3話 名付け
翌日。今日は日曜、休みの日。
あれは夢では無かったようだ。
普段なら寝て過ごすのだが。
今日は仕方なく重い腰を上げる。
ファッションセンター・シモムロは、低価格で服が手に入るお店だ。俺の家から駅2つ先にある。
俺は普通に外出し、電車に乗り、普通にシモムロで、アメリカンサイズの服とズボンを購入。
パンツも購入。男物だが許せ。
透明化したゴーレムに、買い物した服を袋ごと渡す。袋は透明になる。
そして、パッと透明化が解除された。
服を着たらしい。
ふむ、高身長のためか、胸がデカすぎるためか、へそ出しスタイルだ。
「マスター、ここで消費した金額は必ずお返しします」
「いや、いいよ」
「いけません、金の貸し借りは人間関係に悪影響を及ぼします。まして、私はマスターの所有物。所有物がマスターの足を引っ張るなどあってはいけません」
「そうか。でも、お金を返すってどうやって?」
バイトも出来ないだろう、戸籍自体が無いのだし。
「私はいわゆるAIのように、コンピューター上でやりとり出来ますので。そうですね、天涯孤独で行方不明になった人の1人に成り代わります」
「……聞かなかったことにする」
「ハッキング完了。今から私は『権堂上架亜』です」
「キラキラしすぎ。もちっとマシな名前はなかったのか?」
「一番簡単に成り代われそうだったので。お望みであれば、名前変更の手続きをしますが」
「ジョーカー呼びしてたら、周りが聞いたら何事ってなるよな。う〜ん、名前名前」
メイドっぽい名前って何だ?
セバスチャン?
いやそれだと男か。
俺の心の中のおじいちゃんに聞いてみる。
メイドのゴーレムに名前付けたいんだけどー。
何か案ある?
『凛はどうじゃ?』
それおじいちゃんの初恋の人の名前じゃん、やだよ。
『ならば、ヘレン』
ケラーな人を想起させるからダメ。
『じゃあミルクちゃん』
猫の名前じゃねーんだぞ!?
社会人で普通に使える名前!
『すまんがワシには荷が重すぎる、サラダバーじゃ〜』
俺の心の中のおじいちゃんは諦めてしまった。
何やねん。
「では僭越ながら私から提案させていただきます」
「おう」
「零燈というのは?」
「れいどれいどれい……こら、あかん」
「チッ」
「う〜ん……葵とか?」
「オカンと被ります」
「オカンて誰だよ!?」
結局、駅から家に帰るまで、いい感じの名前が思いつかなかった。




