45話 正史からの分枝
あの後、リンが鈴木さんの頭に触手を突き立てた。好感度をリセットしたらしい。
帰り道。
ふと考える。
俺の好きな人は、天使。それは間違いない。
だが付き合いたいわけじゃない。推したいだけ。
鈴木さんが嫌いなわけではない。
ただ何か違うなと。何が違うのか、自分でもよく分からねーや。
俺は脳内おじいちゃんを呼び出す。ユウネとリンは乱入禁止な。
『久しぶりじゃの〜』
最近はユウネにリンが居たから、寂しく無かったからな。
『ワシは寂しかったのう。それはそうと、リンはワシの一目惚れした外人さんにそっくりじゃ。ドイツまで追いかけた青春時代を思い出すのう』
何回その話を繰り返すんだ。金髪の女性を見る度に言ってるだろ。
『不思議じゃ』
それはそうと、俺の心情整理に付き合ってくれよ。
コンビニに寄り、酒とつまみを購入し、再び帰路へ。
歩き飲みは、最近は注意されるから、帰って飲むことにしよう。
電車に乗る。自分の顔が反射して映る。最近は血色が良いな。
おじいちゃん、俺、これで良いのかな?
鈴木さんに精一杯助力すべきなのか、わかんねーんだ。
『やりたいなら、やればいい』
それが鈴木さんの人生に強い影響を与えても?
『彼女の人生の責任をとるのは、彼女自身じゃ。
クータが支えようが、支えまいが、な。
どんな結果になろうと、それは彼女の責任じゃ』
電車から降りて、歩く。
どうして、俺はこんなに思い悩むのか。
『考える余裕が出来たからじゃよ』
考える余裕?
『ユウネが現れる前のクータは忙殺されておったじゃろ。
他人のことなんて考える余裕がないほど。
今は、他人のことを考える余裕がある。
ユウネが食事の用意や仕事の手伝いをしてくれているからのう』
これは余裕と言うのだろうか?
俺の違和感の正体は何だろう。
『ユウネが、もし現れなかったら、どうなったと思うかの』
多分俺は変わらず働き、部長が変わり、天使に会って、鈴木さんに会って。
『そして悪霊が復活する』
……鈴木さんがパワーアップ出来ず、死ぬ。
日本が滅茶苦茶になる。
それが本来の正史なのだろう。
あるべき歴史になっていない。
それが違和感になっている。
そういうことか?
『そんな大げさな話ではないのう。
ユウネに始まり、本来なら悩んでいなかった人間関係に悩んでいる。それだけのことじゃ』
「クータ様、家に着きましたよ」
「なあーん」
帰宅したら、黒猫のアインが出迎えてくれる。
ま、なるようになるか。




