38話 飲みたまえ
仕事の帰り道、気になった事を聞く。
「ユウネ、リン。どうして鈴木さんが、あと7日で強大な悪霊に会うと分かったんだ?」
『未来予知をしたわけではありません。この一帯の脅威となりうる存在について、あらかじめ調査が済んでいます。そのうちの1体が、たまたま鈴木という者の住処の近くに封印されていて、その封印が7日後に解けるというだけの話です』
『守護霊だけじゃ力不足で、あの子は死ぬだろうね〜』
なるほど。
自宅に帰る。
手を洗いつつ、話を続ける。
「助けてやれないのか?」
『可能かどうかでいえば、可能です。しかし、そこまでする義理はありませんし、それに』
『その悪霊が出てくるのをキッカケに、日本中の悪霊が活性化するね〜。狙われるのは祈祷師や陰陽師なんかだから、どのみち鈴木は狙われ続けるよ』
「マジかよ」
「なぁー」
アインをナデナデする。
どうすればいいんだ?
『どうにかするために吸血したのでしょう、リン?』
『ま〜ね』
「どういうことだ?」
『魔力を生成する人工臓器、それを作って鈴木に埋め込めば良いと思います』
『つまりパワーアップ、変身、みたいな〜?』
『肉体改造に近いでしょうか。自分にふりかかる火の粉は、自分で振り払ってもらいましょう』
要約すると。
鈴木さんから採った血で、魔力を生み出す臓器を作って、鈴木さんに移植する。そうすると鈴木さんはパワーアップして、悪霊と戦えると。
「そんなうまくいくのか?」
『うまくいかなければ、彼女が死ぬ、それだけです』
「あと、悪霊が俺達を襲う可能性は?」
『アリが象を襲いますか? さすがに彼らにも力の差を感じるくらいの分別はあるとは思いますが。もし襲ってきたなら、生まれてきたことを後悔させてやりましょう』
『死んでるけどね〜』
言いつつリンは、血を浮かべてボコッ、ボコッという音をたて、それを変形させる。骨と黒い石で出来たような見た目の、ミニトマトくらいの大きさのものを作った。
『これを飲ませれば、体に定着するね。じゃ、いってきま〜す』
リンはパタパタと手を振り、家から出た。
◇ ◇ ◇ ◇
・鈴木美佐代視点
自宅。私は神社の近くに住んでいる。
両親はよく出張に出ており、ここ数年は私一人のことが多い。
それにしても、霊が見えることを伝えても、全く引かなかったな紐之さん。
両親や数少ない友達含め、そのような人は貴重だ。
この縁は大事にしたい。仮にあの会社に就職しなくても、連絡先くらいはなんとか手に入れたい。
それにしても、あんなハイカラな霊は初めて見た。
だいたいの霊は日本風というか、西洋を感じさせないものが多いのに。
銀髪巨大メイドは、西洋版の八尺様かな?
羽の生えた金髪の鬼は吸血鬼だろうか。
「はろ〜」
「……」
ちょうどその吸血鬼が来た。
「さあ、これを飲みたまえ」
「え、何、なな」
「口を開けて〜、さあごっくん」
「むごご〜〜!!??」
気味の悪い塊を飲ませれた。
「げほ、ごほ、ごほ」
「7日後、悪霊が現れるから、それまでに魔法に慣れておけよ〜?」
な、何事? 悪霊? 魔法?
吸血鬼はケラケラ笑うと、ひょいと飛んで出ていった。




