Ep.9 主のいない城
ギルド<プリティープリンセス>のメンバーである俺は、ギルドマスターのヒメと一緒に世界移動スキル”ワープ”によって新しい土地≪ポーラーシティ>を訪れた。
ポーラーシティを探索している途中、ヒメが森の中に隠された古城を見つける。
俺たちは怪しい古城へ繋がっている崩れかけの橋を見つけて、湖の中心、古城のある場所に渡っている最中だ。
ギィ
「この橋、崩れたりしないよな」
ヒメ
「大丈夫に決まってますわ。早く行きますわよ」
何が決まっているんだろうか。と、思いながらヒメの後を恐る恐るついていく。
びくびくしながらも橋を無事に通りきることが出来た。
ヒメに「案外怖がりですのね、クスッ」と笑われたので少し悔しい。
そんなことはさて置いて、遠くから見るだけじゃわからなかったのだがこの城はかなり大きい。
自分の家の100倍以上もある建造物に思わず息を飲んでしまった。
城の周りをぐるぐると回っていると小さな扉を見つけることが出来た。
城の裏口だろうか。
俺とヒメは裏口から城の内部に入ることにした。
扉から繋がっていたのは厨房部屋のようだった。
蜘蛛の巣がところどころに張られており、テーブルには埃が厚く積もっていた。
どうやら長い間誰もここを訪れていないようだ。
ヒメ
「埃臭い場所ですわね…ゲホッ!ゲホッ!」
ギィ
「あぁ、空気がかなり淀れている。あの扉から進もう。開けた場所に出られるかもしれない」
ヒメ
「…えぇ」
俺たちは入ってきた扉の反対にある扉から進むことにした。
扉の先には長い廊下が広がっていた。壁の燭台には火が付いてなく少し暗かったが厨房よりは空気が澄んでいた。2人でゆっくりと警戒しながら進んで行く。小部屋を見つけるたびに中を確認しながら廊下を歩き回っているとひときわ大きい扉を見つけた。入ってきた場所から考えて城の中心へと続く扉のようだ。
ギィ
「何か出るかもしれない、警戒はしないように」
ヒメ
「勿論ですわ…」
ヒメは扉を押してたが、扉が重く上手く開かない
左の扉をヒメ、右の扉を俺が押しようやく”大きな扉”を開けることが出来た。
扉の先は、これまでで一番広い大広間のような場所だった。
奥には広い階段が敷かれていてその上にもスペースがあるようだ。王の謁見部屋といったところだろう。
ヒメが前衛に飛び出し、周囲を見渡しながら歩いていく。
俺は扉の陰に隠れて、ヒメの近くを警戒する。
ヒメが大広間の中心で立ち留まり
ヒメ
「どうやら何もいないようですわ!もう入ってきて大丈夫ですわよ!」
と俺を広間に呼んだ。
広間は、壁に装飾されたステンドグラスから入る日光で、城の中とは思えないほど明るい。
ヒメに追いついて2人で階段を上ってみることにした。
ヒメ
「一体いつからこの状態なんでしょう…」
ギィ
「さぁな、100年以上は経っていそうなもんだが」
ヒメ
「どうしてかしら…城を見つけた時はテンションが上がっていましたのに…」
ヒメ
「今はなんだか寂しくて、胸が苦しいですわ」
ギィ
「奇遇だな、俺もだ」
階段の一番上までたどり着いた。
予想通り階段の上には、ひときわ大きな椅子が半壊しながらも鎮座していた。
壊れた”玉座”はかつて栄えた国が敗れたことを伝えているかのようだ。
2つの玉座の間には手を大きく広げて何かを”守ろう”としているような無機生命体。
1体のロボットが嘆くように空を見上げていた。