52話 見えている
「ギブっす」
「いえーい、5万円ゲット〜」
同僚の、新入社員を飲み潰してお持ち帰りしよう作戦は、無事に失敗に終わった。同僚はぐったりしている。
『天使の配信が始まりますよ』
ユウネよ。俺がいくら天使信者だからといって、飲み会途中に動画を見たり途中離脱するわけなかろう。
大丈夫。配信待機枠で、今日は参加できない事はメッセージを送ってある。配信アーカイブを後日見るとするさ。
もぐもぐ。ポテトフライは俺しか食べてない。
俺はポテトフライしか食べていない。
焼肉争奪戦には連敗中だ。
てか、もっとよく焼いて食べろよお前ら。
ガブリ。
リンが俺の首筋を噛んでくる。
吸血だ。この頃は頻度が減って週3回くらいだが。
『いえ多いですよ』
透明化しているので、周りには見えない。
ん?
津賀碁さんが、俺の方を見て瞳孔を開いて、引いている顔をしている。リンが津賀碁さんの方を向き、腕を伸ばす。
津賀碁さんが後ろにのけぞる。
ほう、見えているな。
『君のパンツの色は赤色だ〜!』
リンがビシッと津賀碁さんを指差す。
津賀碁さんが股を隠すように手を動かす。
聞こえてるな。
なるほど。
だから俺の方を見て、険しい表情をしていたのか。
ユウネとリンが見えて聞こえていたら、そりゃ警戒するよなぁ。
◇ ◇ ◇ ◇
トイレに向かい、戻ると俺の席に部長が居た。
こういう店って、席交換ダメじゃなかったっけか?
まあ、仕方ない。
俺は部長の居た席へ移る。
男ばかりのムサい机だ。
そしてポテトフライを注文だ。
「紐之、紐之。あの新入社員たち、どんな人か教えてくれよ」
50代同僚の1人が聞いてくる。
「そうだな、俺の見たてでは……まず、黒髪のケバい化粧の「ひっどーい!」上井夢波さん、一見ギャルっぽく振る舞っているが、……あの隙のないたたずまい、間違いない、あれはスパイだ」
「紐之、酔っ払うと冗談言うんだな」
誰が酔っ払いじゃい。




