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遺世界パラボリック  作者: じゅん
Alea jacta est
6/25

6話

 こうやって理解してもらえないのはいつものこと。噛みつかれても受付は気にしない。


「あまりに説明ばっかりだとね。退屈でしょうから。ま、頭だけじゃなくて体を動かしてください。生き残れたら追加で説明しますし、そのほうがスッと頭に入ってきますから」


 生き残れたら。サラっと挟み込み、他人事のように。実際他人事。生き残ろうが死のうが、自分達だけWin-Win。私としては死んでほしい、カナ? なんて。


「バカバカしいっつーの。どうせなにかのアトラクションだろ。こんなもの渡されてよぉ? 手が込んでいるっつーか、暇なヤツらっつーか」


 不満を述べつつも金髪が箱から掴んだもの。『ベレッタ 92FS』。米軍や警察でも広く採用されているオーソドックスだが実用的なそれ。映画とか、アクションものでも結構見る。ジョン・マクレーンにでもなった気分はちょっとだけ嬉しい。


 なら受け取らなきゃいいのに。この三人の中では受付は金髪が一番嫌い。猫背の人よりも。あの人が生き残ってたらあっちかもだけど。


「ま、そう思うならそれでいいです。どうせなら楽しんでいってください。私は近くにいますので。ドローンで撮影もしなきゃいけないし。あ、あと通信機器。双方でのやり取りは今後これで。と、弾薬。それじゃ。グッドラック」


 重さにして十グラムほどの片耳用イヤホンを各自に。尽きた時用の弾薬も箱でその辺に。それだけ残し、ドアを開ける。ガチャっという重たい音。機材類を背負い、お先に。準備があるので。


 大きく空気が入れ替わる。湿った鉄の味のする空気に清涼感。鳥の声。気持ちのいい風。室内にはより明るい光が流れ込んでくる。横たわる猫背にもスポットライトのように。そのまま昇天。とっくにしてるわけだが。


 残された三人。明らかに噛み合わないであろうことは、先のやり取りでもわかる。ここにたとえば、お喋り怪獣的な人物を追加しても、きっとそっちのけでケンカもしくは沈黙するであろう。


 とはいえ、なにもしないのもそれはそれで。口火を切るべきか、と黒髪は意を決した。


「……どうする?」


 そんな当たり障りのないひと言目。ドアが閉まる。また。暗さついでに重力も足されたようで、体も口も重い。


「どうするもなにも。自己紹介でもする? 必要?」


 銃口を黒髪に向けながら、女性はそんな提案。今、ここで私は一番か弱い存在。用心するに越したことは? ないし? 


 いつの間にか寝そべりながら金髪は即座に拒否。


「いらねーよ。どうせ死ぬようにできてんだろ? てか、チーム戦とか言ってたけど、もう死んでんじゃん。ひとり」


 もちろんそれは猫背のこと。生きてる? 確認する気もない。無理だろうし。万が一生きてたところで重体。役に立たない。ここに捨てていくのが一番。理に適ってる。


 立ち上がって足先でツンツン、と女性は触れてみる。反応はない。屍のようだ。そりゃそうか、自分で撃ったんだから。


「たしかに。これどうすんの?」


 あんまり目に入れておきたくない。可愛いものとか綺麗なものとか。そういうので身の回りは飾っておきたい。知らない人の死体とか。それと一緒にいる今のこの空間。吐き気がする。

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