウサギの袋を脇に置き、ラスラは短弓に矢をつがえた。

 幸いこちらは風上、まだ気付かれていない。


 細く息を吐いた。

 腕に力を込めて弦を引き絞る。

 狙いをつけ、矢を放つ。


 ピュンッーー!


 放った矢は狙い通りに魔熊の片目を貫いた。


 咆哮。


 目の前の餌に夢中だった魔熊が影に潜んだ殺意にようやく気が付くが、もはや遅い。


 狩猟用ナイフを鞘から抜き放った小さな狩人がもう肉薄している。

 薙ぎ払おうとする大きな腕を屈んで避け、腕を振りかぶってナイフを魔熊の首元に突き立てる。

 魔熊がわずかに口角を引き上げた。


 愚か、と笑ったのか。少年の腕力では刃は半ばまでしか入らない。


 だが次の瞬間、ラスラはハンマーをナイフの柄めがけて叩き込んだ。


「ーーっ!」


 今度は悲鳴も上がらなかった。気道を塞がれては掠れた吐息しか漏れない。


 魔熊の胸を蹴って距離を取った。だが追い縋る巨体がラスラに覆い被さろうとする。魔熊の生存本能はこの小さな狩人を早く殺さねば危険だと理解していた。


 腹を食いちぎらんと大口を開ける魔熊の残った片目へ鋭利な角が投擲される。先ほどツノウサギから折り取った真っ直ぐな角である。

 鋭く尖ったそれは、槍のように残った熊の目をも抉った。


 途端に視界を失った魔熊が怯む。


 その隙に、再びラスラは喉元に刺さったままのナイフ目掛けてハンマーを振りかぶった。


 バキッ。


 何かが折れた音がして、大魔熊はビクリと痙攣した。巨体が力を失ってドウっと地面に倒れ伏した。


 下敷きになる寸前で飛び退いていたラスラは、二本目の角を構える。倒れたとて油断ならない。知性ある類は死んだふりをすることがあるからだ。


 慎重に近寄り、魔熊が血の泡を吹いて間違いなく絶息しているのを確認して、息をついた。


 そこでようやく木の上の少女のことを思い出した。


「おーい、大丈夫かー?」


 急に現れ、大魔熊を目の前で仕留めた少年の姿を、少女は呆気に取られて凝視していた。


「その丸い耳……人間種……? うそ、初めて見た……」


 そう呟く少女の耳は上に向かって尖り、瞳孔は縦に裂けている。




 典型的な魔族の特徴であった。


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