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4話 名付け2

「なぁー、なぁー、なぁー」


家に帰るやいなや、アインの飯の催促だ。


「ほれ」

「なむなんなむ」


モニョモニョ言いつつ、ご飯のドライフードをかきこむアイン。

俺も飯にするかな。


「そういえばジョーカー」

「結局その名前ですか」

「いや、仮名。あんたは食事はするのか?」

「必要ありませんが、食べることも出来ます」

「ふむ、じゃあ食わなくていいかな」


俺も余裕があるわけじゃないし。


余裕、か。


心の余裕。金の余裕。体力の余裕。時間の余裕。

俺も無いが、現代人の多くに無さそうな気がする。


「名前だが、裕寧(ゆうね)ってのはどうだ?」


余裕がありそうな名前にしてみる。


「いいと思います、マスター」

「そのマスターってのは、やめようか」

「ではご主人様」

「もっとあかん。そうだな……クータと呼ぶように」


俺の名前の屑代郎(くずたろう)のニックネームだ。


「……クータ様こそ、名前変更すべきでは……」

「いや、俺はいい。今のところ困ってないし」


むしろ、営業のネタになる分、この変な名前はある意味美味しいのだ。


「改めて、よろしく、ユウネ」

「はい、クータ様」


下の名前やニックネームで呼び合うと、彼女か新婚さんみたいな感じがする。

異性の友達? いるわけねーだろ、そんなもん。


「さて、飯にしよう。ユウネはその間休んでくれてけっこ「食事を作らせていただきます!」さよか」


んー、冷蔵庫の中、何が入っていたっけな?

賞味期限切れのものが8割くらいだった気がするが。


ユウネが冷蔵庫をあける。

食材を取り出す。


「はぁー!! 時戻し!!」

「なんぞ」

「賞味期限切れの物の時を戻し、出荷時の新鮮な状態にしました」

「ほえー」


透明化といい、何でもありか。


「はぁー!! パイロキネシス!!」

「いくらうちに余裕がないとはいえ、ガスくらいは使ってもいいんだからな!?」


超能力で火起こしなど、超能力の無駄遣いをするんじゃない。


15分後。

食卓にはから揚げ、ポテトフライ、ピザトースト、ベーコンサラダ、たこ焼きが並んでいた。


「おお、うまそー」

「クータ様に十分な野菜を提供出来ないとはこのユウネ、一生の不覚! かくなる上は腹を切ってお詫びを」

「せんでいい。いただきまーす」


もぐもぐ、う、美味い。

いや、何で? 俺がレンチンしたのとどうしてこんな違いが?


野菜といえば、賞味期限切れのトマトとレタスがあったが、超能力で新鮮な状態に戻っている。

めちゃ美味い。


「なぁーう」

「こら」


アインが、ベーコンサラダに顔を近づけクンカクンカする。


「キサマ、クータ様の御膳を盗もうとする不届き者めが! かくなる上は」

「喧嘩するなよ?」

「くっ……無念」


アインを抱きかかえ、隣の部屋に放り込み鍵をかける。


「なぁー、なぁーん」


開けろと言うが、無視。


「さあ食事再開だ」


食事が美味しいのと、それ以上に。

誰かと食卓を共にするのが、久しぶりで、何だか温かい気持ちになった。

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