54話 飲み会帰り
そして飲み会の一次会は終了。
同僚は上井さんを肩車して、タクシーを呼んで帰っていった。
俺は二次会は参加せず、そのまま帰宅のために駅に向かう。
「……待って」
「ん? 津賀碁さんか。また明日からよろしく」
「どうしてVtuberと分ったのよ?」
なんか喋り方が馴れ馴れしくなった。
こっちが本性か。
「応援している推しと、やっている事が似ていたからな。君の方がきっと、実力も本気度も上だけれども」
天使の配信は、言っては悪いが趣味の域を出ない。
津賀碁さんは絶対にガチだ。纏っている空気が違う。
「ここだけの話、部長さんに声をかけてもらったわ。
そのうち、ここの企業案件をする予定」
「それはコンプライアンス的に、喋っちゃいけない秘密では?」
「私の正体がバレたら、その計画が台無しになるからね。数千万円の損失、だから、内緒ね。あと、あなた、悪霊に取り憑かれてるわよ」
悪霊、ねぇ。
強大な悪霊の封印が解かれて以降、悪霊や魔法の存在が明るみになり、政府や企業やらが躍起になって、魔法使いを取り込もうとした。もちろんそれに乗じた詐欺が横行した。
うちの会社にも、魔法使いを名乗る詐欺師が数件来たが。
ユウネが裏から手を回して、全員刑務所にぶち込んだ。
それ以来うちの会社には、自称魔法使いは来ていない。
多分彼らの中でうちの会社がブラックリスト入りしてるのだろう。
とにかく、悪霊が見えるという津賀碁さん。
放っておいて悪霊に襲われないだろうか、なあ、ユウネ?
『彼女自身が、相当数の信者を集めて、半ば精霊化しています。まず野良の悪霊では、近づくだけで蒸発するでしょう』
信者……視聴者のことか。
まあ、いいか。津賀碁さんには被害が及ばなそうだ。
助ける必要は無いな。
「また明日」
「ええ」
それにしても、身近に居るものだなぁ、Vtuber。




